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【今川直人・農協の核心】危機と期待が同時進行~緒に就いた『自己改革』2023年11月13日

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来年の通常国会では25年ぶりとなる基本法の改正が行われる見通しで、農政の転換期を迎えるなかJAグループをはじめとする農業団体の役割がどのように位置づけられるかも注目される。一方、この間、JAグループは政府の農協改革を受け、自己改革の取り組みを続けており今後の取り組みもさらに期待される。このコラムでは全中職員として長く農政活動や、アジアの農協開発などにも携わってきた今川直人氏が農政、農協の課題を提起する。

平成 26 年6月 24 日に 閣議決定した「規制改革実施計画」は、「 農業協同組合の見直し」について、次のように述べている。

地域の農協が主役となり、それぞれの独自性を発揮して農業の成長産業化に全力投入できるように、抜本的に見直す。 今後5年間を農協改革集中推進期間とし、農協は、重大な危機感をもって、以下の方針に即した自己改革を実行するよう、強く要請する

平成の農協改革のキーワード「自己改革」はここに発する。

企業の行動は法律に抵触しない限り自由であるから、改革も自らの意思でなされる。その意味で「自己」は法律上の「建前」である。

一方、企業の行動は法律の規定の最低水準に向かうが、有効にこれを防止することは容易でない。法が企業の行動の質やその具体的水準を規定することには限界があるからである。公の文書で敢えて「自己」を用いたのは、高みを目指す努力への期待ともとれる。  

「重大な危機感」も目を引く。内閣が民間の一業態である農協の危機にこのような関心を払う根底にあるのは、農協が日本の農業と国民の食料の確保のために必要な組織であるという認識であろう。

しかし、農協制度は所詮人工物である。国民に期待される組織として存続できるかどうかは、農協自らの努力にかかっている。

冒頭の「農業の成長産業化」という表現は、農協事業へのこれまで以上の事業機能発揮への強い期待を表すもので、農業改革を受けた「農協改革」の底流となっている。自らの努力による危機脱出と農協の機能強化という高低差の大きい課題が同時に進められたことが、平成の農協改革の際立った特徴である。

農水省は改正農協法施行の3か月前の平成28年1月に「農協法改正について」を公表している。この内容は、改正法の解説というより、さながら、小幅改正を補う『行政指導』である。

例えば、「農協の現状」の中で、組合員数とその構成の変化および米と飼料の事業シェアの低下を数字で示している。そして、他の項目では個々に付されているコメントがこの二項では共通となっている(下記)。正組合員(農家)の減少と准組合員の増加、および減少している正組合員の農協依存度の低下が同時に進行してきていることをことさらに強調している。

世代交代が進めば農協の事業シェアは更に低下する可能性

次世代の農業者が積極的に利用するような農協にしていくことが必要

「農協の現状」に続く「農協を取り巻く環境の変化」では、食料の需給状況に次ぐ「農業者の状況」で、近年の農家の大規模化を取り上げている。この項のコメントの要点は次の2点である。

担い手農業者を含めた農業者のニーズに対応しなければ地域農業は発展しない

担い手農業者にメリットがあれば、農業者全体にメリットがあるはず

二度使われている「担い手」は大規模経営の意味で、「大規模経営のニーズ」という、現下の喫緊の課題がここに顔を出している。価格に敏感な大規模農家の結集には農協の努力と相まっての全農・連合会の事業改善への努力が強く望まれる。

農家減少と関わりの深いもう一つの争点は准組合員問題であった。この問題は、5年後見直しにおいても制度的に現状が維持されているが、組織・事業に関わる「農協法」の重い問題である。農家の減少が続く中で組合員に占める准組合員の比率が高まっており、今もマグマが地下で少しずつ盛り上がっている。[直今1]将来何らかのハード・ランデングに遭遇しないとは誰も言い切れない。

地域(都市化地域を含め)の実情に応じて農業振興の道筋を考えること以外にこの課題への対処策はなさそうである。

「自己改革」は緒に就いたばかりである。

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