【JCA週報】世界史の大きなうねりの中で #1 (三輪昌男)(2002)2023年12月11日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長中家徹JA全中代表理事会長、副会長土屋敏夫日本生協連代表会長)が協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、当機構の前身である協同組合経営研究所が発行した「協同組合経営研究月報」2002年6月号に、三輪昌男氏が執筆された「世界史の大きなうねりの中で」です。
ボリュームの関係から複数回に分けて掲載いたします。途中で他の掲載を挟んだ場合はご容赦ください。
世界史の大きなうねりの中で #1/全6回 (2002)
三輪昌男(國學院大學・名誉教授)
(連載 21世紀における協同組合の意義と課題 第1回)
2001.9.11以降(#1)
ICAソウル総会(#2)
第三世界の声(#3)
1999年末シアトル(#3)
ポルトアレグレ集会(#4)
別のダボス(#4)
新自由主義(#5、#6)
狂気の時代の正気の島(#6)
次の点に留意し,③に重点を置いて執筆を,というご依頼を受けた。①環境条件の展望,②協同組合の意義と課題,③組織・事業・経営に関する提案。
申し訳ないけれど,私は①②についての考えを述べさせていただく。頂戴した字数がそれで尽きそうだし,それでも意味がある,と思うから。③については,比較的最近出版した2冊の本(『農協改革の新視点』1997年,『農協改革の逆流と大道』2001年,どちらも農文協)で,農協に即して議論しているということで,お許しを願って。
2001.9.11以降
21世紀が始まった年の9月11日,米国でテロ事件が激発した。
米国政権はすぐに対処の姿勢を明確に示し,激しく行動した。情勢が一段落した後の2002年4月現在も,その姿勢は固く,見通せる限りで変わりそうにない。
どういう姿勢か。米国政権が広く用いたのではなく,日本で話題になっただけのようだが,「ショー・ザ・フラッグ」という言葉,印象的なこの言葉が,その姿勢を適切に示していると思う。
「旗を見せろ」「味方か敵か」。旗は2種類しかない。
2分法は,選択が必要なさまざまな場面で現われる。協同組合の活動の中でも経験する。しかしこの2分法は,「敵をカで捩じ伏せ抹殺する」ことを不可分に伴っており,特殊である。
米国政権はテロの根絶を唱えている。その方法がショー・ザ・フラッグ,つまり軍事力によるテロリストと支援勢力の繊滅である。
テロの根絶の方法は,それしかないのだろうか。いや,大きくもう一つ,ほかにある。テロには原因がある。それに目を注ぎ,除去に力を尽すことである。
しかし米国政権は,その方法を全く無視している。なぜか。自分は常に正しく,テロを受ける原因を作ったなどということはありえない,としているからである。
独善。この態度は,ほかにも次のように表れている。
●味方か敵か,を決めるのは自分である。つまり,米国政権が検察官であると同時に裁判官であり,弁護人は認めない。
●あのテロ事件の犠牲者に深い悲しみの心を捧げる。しかし,敵でないにしても味方の旗を持っていない者には,極めて冷たく,アフガニスタン誤爆犠牲者への思いやりは殆ど見受けられない。
カで敵を捩じ伏せる姿勢,極端な独善の態度。米国政権が強烈に打ち出し,保持し続けているこれを,米国のマスメディアは全面的に支持し,批判や異論は登場の余地がないようである。また,これを支持して多くの庶民が住宅に星条旗を今も掲げていること,スポーツ・イベントの場で熱狂的な示威が出現することに明白なように,疑問を囁くことさえ憚られる雰囲気が,米国の社会生活を覆い続けているという。
米国は,軍事・政治・経済の各面で,世界中のどの国と比べても飛び抜けたカを持つ,唯一の超大国である。その米国が,みてきたような姿勢・態度を強烈に打ち出し,21世紀に入った世界史の展開をリードしている。これにどう対応するかが,人々に,人類に,問われている。
「21世紀における協同組合の意義と課題」についても,この問題に焦点を当てた議論を欠かせない。
(続く)
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