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シンとんぼ(71)食の安全とは(29)農薬の飛散(ドリフト)2023年12月2日

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令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは、ここのところ「食の安全」とは何かということの検証を試みている。

現在、農薬の使用上の人為的なミスにどのようなものがあるか検証しており、前回までに希釈倍数・使用量、散布機具の洗浄、使用回数、収穫前使用日数に関するミスがどのようにして起こり得るのかを紹介した。これらに適用作物を加えたものが、農薬使用時の人為的ミスで農薬取締用違反が起こり得るもののほとんどであるが、あと2つ散布時に意識しなければならないものがある。それは飛散と流出である。

まず、農薬の飛散(ドリフト)について紹介する。

農薬の飛散(ドリフト)は、いうまでもなく散布対象の圃場以外に農薬が飛散してしまうことをいう。農薬はどの農薬も多かれ少なかれドリフトするリスクを持っているが、特にリスクが大きいのが、水和剤やフロアブルなど水に希釈して細かい霧状の噴霧液を出すものや粒子がミクロン単位の粉剤である。どちらも散布直後は農薬が舞い上がり、特に粉剤などは、辺り一面が真っ白となるほどすさまじい飛散を起こしやすい。それによって何が起こるかというと農薬取締法違反(適用作物)であり、特に水田地帯の中に園芸作物の圃場が混在する場合に起こりやすい。

なぜなら、水田で使用される水稲用農薬の場合、水稲にのみ農薬登録を持ったものも多いからである。輪作などで水田の横にキャベツや長ネギなどの園芸作物畑がある場合、もし水稲にしか登録の無い農薬が飛散して園芸作物に付着すれば、その時点で適用作物に無い作物に対して農薬を散布したことになり、農薬取締法違反となる。加えて、登録の無い作物の場合、園芸作物に対して残留基準値が設定されていない場合が多いので、ポジティブリスト制度に則り、登録の無い農薬の残留基準値である一律基準0.01ppmが採用されることになる。この0.01ppmという数値はかなり厳しい基準であることから、農薬の意図しない飛散によって農薬残留量でも基準値を超過してしまう恐れがあるのだ。

なので、特に混作地帯では農薬の飛散には細心の注意が必要で、防風ネットの設置などの予防措置や隣に作付けされている作物にも登録を持っている農薬を選ぶなどで対策されている。

近年、水田の利用率を高める高度水田輪作の実施面積が増えているので、それに伴い、農薬の飛散に対する配慮の必要性が増している。

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