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いまこそ、多くの組合員のアイデア集めを実践しよう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2023年10月3日

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将来を見据え、しっかりと意見を聴き、話し合う「場」を

A・ライフ・デザイン研究所 代表 伊藤喜代次

みなさんに、考えていただきたい。
「100人の参加者を集め、2時間の会議、全員が一人、約10分の意見を話す」という会議、あるいは集会は可能だろうか。可能であるなら、どんな運営方法があるか。

実は、こうした方式の会議は、実際のコンサルティングのなかで、いくつかのJAにおいて開催してきているので、正解は、この方式の催しは可能、ということになる。

この20年あまり、私は仕事の忙しさのなかで、無理くり時間をつくって欧米での会議やワークショップに出かけた。理由の一つは、コンサルタントとして師と仰ぐ先輩がロンドン在住であったこと。もう一つは、企業として定期的に訪問し、意見交換する企業がアメリカ・シアトルにあったこと、である。

欧米での会議などで出会い、学んだことは多く、実際のコンサルに活用した運営方法、その技法は少なくない。なかでも、すぐに活用できるノウハウとして収穫だったことは、会議の持ち方、運営方法についてだ。

とくに、欧州には、企業組織や職場内での会議、ミーティング方法に加え、提案資料での100を超える図表作成法など、コミュニケーション手段がきわめて多種多様で、目からウロコの連続であった。

一つの図表を、理事会、経営会議をはじめ、現場の会議にも使い回ししている日本企業は少なくない。事務局サイドの手抜きである。大切な方針や戦略を、会議に出席する人やどんな会議にするか、の課題に応じて、図表の表現方法を変えたりするのは、事務局の腕の見せどころ、というより、自然な対応なのである。

そのなかで、感動した会議運営方法の一つが、最初に考えていただいたケースである。この時のコーチ役は、欧州の会議で知り合ったカナダの経営コンサルタントである。彼は当時、行員55,000人のカナダ最大の銀行でのコンサルで活用した事例だと話し、その詳細を教えてくれたのである。

"完成品"への意見収集より、作成プロセスでの実行こそ重要

では、この会議の運営方法を紹介しよう。出席者の100人を10のテーブルに座ってもらい、それぞれのテーブルで、5~6つほどのテーマについて、1テーマ、一人1分半から2分で意見を述べてもらう2時間の会議である。各テーブルには、会議内容を熟知した進行役(記録)のファシリテーターをおく。

この会議は、方針などを決定する会議ではなく、会議の趣旨や方針への多くのメンバー、関係者の意見を数多く徴求し、同時に、会議の趣旨・方針・課題などについて、出席者に理解を深めてもらうところにねらいがある。

JAのコンサルで、つねに頭を悩ますのは、理事会においても、組合員の集まりにおいても、最新の事業や経営の現状ばかりで、これから先のJAの組織や経営について、組合員や役員のみなさんに、自由に意見を求め、話し合う「場」や「時間」が用意されなくなっていることである。決定した方針や計画を説明する場は多いが、決める前に多くの意見やアイデアを聞く場が少なすぎるのである。

JAの農業振興計画や長期計画などについて、組合員の意見を聞く地区別懇談会は、理事会が承認した"完成品"についてであり、ほぼ決定されたもの。これに意見や質疑をお願いしても「聞き置く」だけである。この段階では、組合員の意見を反映させ、方針の修正などは期待できない。それがわかっているから、当然、参加者も少なくなり、意見も少ない会議や集会になってしまう。こうした積み重ねが、組合員のJA離れを進行させるのではないか。

もっといえば、長期的な計画の原案も職員レベルで作成し、"完成品"に近い状態で理事会に提出、質疑を行い決定するが、その繰り返しで良いのだろうか。

私が強く求めたいのは、"未完成品"のどの時点で、どんな組合員を対象に、どんな意見や要望を尋ねるのか、事前の意向把握の場をつくるべきだと思う。また、理事会に対し、どの時点で、長期計画に求められる問題の解決や課題についての意見や意向を聞くのだろうか。こうした"事前の一手間"が必要だと思うのである。

そんな"事前の一手間"として、冒頭に紹介した会議は、きわめて有効である。あるコンサルJAでは、中長期計画のアウトラインの策定段階で、組合員に告知し、「農業ビジョン」、「事業戦略」、「組織のあり方」の3つのテーマで、各会場100人限定で、3夜にわたって開催した。組合員のみなさんには、高く評価いただいたイベントになった。

ドラッカーの「5つの質問」を参考に、組合員ミーティングを

JAの中長期計画の策定で、最初に着手することは、前回の計画と実績を参考にする場合が多い。間違いではないが、過去の3年間や5年間の実績がどうだったかは後回し。なぜなら、過去の実績は変えようがないからだ。

新たに策定する計画は、将来・未来に向けた計画である。だからこそ、早く着手して検討すべきことを絞り込む必要がある。では、この場合の"事前の一手間"として何を考えるべきか。悩んでいる役職員がいれば、大いに参考になる図書がある。

P.F.ドラッカー著 『経営者に贈る5つの質問』(ダイヤモンド社・刊)である。ドラッカーは、晩年、非営利組織を研究テーマとし、関連する経営論、成果評価手法などに関する書物がある。それらを集大成し、とくに重要でシンプルな5つの質問によって、問うている内容は深くて重い。

ともすれば、自分流の論理に走りがちな経営者、管理職、職員に対し、経営の理念や顧客戦略、計画、目標などについて再確認し、正面から捉え直すことを求める内容になっている。同時に、自己評価も求めている。

<ドラッカー=もっとも重要な「5つの質問」>
・われわれのミッション(使命)は何か?
・われわれの顧客は誰か?
・顧客にとっての価値は何か?
・われわれにとっての成果は何か?
・われわれの計画は何か?

この「5つの質問」は、経営のコンサルとしてお手伝いする者にとっても、重要なポイントであり、それぞれのJAの将来を検討する領域のなかで、中長期計画、農業振興計画の「仮説」を数多く生み出し、整理する手がかりを作成する。組合員や職員を対象に、多様な会議や集会での議論を、ここからスタートしたい。

本コラムに関連して、ご質問、ご確認などがございましたら、お問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)より、『コラム名』を添えてご連絡ください。コラム内又はメールでお答えします。

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