【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】遺伝子組み換えトウモロコシ論文をめぐる経緯2023年10月26日
フランスのカーン大学のセラリーニ教授の論文をめぐっては賛否両論があり、学会誌に掲載された論文が一度取り消されたが、別の学会誌で再掲載されている。もう一度、経緯を確認しておきたい。
除草剤耐性の遺伝子組み換えトウモロコシとその除草剤がラットに対する発がん性を持つというセラリーニ教授の論文は2012 年11 月にFCT(Food and Chemical Toxicology)誌に掲載後、一度、撤回され、再び、別の学会誌で掲載された。
この論文撤回の経緯をめぐっては、拓殖大学の関良基教授の説明が示唆的である。
セラリーニ教授の論文の論文に対して、FCT誌と版元のElsevier 社にはモンサント関係者から大量の批判書が送付されてきて、同誌はバイオテクノロジーの担当編集委員というポストを新設した。元モンサント社研究員のリチャード・グッドマン(現・ネブラスカ大教授)が担当編集委員に就任した。これは「コンフリクト・オブ・インタレスト(利益相反)」とならないのかが、まず問われる。
元モンサントのグッドマン教授が担当編集委員に就任後、2013年11 月にFCT 誌は、カーン大学セラリーニ教授らの論文を撤回した。論文撤回の理由は下記のようなものであった。
①「不正行為やデータに関する故意の虚偽表現の証拠は見られなかった」。しかし、②「実験群の数が少ない」という点と、③「実験に使われたラットの系統がもともと腫瘍を発生しやすいものだった」という点から、該当の論文を不確実なものと結論した。
しかし、通常であれば、
①→であれば、論文撤回はできない。
②→統計的に十分なサンプル数を増やした実験を行って統計的誤差の範囲か否かを確かめるというのが、科学的な筋でラットの個体数は論文に明記されているのであるから、それは論文撤回の理由にはならない。
③→別種のラットを用いた検証実験をすべきである。(関良基教授)
以上の経緯から、当該論文を取り消すという根拠には疑問が残る。さらに、2014年6月、別の学会誌、Environmental Sciences Europe でセラリーニ教授の同じ論文が受理・掲載されている。
セラリーニ教授の論文は「掲載が取り消された」と強調されることがあるが、のちに、別の学会誌で掲載された事実に言及せず、経緯の一部だけを指摘して「取り消された」と述べるのは正確ではない。
重要な記事
最新の記事
-
飼料用米多収日本一 山口県のあぐりてらす阿知須 10a当たり863kg2025年3月3日
-
【特殊報】ナシ胴枯細菌病 県内で初めて発生を確認 島根県2025年3月3日
-
政府備蓄米売り渡し 入札 3月10日に実施 農水省2025年3月3日
-
新潟県の25年産米概算金「コシ2.3万円」 早期提示に歓迎の声 集荷競争、今年も激化か2025年3月3日
-
米の集荷数量 前年比23万t減に拡大 農水省2025年3月3日
-
米価高騰問題への視座【森島 賢・正義派の農政論】2025年3月3日
-
【次期家畜改良目標】低コスト、スマート農業重視 酪農は長命連産、肉牛は短期肥育2025年3月3日
-
【改正畜安法の現状と課題】需給対策拡大が焦点 問われる「国主導」2025年3月3日
-
あなたたちは強い〝武器〟を持っている JA全国青年大会での「青年の主張」「青年組織活動実績発表」講評 審査委員長・小松泰信さん2025年3月3日
-
JA農業経営コンサルタント 15人を認証 全中2025年3月3日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年3月3日
-
農業用バイオスティミュラント「エンビタ」とは 水稲育苗期にも効果 北興化学工業2025年3月3日
-
アミューズメント施設運営「ティスコ」株式を譲受 農林中金キャピタル2025年3月3日
-
「2025ローズポークおいしさまるごとキャンペーン」でプレゼント 茨城県銘柄豚振興会2025年3月3日
-
福岡ソフトバンクホークスとのオフィシャルスポンサー契約更新 デンカ2025年3月3日
-
ファーマーズ&キッズフェスタ2025 好天で多数の参加者 井関農機は農業機械体験2025年3月3日
-
【今川直人・農協の核心】産地化で役割が高まる農協の野菜取り扱い2025年3月3日
-
野菜がたっぷり食べられるカレー味「ケンミンカレー焼ビーフン」新発売2025年3月3日
-
第164回勉強会『海外市場での植物工場・施設園芸の展開』開催 植物工場研究会2025年3月3日
-
春の山梨の食材の魅力を伝えるマルシェ 5日から国分寺マルイで開催 雨風太陽2025年3月3日