シンとんぼ(70)食の安全とは(28)収穫前使用日数2023年11月25日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは、ここのところ「食の安全」とは何かということの検証を試みている。
現在、農薬の使用上の人為的なミスにどのようなものがあるか検証しており、前回までに希釈倍数・使用量、散布機具の洗浄、使用回数に関するミスがどのようにして起こり得るのかを紹介した。今回は、収穫前使用日数についてである。
この収穫前使用日数は、適用作物に対して、適用の希釈倍数・使用量で使用した場合の作物残留データをもとに設定されている。簡単に言えば、使用した後に農薬残留基準値以下に減衰するのは何日目なのかを作物残留試験データをもとに割り出し、収穫前使用日数を決定している。
例えば、収穫前使用日数が「7日前まで」となっている農薬であれば、収穫予定日の8日とか7日前であればセーフだが、6日前とか5日前の散布はNGであるということだ。逆にいうと、散布日が11月1日であれば、収穫できるのは、散布7日後の11月8日以降になるということだ。
通常、使用前にラベルを確認するのでこのミスが起こることは無いが、いつも使用する使い慣れた農薬の場合、「いつも通りに撒けばよい」と最新の適用内容をラベルでよく確認せずに従来の使い方で使用してしまうことがある。その場合、もし、使った農薬が何らかの理由によって収穫前使用日数が登録変更になっていたときは、従来の登録の内容で散布すると農薬取締法違反にはからずもなってしまうことがあり得るのだ。メーカー側もこの辺の登録内容変更の周知はしつこいぐらいきちんとやらないといけないが、使用者側も、「使い慣れているからラベルを確認しなくても大丈夫」ではなく、必ず使用前に製品に貼付されているラベルを十分に確認してから使用するようにする必要がある。とかく、思い込みがミスを起こす大きな要因になるので注意が必要だ。
もう一つ注意が必要なのが、1日の概念であり、農薬取締法では「1日は24時間」となっている。「収穫前日まで」使用できる農薬を例に取ると、ある日の朝6時に散布した場合、収穫できるのは、「翌日の朝6時以降」となり、早起きして翌日の朝5時から収穫を開始した場合、厳密にいえば農薬取締法違反となるのだ。これだと、毎日収穫しなければならないキュウリなどの果菜類はやりにくく感じるが、現在は次のような方法で対処することで落ち着いている。すなわち、朝6時に収穫を開始した場合、その収穫終了後速やかに収穫前日まで使用できる農薬を散布すれば、翌日朝6時からの収穫はOKなのだ(農薬工業会HPより)。
若干、拡大解釈だと言われるかもしれないが、実際には散布後24時間後と23時間後の農薬残留量にほとんど差はないことが確かめられているので全く問題のない正しい判断だろう。
重要な記事
最新の記事
-
【年頭あいさつ 2025】国際協同組合年機に反転 村上光雄 一般社団法人 農協協会会長2025年1月2日
-
【年頭あいさつ 2025】基本法理念 実現の時 江藤拓 農林水産大臣2025年1月2日
-
【年頭あいさつ 2025】基本法の具体化に全力 山野徹 全国農業協同組合中央会 代表理事会長2025年1月2日
-
食と農を未来へつなぐ【年頭あいさつ 2025】折原敬一 全国農業協同組合連合会 経営管理委員会会長2025年1月2日
-
【年頭あいさつ 2025】利用者本位の活動基調に 青江伯夫 全国共済農業協同組合連合会 経営管理委員会会長2025年1月2日
-
【年頭あいさつ 2025】つながり強化戦略推進 奥和登 農林中央金庫 代表理事理事長2025年1月2日
-
【年頭あいさつ 2025】医療、福祉の充実に一丸 長谷川浩敏 全国厚生農業協同組合連合会 代表理事会長2025年1月2日
-
【年頭あいさつ 2025】『家の光』創刊100周年 JA教育文化活動支援に尽くす 栗原隆政 (一社)家の光協会 代表理事会長2025年1月2日
-
【石破総理 新春インタビュー】政治の大転換期、新たな農業政策へ どう一歩踏み出すか(2)2025年1月1日
-
【石破総理 新春インタビュー】政治の大転換期、新たな農業政策へ どう一歩踏み出すか(3)2025年1月1日
-
【石破総理 新春インタビュー】政治の大転換期、新たな農業政策へ どう一歩踏み出すか(4)2025年1月1日
-
2025年度 農林水産関係予算 2兆2706億円 前年より20億円増2024年12月27日
-
【特殊報】モモほ場で「モモ果実赤点病」県内で初めて確認 愛知県2024年12月27日
-
【特殊報】ブドウにシタベニハゴロモ 県内の果樹園地で初めて確認 富山県2024年12月27日
-
【注意報】かぼちゃにアブラムシ類 八重山地域で多発 沖縄県2024年12月27日
-
米輸入めぐるウルグアイ・ラウンド(UR)交渉 過度な秘密主義に閣僚も「恥」 1993年外交文書公開2024年12月27日
-
1月の野菜生育状況 さといも以外の価格 平年を上回る見込み 農水省2024年12月27日
-
(416)「温故知新」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年12月27日
-
東京23区の12月の消費者物価 生鮮食品の前年同月比は2桁増2024年12月27日
-
JA全農あきたがスマート農業研修会 農機・担い手合同は初2024年12月27日