(352)フォーチューン・グローバル500に見る世界の上位10社【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年10月6日
世界的な企業ランキングの中における日本企業の存在感が微妙になりつつあります。今年のフォーチューン誌グローバル500社を少し眺めてみました。
フォーチューン誌のグローバル500社ランキングは長期で見ると企業の盛衰の一端を垣間見ることができる。例えば、1995年のベスト10社を見ると、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事が1~4位、ゼネラル・モータースが5位の後、丸紅が6位、その後はフォード、エクソン、そして日商岩井、ロイヤル・ダッチ・シェルである。
この時代には上位10社に日本企業が6社含まれている。翌1996年には日商岩井の代わりにトヨタ自動車が上位10社入りし、1997年まで多少の順位変動はあっても上位10社の中に6つの日本企業が顔を見せていた。その後、1990年代後半から2000年代にかけて総合商社が順位を落とす中でトヨタ自動車だけが上位10社に継続して残り続けた。
一方、総合1位は2001年以降の2023年までは5回を除き、そして2014年以降は継続してウォルマート(Walmart)である。安定して上位に顔を出す国際石油資本の数社を除けば、トヨタ自動車以外の日本企業が順位を落としていったのに対し、代わりに上昇したのが中国企業である。とくに、Sinopec Group(中国石油化工)とChina National Petroleum(中国石油天然気集団)は上位10社の常連であり、近年ではこれにState Grid(国家電網)が加わっている。
さて、最新状況はどうか。首位はウォルマートで収益は6,113億ドル(1ドル=150円として約91兆円)になる。従業員は世界で210万人、利益は116.8億ドル(同1兆7,520億円)である。収益ベースでこの規模に相当するのはサウジアラビア国有石油会社であるサウジアラムコの6,037億ドルだ。3位のState Gridの5,300億ドルとの開きは大きい。なお、サウジアラムコの利益は1,590億ドルであり、収益でそれほど大差ないウォルマートの14倍近くあることに加え、従業員数はわずか7万人であることに注意したい。
同じ6,000億ドル超のビジネスでも、サウジアラムコはウォルマートとは見事な対象をなしている。全く異なるビジネス・モデルである。
さて、日本企業では19位にトヨタ自動車の名前が見える。収益の順位だけで言えば、三菱商事(45位)、ホンダ(70位)、三井物産(93位)、伊藤忠商事(96位)に各社の名前が見える。トヨタ自動車2,745億ドル、三菱商事1,594億ドルを除けば、残りは1,000~1,300億ドル水準である。
この手の規模の比較は茶飲み話には良いが、実際にどこまでリアル・ビジネスに影響力があるかは業界にもよるため一概には言えない。それでも長期的な推移を見ると、その時々に勢いのある企業が顔を出し、そして交代していくことがわかる。中国企業も先の3社は上位10社に顔を出しているが、500社までを丁寧に調べると順位が低下している企業も多い。時間の試練に耐えて長期にわたり上位に顔を出しているエクソンモービルやシェルの底力はやはり「凄い」の一言である。
もうひとつ気が付く点は、上位10社の中ではウォルマート(1位)、アマゾン(4位)エクソンモービル(7位)、アップル(8位)、そしてユナイテッドヘルス・グループ(10位)、つまり半数が米国企業という点である。その意味で米国は強い。
実のところ、筆者はランキングの順位には余り興味がないが、どのような会社が出てきているか、あるいは生き残り続けているかという方に関心がある。例えば、同じ米国企業でもユナイテッドヘルス・グループなどは日本ではまだまだ他の米国企業に比較すると知名度は低いのではないだろうか。この会社は収益3,240億ドル、利益201億ドルといずれもトヨタ自動車を上回るヘルスケア業界では米国最大の企業である。
先進国の多くで高齢化が進展している中、こうしたヘルスケアをメインとする企業がグローバル500の上位10社に顔を出すような時代になったということだ。日本、そしてその背後に控える巨大な中国市場をどう見ているかは常に考えておく必要があろう。
* *
継続して上位に居続けることは、本当に大変なのでしょうね。日本国内ではどうでしょうか。
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