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放置国家政権を放置しない【小松泰信・地方の眼力】2023年11月1日

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10月31日、東京都江東区の木村弥生区長陣営に対して、動画投稿サイトに投票を呼びかける有料広告を選挙期間中に出すことを指南した柿沢未途法務副大臣が辞任。「任命権者としての責任を重く受け止めている」と語るのは、「増税めがね」こと岸田文雄首相。この手口の「違法性」を認識していない議員を適材として適所に任命したとすれば「めがね違い」も甚だしい。法治国家政権ならぬ放置国家政権に苦しめられるのは庶民である。

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愚策インボイスは「むごい」

福岡県内におけるインボイス制度開始1カ月の情況を1面で伝えるのは西日本新聞(11月1日付)。
園芸用の土を生産する会社の役員は、仕入れで取引する約70業者の書類を連日、点検する。仕入れ先のインボイス制度登録が確認できないと、大半のケースで納める消費税額が増える。疑問が生じるたび相手に問い合わせる。決算方法の見直しも必要になり、作業量は以前の1.5倍ほどに膨らんだ。

木製建具などを生産する会社では、長く付き合う職人10人は一人親方が多く、全員がこれまで免税対象者。課税事業者になると消費税を納める必要が出てくるため、全員が登録しなかった。会社の納税額は増えるが、「熟練した職人は必要不可欠」として、負担を引き受けることにした。

スナック経営者は、制度に対応した領収書にしないと客の勤め先の税負担が増えてしまうことから登録した。「迷惑はかけたくないし、半分諦めよ」とのこと。
年間売り上げが200万円弱の個人タクシー業者も客側の負担が増すことから登録した。「苦しいけど、法人と同じ土俵で戦うには避けられんね」と語る。

焼き鳥店経営主は閉店を決断。コロナ禍で落ちた売り上げはなかなか戻らず、制度による新たな納税は負担。仕組みも複雑でついていけない。70歳代半ばという年齢も考え決心した。「もう少しやるつもりやったけどね」と落胆気味。

当コラムも岡山市内の個人タクシー業者の話を聞いた。年間の売り上げは300万円位。燃料費が上がっただけでも経営が苦しいところに、税金を取られるのは死活問題。メーター類の交換に1万円近くかかったが、この費用を納税する側が負担させられることにも納得いかなかった。最後にポツリと、「政府も、むごいことするよね」。

トラック運転手が危惧すること

西日本新聞(10月31日付)の社説は、「物流の2024年問題」を取り上げている。具体的には、長時間労働を是正する規制が2024年4月からトラック運転手にも適用され、時間外労働に上限が設けられる。この上限規制は働き方改革として、19年4月に大企業に導入されたが、自動車運転業務には5年間、適用が猶予されてきた。

「上限規制の導入で労働条件が改善されるのは望ましい」とした上で、「問題は運転手の労働時間短縮が輸送力の低下に直結することだ。収入が減って運転手離れが進めば、輸送力不足に拍車がかかる恐れがある」とする。

運転手のなり手不足の理由に、「労働時間が全産業平均より約2割長く、所得は1割ほど低い」ことを上げ、「荷物の積み降ろしのために待機する荷待ちや荷役作業の時間短縮」を課題に上げ、「荷待ちや荷役の対価を含む適切な運賃水準を荷主が受け入れ、運転手の待遇を改善する」ことを「人材確保への第一歩」と指摘する。

当コラムもトラック運転手から話を聞いた。彼によれば、2024年問題は収入減に直結する由々しき問題とのこと。残業代がなくなることは、生活資金に余裕がなくなることを意味しているそうだ。残業、すなわち超過勤務を前提としなければ、ささやかなゆとりさえ奪われる労働環境を改めてこその「働き方改革」ではないのか。

なお、この問題に関連して、大型トラックの最高速度を100km/hに引き上げることが検討されていることについては、「事故が必ず増えるので反対です」とのこと。

放置される国立大学

放置されているのは国立大学も同じ。「国の交付金削減のあおりを受けて設備の改修が十分にできず、寄付に頼る国立の施設が相次いでいる」で始まる毎日新聞(10月31日付東京夕刊)は、金沢大が設置から30年以上経過した学内の和式トイレの改修費を確保するため、クラウドファンディングで寄付(最終目標1000万円)を募っていることを伝えている。

トイレ環境に関して学生1000人が回答したアンケートによると、「満足」と答えた女子学生は0%。「暗くて汚いため、夕方や夜には怖くてトイレに行けない」「洋式トイレに行列ができ休み時間にトイレに行けないことがある」などの声が寄せられたとのこと。国立大が04年度に法人化されてから、運営費に当てる交付金の削減が続いていることが最大の理由。金沢大は「厳しい財政状況の中、洋式トイレを十分に整備しきれない」と判断し、寄付を募ることにしたそうだ。

「明るく清潔で、機能的なトイレを1カ所でも多く増やしたい」と、同大の基金・学友支援室長に支援を呼びかけさせるこの国の文部行政に、未来は託せない。

大企業と政府自民党の「カネの支配」がもたらす庶民の「カネ不足」

「カネ不足だ!」で始まるのは、牧太郎氏(毎日新聞客員編集委員)による「青い空白い雲」(「サンデー毎日」11月12日号)。氏は、2022年11月に総務省が開示した自民党の政治資金団体「国民政治協会」への献金状況から、政府自民党が「カネの支配」によって「財界の犬」となったとする。

当コラムも「会社四季報オンライン」(2月13日7時)で「自民党(国民政治協会)への献金額が大きい上場企業」を確認した。トップは住友化学とトヨタ自動車の5千万円、これに日立製作所、キャノンが4千万円で続いている。伊藤忠商事、丸紅、三井物産、住友商事、三菱商事の大手商社5社が2800万円の揃い踏みで10位となっている。これも談合の成果ですか?

氏は、この大企業の大口献金で、これまで法人税は段階的に引き下げられている(43.3%→23.2%)として、「巨額な企業献金が『税制』を支配している」と指摘し、自民党の「政党交付金」と「巨額な企業献金」の二重取りを、まるで「詐欺」と断罪する。

「大企業と政府自民党の『カネの支配』が続けば、庶民の『カネ不足』はまだまだ進む。新聞、テレビにとって大企業は大事なスポンサー。だから『カネの支配』を批判しないが、このままでは『詐欺の片棒』になってしまうぞ!」と、渾身の一撃。

よくぞ書かれた。そしてよくぞ掲載されました。柄にもなく、勇気づけられました。

「地方の眼力」なめんなよ

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