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「財政審の建議」に嫌疑あり【小松泰信・地方の眼力】2023年11月22日

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財務相の諮問機関である財政制度等審議会(会長・十倉雅和経団連会長)は11月20日、2024年度予算編成などに関する建議(意見書)をまとめ、鈴木俊一財務相に提出した。

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有事対応と医療・介護分野の徹底した歳出改革

建議書の表書きには、「政府においては、本建議の趣旨に沿い、今後の財政運営に当たるよう強く要請する」と記されている。
「Ⅰ.財政総論」の基本認識において注目したのは、次の2カ所。(強調文字は小松)
(1)「経済あっての財政であることは言うまでもないが、財政が経済の足を引っ張るようなことがあってはならない。さらに、財政運営の持続可能性の確保は、国のリスク・マネジメントの観点からも重要であり、有事において機動的に対応できるよう、常に財政余力を確保していくことが求められる」
(2)「少子化対策は長期的・継続的に実施する必要があり、そうである以上、その財源についても、医療・介護分野等の徹底した歳出改革や支援金制度の構築等を通じ、安定的に確保することが不可欠である」
この国を取り巻く情勢から避けられないことかもしれないが、「有事」の二文字に現政権の意図が透けて見える。
また、医療・介護分野の徹底した歳出改革を財源として少子化対策に取り組むという姿勢に、病に苦しむ人や介護の必要な人、そしてその家族のことを思うと、空恐ろしさを覚える。

医療や介護分野の現場に分断をもたらす増田発言

医療・介護分野の歳出削減について、秋田魁新報(11月20日付電子版)は、医療サービスの公定の対価として保険料や税金、患者負担を元に支払われる診療報酬を巡り、診療所はもうけが多いとして、報酬単価の「5.5%程度の引き下げ」を提言していることを伝えている。記者会見した財政審分科会の増田寛也会長代理が、診療報酬に関し「状況が良い診療所の収益を守るのか、勤労者の手取りを守るのか国民的な議論を」と訴えたことも伝えている。ちなみに、診療報酬については、診療所の報酬単価を5.5%程度引き下げると、保険料負担が年間約2400億円減ると試算している。
朝日新聞デジタル(11月20日16時00分)によれば、財務省が課題にあげるのが診療所(ベッド数20床未満)とのこと。開業医(院長)の年平均給与は約3千万円。建議では、コロナ禍で過剰な利益を得ているとして報酬単価の引き下げを必要とした。医師会などの医療側は物価高騰や賃上げが続くとして、診療報酬の大幅な増額を求めており、調整は難航しそうとのこと。
医師会の肩を持つ気は毛頭無いが、コロナ禍における医療現場の状況を垣間見た個人的経験からすれば、3千万円が決して高額とも思えない。ましてコロナ禍で過剰な利益を上げたとまで言えるのか、はなはだ疑問。
さらに、増田氏の発言は、医療従事者と勤労者,さらには患者や要介護者との間に分断を持ち込むもので、極めて不穏当な発言といわねばならない。 

「有事」バブルですか

「有事」については、「3.防衛」において、「防衛関係費とは、(中略)国債発行に依存することなく、税による安定的な財源の確保が不可欠であることは論を俟(ま)たない。そのための税制改正要望も提出されている。既に令和5年度(2023年度)から『防衛力整備計画』に基づく防衛力整備のための予算が執行され、令和6年度(2024年度)の予算編成が開始された以上、その財源についても、同計画等に沿った検討を着実に進め、国民の理解を得ていかなければならない」と記している。
「論を俟たない」が象徴しているが、「決めたんですから、黙ってこれでやりましょう」と、有無を言わせぬ姿勢。
さらに「防衛関係費の予算編成においては、(中略)『43兆円程度』という定められた金額を最大限効率的に活用しつつ、安全保障環境の変化にあわせた柔軟な防衛力強化を図るよう後年度負担についても適切に管理するものとする」と,一見当然のことをしれーっと書いているが、「43兆円」にも及ぶ防衛予算そのものがメスを入れる対象なんですよ。

どうする食料安全保障の強化財源

11月22日時点で、この建議を社説・主張・論説で取り上げた一般紙は確認できなかった。
日本農業新聞(11月22日付)だけが、建議の「7.農林水産」の内容について、論説で取り上げている。
建議について、「予算抑制に主眼を置いた内容で、農家の経営安定に逆行しかねない。食料供給リスクの高まりを踏まえ、政府は食料安全保障の強化に向けた財源を確保することに全力を挙げるべきだ」と指弾する。
転作助成金に当たる水田活用の直接支払交付金の見直し(単価の値下げ)に言及したことを「はしごを外すのに等しい」として、「交付単価を堅持し、生産性向上に取り組む農家に一層の支援をすべきだ」と訴える。
加えて、収入保険とほかの制度との重複を問題視し、将来的な一元化を提起するなど、「農家を支えるセーフティーネット(安全網)対策にも切り込んだ」ことなどから、「農家を支える経営安定対策こそ、万全な政策運営が求められる。安易な見直しを繰り返せば、かえって経営のリスク要因となりかねず、財務省が重視する大規模経営ほど大きな影響を受ける」と、諭している。収入保険と野菜価格安定制度との同時利用の打ち切りを検討している農水省に対しては、「同制度が持つ需給調整機能が揺らがないよう、産地の意向を踏まえた対応」を求めている。
さらに、大規模、法人経営への施策集中を求め、親元就農や中小規模の農家の役割を軽視していることには、「食料・農業・農村基本法」の改正に向けて「政府が6月に決めた『新たな展開方向』では『経営安定対策の充実』と『多様な農業人材の育成・確保』を掲げている。建議の内容はこれに反する」と迫っている。
最後に、今必要なことは、「食料安保に欠かせない予算を、当初予算からしっかり確保し、多様な農家が安心して経営を続けられるようにすることだ」と強調する。

この建議こそ「有事」

ところで、「7.農林水産」としてはあるが、林業にも水産業にもまったく言及がない。目次に偽りあり。第一次産業への認識のレベルの低さがそこに表れている。それらが営々として創出してきた多面的機能への言及は皆無。平和的国防産業をないがしろにするこの建議こそ「有事」である。
「地方の眼力」なめんなよ

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