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国産サカキ・ヒサカキ復活の課題【花づくりの現場から 宇田明】第18回2023年9月21日

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神さま・仏さま・ご先祖さまにお供えしているサカキ、ヒサカキの90%以上は中国産。
消費者は国産を求めていますが、国産復活には課題が多くあります。
今回は、国産サカキ、ヒサカキ復活になにが必要かを考えます。

国産サカキ・ヒサカキ復活の課題【花づくりの現場から 宇田明】第18回

1.周年安定供給

花屋やスーパーが、「国産」と銘打ってサカキ、ヒサカキを売るには、周年、安定した商品の供給が必要です。
一時期だけ国産を勧め、それ以外は中国産をどうぞでは「値段は高くても神さま・仏さま・ご先祖さまには国産」は成立しない。
お供えは、代表的な「定時・定量・定質・定価」商品です。

2.園芸品目としての栽培

サカキ、ヒサカキは林業、山採り、花き園芸など異なる分野で生産されています。
林業では特用林産物として林木の林床に植栽され、(林業の価値観では)短期で収入が得られる副産物とみなされています。
山採りは、専門の業者が山野で自生しているサカキ、ヒサカキや、さまざまな樹種の枝を切りとって市場に出荷しています。

しかし、両者ともに「定時・定量・定質・定価」が求められる市場流通には対応ができていません。
安定生産には、トラクタ、防除機などの機器が利用できる平地、畑地に植え、かん水、施肥、遮光、防風、病虫害防除などの栽培管理と、省力的に収穫ができるように園芸品目としての栽培が必須です。

3.低樹高・早期成園化

園芸品目として生産性を高めるには、果樹とおなじように低樹高・早期成園化が不可欠です。苗を植えてから出荷するまで、通常ではヒサカキは3年、サカキは4~5年かかります。

これを写真の圃場のように2年に短縮し、早期に収入が得られるようにしないと、国産の拡大はのぞめません。
同時に、生育が旺盛で、葉が肉厚で平たい優良系統を選抜し、挿し木で大量増殖する技術の確立も必要です。

4.束作業のシステム化

サカキ、ヒサカキの生産は枝を収穫して終わりではありません。
収穫した枝を小枝に切り分け、前回示した写真のようにお供え用の束にくくる作業がいります。

かつては花屋がその作業をしていましたが、手間がかかり、採算に合わないので、束にして輸入される中国産をつかうようになりました。
国産復活には、産地で束にくくる作業システムを構築しなければなりません。
それには、高齢者や女性による集落営農や6次産業などを活用すれば地方創生につながります。

5.原産地表示

もっとも大切なことは、消費者が国産か輸入かを選べることです。
店頭に並んだ商品に原産地が表示されてなければ、消費者にはそれが国産か輸入かがわかりません。
JAS法では農産物に原産地表示が義務づけられていますが、花は対象になっていません。

花業界も花は食べるものではないからとして、原産地表示には熱心ではありません。
国産復活のための第一歩は、小売店での原産地表示です。

6.消費者、小売店、生産者にとっての納得価格

消費者は、国産というブランドにどれだけの価値を認めてくれるのでしょうか。
野菜では国産は安心安全という信頼がありますが、サカキ、ヒサカキでは心情的な面が大きいようです。

しかも日常的につかうお供えですから、たとえ国産でも、いくら高くてもいいというわけにはいきません。
価格決定権は中国産にあるので、少なくとも中国産の1.5倍以内でないと消費者にも、小売店にも納得してもらえないでしょう。

その範囲で持続的な経営ができるように、栽培と束製作の合理化・省力化によるコスト削減が必要です。

消費者は、日本に自生していて、古くからお供えにつかわれてきたサカキ、ヒサカキは国産がふさわしいと考えています。
消費者の期待に応えるためには、今回説明したような課題を解決しなければなりません。

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