【JCA週報】医師不足に立ち向かう秋田鹿角(かづの)の住民運動(鈴木 土身)2023年10月9日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 山野徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫日本生協連代表会長)が協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、本機構の協同組合研究紙「にじ」の2023年秋号に寄稿いただいた論考です。
医師不足に立ち向かう秋田鹿角(かづの)の住民運動-「住民の証言」は協同の起点-
鈴木 土身
秋田県・鹿角の医療と福祉を考える市民町民の会
広報・地域調査等担当事務局
鈴木 土身氏
私たちが暮らす「日本」という国では、いまだに「国民が必要な時に必要な医療を受けることができない」という事態が各地で多発しています。それは、多くの場合、身近なところに適切な治療を施す医師が常時いるわけではない、いわゆる「医師不足」によるものです。
1.「北の要所」鹿角で起きた「医師不足」をめぐる住民運動
三つ巴の領有権争い
鹿角地域(鹿角市および小坂町)は、秋田県の北東端。岩手・青森との県境に位置します。スキー選手なら知らない人はいない鹿角ですが、その歴史は波乱に満ちています。
市内にある「大湯環状列石」は「北海道・北東北の縄文遺跡群(2021. 7.27 世界文化遺産)」の重要拠点。鹿角は古代から「北の要所」です。その豊かな鉱産物や美林良木ゆえに、中世以降、この地域をめぐり、南部・秋田・津軽の3勢力が激しい領有権争いを繰り広げてきました。戊辰戦争でも敵味方が入り乱れ、1869 年(明治2年)の1年間だけでも「北奥県・九戸県・八戸県・三戸県・江刺県」と帰属が変遷。1871年(明治4年)、ようやく鹿角は「秋田県」に仲間入りしました。
秋田県の医療は「厚生連」が支えてきた
秋田県全体の医療は「厚生連(厚生農業協同組合連合会)」が支えてきたと言っても過言ではありません。2021年(令和3年)末現在、厚生連8病院の病床数(3,096 床)は県内全病床(14,107 床)の21.9% を占め、自治体立14 病院(2,930 床)を上回ります。
秋田県厚生連のルーツは、1895年(明治28年)に石川理紀之助らが立ち上げた「私設『県農会』」です。やがて、それは「産業組合」として成長し、1932年(昭和7年)、3,775人の農民が一口5円のお金を出資し合って「医療利用組合」に発展。その後、12年間で9病院が建設され、今日の原型が整います。戦後、医療利用組合は「厚生連」に姿を変えました。戦争のダメージによって、全国で数多くの厚生連が姿を消す中、秋田県は何とか踏み留まることができました。
以降の論考の章立ては下記の通りです。
JCAのウェブサイトにて全文を掲載しておりますので、ご覧ください。
もともと住民運動で生まれた鹿角の精神科医療
医師の引き上げ、病棟閉鎖
住民運動によって医師が赴任
2.より強くつながるための「住民の証言」
お産もできない事態に「2つめの住民団体」が発足
健康な人は「医師不足」を実感しにくい
全国から「住民の証言」が発出されれば、日本の医療が変わる
3.医師不足の基本構図
精神科が再び「非常勤体制」に
困った時には学び直す
医師は、人口がより多い地域により多く、人口がより少ない地域により少ない
地方の人口は「減った」のではなく「減らされた」
医療政策が「公共性」より「採算重視」に変わる
4.根本的な解決は「公共」を取り戻すこと
「住民の証言」を集め、日本の医師全体をもっと増やす
国内外で「人間生活に不可欠な公共サービス」を取り戻す運動が
5.「自己責任論からの脱却」めざし、県・市・町・病院に「提案書」
公的な「受診サポートセンター(仮称)」の設立を
総合診療など「第1ガード」が一度受け止め、最適診療につなげる
重要な記事
最新の記事
-
商系に撤退の動き、集荷競争に変調 米産地JA担当者に聞く(中)【米価高騰 今こそ果たす農協の役割】2025年10月30日 -
再生産可能なコメ政策を 米産地JA担当者の声(下)【米価高騰 今こそ果たす農協の役割】2025年10月30日 -
生産者が将来見通せる政策を 鈴木農相を表敬訪問 山野JA全中会長ら2025年10月30日 -
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】新政権の農政~「朝令暮改」2025年10月30日 -
よく食べた栗の実【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第362回2025年10月30日 -
鳥インフルエンザウイルスの地理的拡散と進化 2024年シーズンの遺伝子を解析 農研機構2025年10月30日 -
第36回岐阜県農業フェスティバルに出店 ステージやイベントで県産農畜産物をPR JA全農岐阜2025年10月30日 -
全国の産地応援 伊藤園と共同開発「ニッポンエール 大分県産完熟かぼすSODA」発売 JA全農2025年10月30日 -
伊藤園と共同開発「ニッポンエール 長野県産りんご三兄弟」 発売 JA全農2025年10月30日 -
【肉とビールと箸休め ドイツ食農紀行】ドイツで食べ物は高いか?安いか?2025年10月30日 -
最新の無人・自動運転トラクターを実演 クボタアグリロボ実演会 in加美を開催 JAグループ宮城2025年10月30日 -
東北6県の魅力発信「全農東北プロジェクト」とコラボ企画実施 JAタウン2025年10月30日 -
「JAタウン公式アプリ」リリースで開発・導入を支援 メグリ2025年10月30日 -
GREEN×EXPO 2027公式ライセンス商品を相次ぎ発売 横浜と大阪で期間限定店開設 2027年国際園芸博覧会協会2025年10月30日 -
適用拡大情報 殺菌剤「ダイパワー水和剤」 日本曹達2025年10月30日 -
ローズポークを食べてプレゼントを当てよう 11月にキャンペーンを実施 茨城県銘柄豚振興会2025年10月30日 -
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月30日 -
国産の針葉樹100%使用 高耐久の木製杭「エコクレオ防腐杭」がウッドデザイン賞 コメリ2025年10月30日 -
近いがうまい埼玉産「埼玉県地産地消月間」11月に県産農産物を集中PR2025年10月30日 -
「長崎みかん」初売りイベント 大田市場で開催 JA全農ながさき2025年10月30日


































