全国銘柄御三家の供給量は間に合うか?【熊野孝文・米マーケット情報】2023年12月12日
農水省が12月1日にまとめ公表した10月31日現在の5年産米の検査数量は、水稲うるち米が328万3200t、前年同時期の4年産米検査数量329万9000tに比べ99・5%でほぼ前年並みの検査数量になっている。前年産と大きく異なる点は等級比率で5年産は1等が61.3%(4年産79.4%)、2等30.5%(同17.8%)、3等7.1%(同1.9%)、規格外1.1%(同0.9%)となっており、1等比率が大きく低下したこと。
上の表は全国銘柄の御三家新潟コシヒカリ、秋田あきたこまち、北海道ななつぼしの検査数量と等級比率をまとめたもの。
検査数量は前年産同時期の数量をいずれも下回っているが、問題は11月、12月にどのくらい検査数量が積み上がるかで、これにより御三家のひっ迫度合いが変わってくる。ちなみに4年産米と同数量まで検査を積み上げるには秋田あきたこまちが8万4600t、新潟コシヒカリが5万4300t、北海道ななつぼし6万5157tがさらに必要になる。産地側からはこれだけの数量を積み上げるのは作況の実感や品位の低下などの理由で難しいという見方が強い。
例えば秋田あきたこまちは、農協系統の集荷見込み数量は生産者出荷契約時点で11万9165tになっており、この時点で4年産を5561t下回っている。さらに作況も低下しており契約数量自体の集荷も危ぶまれている。新潟コシヒカリの場合、品位の低下が著しく、その分だけで歩留まりが2%落ちるという見方をされている。
POSデータから通年で販売される御三家銘柄の必要量を推計すると秋田あきたこまち、北海道ななつぼしで28万t程度、新潟コシヒカリが35万t程度になるが、これは量販店での店頭価格で売れ行きが左右される。マンスリーレポートから御三家の価格動向を見てみると5年産米のスタート価格(9月時点)では、相対価格は北海道ななつぼしは1万5336円(税込み、前年同月比1702円高)、秋田あきたこまちが1万5274円(同1253円高)、新潟コシヒカリが1万6983円(同232円高)になっている。その後、市中価格は右肩上がりで、卸は量販店との精米値入交渉で2度も3度も値上げ交渉をしなければならなくなっている。さらに年明けからは輸送経費や保管料の値上が予定されており、コメそのものの値上がり以外にこうした値上げ要因も考慮しなければならない。
値上げ交渉は、あらゆる食品が値上がりしているのでコメの値上げ交渉もある程度受け入れられると思われるが、問題はそうした交渉で店頭の価格が改定された場合の売れ行きである。左表は以前米穀機構が作成した年収別のコメ支出金額と比率を示したものである。これで明らかなように所得が低くなるほどコメへの支出金額のウエイトが高くなる。別の側面から見ると同じ量のコメを食べるとするならば、より価格の安い銘柄米やブレンド米を選択するという消費行動をとるようになると予測される。
その分岐点が御三家銘柄の場合どこなのか今から慎重に見極めないと高い在庫を抱えてしまったということになりかねない。
重要な記事
最新の記事
-
飼料用米多収日本一 山口県のあぐりてらす阿知須 10a当たり863kg2025年3月3日
-
【特殊報】ナシ胴枯細菌病 県内で初めて発生を確認 島根県2025年3月3日
-
政府備蓄米売り渡し 入札 3月10日に実施 農水省2025年3月3日
-
新潟県の25年産米概算金「コシ2.3万円」 早期提示に歓迎の声 集荷競争、今年も激化か2025年3月3日
-
米の集荷数量 前年比23万t減に拡大 農水省2025年3月3日
-
米価高騰問題への視座【森島 賢・正義派の農政論】2025年3月3日
-
【次期家畜改良目標】低コスト、スマート農業重視 酪農は長命連産、肉牛は短期肥育2025年3月3日
-
【改正畜安法の現状と課題】需給対策拡大が焦点 問われる「国主導」2025年3月3日
-
あなたたちは強い〝武器〟を持っている JA全国青年大会での「青年の主張」「青年組織活動実績発表」講評 審査委員長・小松泰信さん2025年3月3日
-
JA農業経営コンサルタント 15人を認証 全中2025年3月3日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年3月3日
-
農業用バイオスティミュラント「エンビタ」とは 水稲育苗期にも効果 北興化学工業2025年3月3日
-
アミューズメント施設運営「ティスコ」株式を譲受 農林中金キャピタル2025年3月3日
-
「2025ローズポークおいしさまるごとキャンペーン」でプレゼント 茨城県銘柄豚振興会2025年3月3日
-
福岡ソフトバンクホークスとのオフィシャルスポンサー契約更新 デンカ2025年3月3日
-
ファーマーズ&キッズフェスタ2025 好天で多数の参加者 井関農機は農業機械体験2025年3月3日
-
【今川直人・農協の核心】産地化で役割が高まる農協の野菜取り扱い2025年3月3日
-
野菜がたっぷり食べられるカレー味「ケンミンカレー焼ビーフン」新発売2025年3月3日
-
第164回勉強会『海外市場での植物工場・施設園芸の展開』開催 植物工場研究会2025年3月3日
-
春の山梨の食材の魅力を伝えるマルシェ 5日から国分寺マルイで開催 雨風太陽2025年3月3日