米穀販売業界を守る議員連盟設立の動き【熊野孝文・米マーケット情報】2023年11月28日
米穀業者が集まった席で「米穀販売業界を守る議員連盟(仮称)」を設立するための説明会があった。いまさらながらの感もあるが、酒類小売店を守る議員連盟や最近では町の本屋さんを守る議員連盟もあるのだから米屋さんを守る議員連盟があってもおかしくない。旗振り役を担っているのが一般財団法人日本米穀商連合会(略称日米連)である。
その昔、食管法があった時代は、コメを販売するには国の免許が必要であったことから町の米屋さんも結構な政治力を持っていた。ところが食糧法になり誰でもコメを売れるようになってから町の米屋さんは激減した。現在、日米連の組織は団体傘下組合員数が1035業者と一般組合員が1424業者、合計2500業者ほどで往時の10分の1程度の組織になっている。
日米連と言えばお米マイスター制度で知られているが、早いものでこの制度が始まって21年目になる。現在、3つ星マイスターが2000名、5つ星マイスターが400名認定を受けている。毎年試験が行われるのでその数が増えて良さそうだが、実際には廃業する米穀業者も多く、認定業者の多かった新潟県も250業者が半分以下の100業者にまで減っている。マイスターは小売店ばかりでなく、集荷業者や生産者もいるのだから、この減り方には変化のスピードを感じざるを得ない。
そうしたこともあって日米連では、米穀小売店だけではなく、コメの販売に携わる様々な業態に向けて寄付を呼びかけ、個人としてこの政治連盟に加盟してもらい政治的発言力を確保したいという思いがある。これまで何もやってこなかったわけではなく①食品衛生法改正時における米穀商の意見陳情②インボイス制度における米穀商の立場の意見陳情③米穀流通制度、米穀検査制度改正に関する米穀商の立場の意見陳情④コメの消費拡大や食育の必要性に関する意見陳述などを行ってきた。
これらの活動について「これらにつきましては、すべての意見が取り入れられることは非常に難しい状況ではありますが、日米連政治連盟の活動により、この4年間でやっと国に対して要望できるスタートラインに立つことが出来ました。しかしながらこの活動をここでやめてしまえば、米穀商は意見や不満がなく、制度改正等を了承したものとして政府に取り扱われてしまいます」
「現状に鑑みても、農林水産省における米穀流通の課題、厚生労働省におけるHACCP衛生管理の普及、また財務省におけるインボイス制度の問題提起や要望等省庁にまたがる課題は山積みです。今後もますます国会議員との親交を深め、情報交換、陳情、要望を図ることで米穀商の皆様方のご意見や要望が政府の政策や法律に反映されるように推進していかなければならないと考えております」としている。
要望の中で今最も力を入れなければならないとしているのがインボイス制度で、注意点として免税事業者との価格交渉を取り上げ「インボイス制度後の免税事業者との取引に係る下請け法等の考え方」と「独占禁止法上問題になるおそれ」について農水省の資料を基に説明した。また、特にコメ業界に感心が高い農協等特例について、果たしてこれに対応して新規に協同組合を作ったところが同じ扱いを受けられるのかという点も税制度上の解釈が難しくなるのではないかと言う見方を示した。
インボイス制度導入に反対しているところは、消費税そのものの廃止や食品への課税撤廃、軽減税率の見直し、制度開始後6年間の仕入税控除の経過処置の延長まで幅広い。日米連としては最低でも仕入税控除の経過措置3年間80%を延長することを最大の目標に置いている。
米穀小売店の政治力を高めるということであれば、最大の米穀店組織である東京都米穀小売商業組合(略称東米商)の協力があって当然だが、残念ながら東米商は日米連には加盟していない。
東米商は東京都の「お米クーポン事業」(共同購買事業)で4万3500tのうち全農から7000tを委託することになった。その受託額は28億円にもなる。実際は東京都の米穀小売店が搗精して低所得者に販売したわけではないのだが、東米商は2億6000万円を得ることが出来た。この金は組合員で分けるわけにはいかないので、年会費1社1万9200円を8年間にわたり6000円に減額することになった。
こうした出来事を見るとコメは食管法がなくなったとは言え、依然政治物資としての輝きは失っていないと言える。驚くべきことに東京都江戸川区では低所得者支援事業として2万円相当の食品を受け取れる措置が講じられ、この中には江戸川区の米穀商から魚沼コシヒカリを購入できるという選択肢もあった。日米連が米穀販売業者を守る政治連盟を作ると言うのなら東米商の協力を得ることが隗より始めよと言うことになるのではないか。
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