【やさしい経済の話】財政破綻の不都合な真実(上)税収の17倍ある負債2023年11月14日
経済に詳しい元東洋経済新報社社長で石橋湛山記念財団評議員などを務める浅野純次氏が解説する「やさしい経済の話」。今回は「財政破綻の不都合な真実」について問答形式で解説してもらった。
国の借金は、庶民からするとひとごとのような面もありますが、昨今、日本の財政は赤字続きで国の借金は増える一方です。わが家の借金なら大問題ですが、国の借金は金額が大きすぎて現実感に乏しいせいもあり、ふだん心配することはまずありません。農家の主婦の里花さんにとっても財政赤字なんて遠い世界の話のようでしたが、新聞やテレビで減税だ増税だと言われだしたので、ちょっと気になり始めていたところでした。そこへ久しぶりに従兄でジャーナリストの大地さんがやってきたので、待ってました、とばかり質問を浴びせ始めます。
里花 大ちゃん、お久しぶり。皆さん、お元気?
大地 おかげさまで、みんな元気だ。天候不順で店頭の野菜が値上がりしてるんで、みんな心配してるよ。この間のメールで財政の話をするようにということだったので、数字もしっかり押さえてきた。ちょっと難しいかもしれないけど、何でもどうぞ。
里花 岸田文雄首相が減税だ給付金だと気前のいいことを言っているけど、国の懐具合はそんなに余裕があるの?
大地 物価上昇のおかげで税収が増え気味だからね。でも、ばらまきをするほど財政が本格改善しているわけではまったくない。それに首相は防衛予算を増やすと言っているわけだから、むしろいつ増税を言うか、タイミングの問題じゃないかと永田町ではもっぱららしい。日本の財政はそんな短期で見て政策を決めるほど余裕があるとはとても思えないね。
里花 長期的ということは、国の財政難は逆に長年かかって作られてきたってことね。
大地 そう、長い話さ。バブルの最中はまだよかった。でもバブルが崩壊した1990年度を境に税収は20年間減り続け、その後は増税もあって少し伸びているけれど、歳出の増加にはとても追いつかない。歳出が急角度で右肩上がり、歳入は下のほうを横ばっているグラフはちょうどワニが口を開いているみたいなので財政の「ワニの口」っていうんだけど、日本以外の先進国でこんな状況っていったらひところのギリシャくらいのものだ。
里花 世論調査などでは不安の声が強いように思うけど、どうなのかしら。
大地 でもSNSなどを見ると大丈夫という声が結構出てくる。メディアも大丈夫とは言わなくとも深刻な議論があまりない気がするね。先進国でダントツのひどい状況なのに、日本はなぜこんなに楽観的なんだと外国の学者に聞かれて困ったと、さる大学教授が話していたよ。
里花 外国と比較するとどんな状況なのかな?
大地 いちばんわかりやすいのは、政府債務とGDPの比較だね。日本はGDPの2・6倍もあって先進国中で最悪なんだ。ギリシャやイタリアが1・5倍前後で、フランスや英国は1・1倍ほど。日本の突出ぶりがわかる。
里花 政府債務というと、家計の借金と比べたくなるわね。
大地 そうだね。やってみようか。細かい数字になるからノートをのぞきながらだけど。財政は兆円単位で、それを家計は10倍して単位は万円にしよう。家計は年換算だよ。
里花 大丈夫かしら。
大地 まあ、やってみよう。まず国のほうからいくと、税収69兆円、国債費(国債返済と利息)が25兆円だから、家計で年収690万円、ローンの元利払いが250万円になる。
里花 まずまずの中流家庭ね。
大地 家計ではそれで差し引き440万円が手元に残るよね。ここから家計費だけど、国の一般歳出が73兆円だから、年間の家計費は730万円。これだけでももう赤字だけど、国は一般歳出のほかに地方交付税を16兆円、自治体に払わないといけない。家計でいえば田舎の両親への仕送りかな。で、これが年に160万円。690万円から(250万+730万+160万)を差し引くといくらかな。
里花 電卓がいるわね。えーとマイナス450万だって。ということは...。
大地 穴埋めに年間450万円借りるってこと。元本返済が170万円あるので、ネットで280万円借りないと、年を越せないということだね。
里花 そんな自転車操業のような家計じゃ、主婦としてやってられないわよ。どんどん借金が溜まっていくということよね。
大地 そうだね。今、国は税収の17倍の1029兆円の負債を抱えているから、家計でいえば年収の17倍の借金ということになる。ざっと1億円だ。そんな借金を個人で抱えたら破産だけど、国はいくらでも国債を発行してカネが借りられる。1029兆円では現実感が薄いけれど、家計になぞらえるとまさに非現実的なくらい膨大な借金を抱え込んだということかな。
里花 国と個人の話は全然違うということかしら。でも年間税収の17倍の借金って、欧米では考えられないほど多額ということになりそうね。
大地 でもこのくらい大丈夫という声も、少なくないんだ。
里花 うらやましいくらい楽天的ね。
大地 もちろんきちんとした理屈の上の話さ。主な考えを紹介しようか。いちばん強力な意見は、デフレさえ脱却すれば財政健全化はちゃんと進められるんだから大丈夫というものだ。「財政は経済の後からついてくる」という格言のようなものもあるくらいだからね。アベノミクスの最初の頃、信奉していた人たちの中には声高に「財政はどんどん改善する」と言う人もいたんだ。確かに一時的にワニの口が狭まりかけたことはあったからね。
里花 経済が成長すれば確かに税収は増えていくでしょうけど、問題は日本経済が復活するかどうかね。
大地 そうなんだ。そこで登場するのが「統合政府バランスシート」だ。政府の抱える赤字は大きくても、政府と日銀のバランスシートを合算すれば、巨額の負債はあら不思議、スーッと消えていくという説だ。日銀の資産を加えると、政府の負債は消えてしまう、という理屈なんだけどね。それと政府の資産もきちんと評価すべし、という主張とセットになっているんだ。
里花 ちょっと難しいけど、政府の発行する国債を日銀が持っている限り、合算すれば負債と資産は消えてしまうということ? マジックみたいね。
大地 話は途中だけど、ひと休みしようか。
里花 そうね。少し頭も休憩しないと。今、お湯を沸かしますね。
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