2040年の予測を覆すコメ政策を【熊野孝文・米マーケット情報】2024年1月9日
U.S.GRAINS(アメリカの穀物関連の品目団体)が2040年に向けて東アジアの農業と食品産業がどのような可能性を秘めているかについての研究報告書「FOOD2040東アジアの食と農の未来」の概要が農水省の将来展望を示した資料の中に出ている。2011年に公表したものだが、現状はその予想のように進んでいる。
<中国の台頭>
〇2040年には、食料および農業の世界市場は、中国人の嗜好、ニーズ、 および開発品の影響を強く受けて形作られるようになるであろう。
〇中国の取引市場は、世界の貿易にとってますます重要な適正化価格基準点となっていくであろう。
<日本市場の見通し>
〇日本の食料および農業の取引環境は、次第に中国の影響を強く受けて形づくられるようになる。
〇(日本は、)縮小する市場の中で成長する戦略を採用しない限り、企業はサプライ・チェーン全体にわたり委縮するか消滅する。こうした戦略は次を含む。
・ 輸出を拡大する。野菜と果物を含む高価な製品に最大の可能性がある。生の商品や肉の輸出には将来性がほとんどない。
・ 高齢者の関心事に的を絞って製品を開発する(例えば、消化機能が損なわれた人のための製品や、特定の健康状態に用途を絞った製品)。
・安全性、プレゼンテーション、価格の面で積極的に競争する。
○日本の若い人々は所得が低く、将来の所得への期待もあまり持てないため、インスタントで便利な食品を優先するコスト意識の高い市場区分を生み出した。
<輸出の可能性>
〇日本は世界の輸出大国である。すべての産業にわたり国内市場が縮小するに伴い、日本は成長のためますます輸出に依存するようになるかもしれない。
○輸出を狙う加工食品の生産は増加する。
○日本は、野菜、香辛料、地域果物、酪農製品(ヨーグルトなど)、及び 他の加工製品を含む高額製品の輸出においてより重要なプレイヤーになる。
<日本農業の見通し>
○ 大半の生産が小規模な(したがってあまり競争力のない)農場に限定されており、この理由のひとつは利用可能な平地が限られていることにある。 しかし、将来はこれに変化が現れる可能性もあり、農業生産の縮小が緩和されるかもしれない(部分的にすぎないが)。
・生産拡大に有利な要因:工業式農場経営(つまり米国やブラジルの スタイル)の台頭。これは日本で一般的になると予想される。
・生産拡大に不利な要因:法人形態の農業企業がすでに高額作物(例えば野菜、香辛料、果物)に重点的に取り組んでいる。その理由は、政府の支援の有無に関係なく、これらに国際的競争力があるかもしれないからである。
農水省の2040年の予想では、最も衝撃だったのが主要農産物の需要予想で、コメは主食用需要としては2020年に704万tであったが、2040年には211万t減少して493万tになると予想している。需要量が減るのは人口が2000万人も減るためコメだけではないが、量的にはコメが突出している。このためコメの作付面積は2020年の137万haから2040年には41万ha減少して96万haで足りると予想、主食用以外の作付面積が107万haにもなると予測している。
1971年から始まったコメの減反政策は今日まで延々として続けられており、転作作物に支払われる助成金は当初の700億円から現在は4000億円を超えるまでになっている。今後さらに減反を進めなければならないとすると転作助成金はさらに膨らむことになる。コメの需要が増えればそうした措置は必要ない。これまでコメ政策はコメの価格を上げるために供給量を絞る政策が続けられ、用途を法律で縛るということまで行われ、需要をシュリンクさせ続けてきた。
コメの価格が上がらないと再生産できないとの理由から供給を絞る政策が続けられているのだが、識者の試算では、稲作農家が経営を継続できるようにするためには米価が国際水準並みに下落しても3500億円の直接支払いで経営が可能だという。つまり転作助成金をコメ農家に直接支払いしてもおつりがくるのである。さらに米価が国際水準並みに下落するということは日本米の国際競争力が増し、輸出力がつくことになる。コメ加工品として有望視されているパックご飯は、海外では店頭価格が他国製品の3倍するため競争力がない。
日本のパックご飯の強みは"水"と"コメ"で、これこそが日本の資源と言え、この二つを最大限活用することこそが日本農業の再生への道で、そうできるようにするための対応策はU.S.GRAINSの研究報告書を読めば自ずと出て来る。
その答えとは2040年の予想を覆すコメ政策に作り替えることでしか成しえない。
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