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能登半島が突きつけるこの国の未来【小松泰信・地方の眼力】2024年1月17日

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「岸田氏は地位への欲深さはあるが、信念を感じられない。『火の玉』となって取り組むと言っていますが、国民の不信感を払拭するような改革は期待できそうもありません」(政治ジャーナリスト・野上忠興氏、毎日新聞(1月17日付))

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「何とかします」と言われても信用できない

西日本新聞(1月15日付)は、その信念なき岸田文雄首相が1月14日に能登半島地震後、初めて被災地を訪れたことを伝えている。発災から14日目の駆け足訪問。その姿に触れ、被災者は次のようなコメントを語っている。

「もう少し、早く来てほしかった」(避難生活で体調を崩している70代の女性)。

「体育館で皆を大声で励ましたりしてくれれば、心持ちも違うのに」(1日から身を寄せる70代女性)。

「魔法使いでもない限り、誰が来ても変わらない」「若者は少なく、自分たちで頑張るしかないが限界もある。行き詰まった時、政府に背中を押してほしい」(50代男性)。

「もう少し早く来ることができたのではないか」(災害支援団体代表)。

「裏金問題があるから、首相から『何とかします』と言われても信用できない」(70代女性)。

能登半島問題は中山間地域問題

「『TKB48』は災害関連死の防止につながる避難所の設置目標という。トイレ、キッチン、ベッドを48時間以内に設置し、被災者が安心して滞在できる環境を確保することを指すが、日本ではまだまだ実現が難しい」で始まる毎日新聞(1月17日付)のコラムは、「能登半島地震では山地の多い地形が避難や支援の障害になっている。快適なトイレカーも支援に派遣されているが、道路が寸断された場所では使えない。雪の中、ビニールハウスの即席避難所で暮らす高齢者の姿に胸が痛む」と記す。

「『寸断』『孤立』。能登半島地震の被災地から連日、そんな状況が伝わってくる」で始まる、信濃毎日新聞(1月14日付)の社説は、「物資や医療を届けようと現地に入った支援者らが、発生から何日もたつのに窮状が知られていない地域が多いと指摘している。阪神大震災や熊本地震とはまた違った困難に直面している現実に目を向ける必要がある」とする。

幅が狭く奥行きがあり、海沿いや山間に集落が点在する能登半島の地形から、「もともとアクセス経路が限られている地域だ。災害時に外からの支援が難航するのは想定できた事態だったとも言える」として、「行政の備えは十分だったか」と石川県に問いかけると同時に、中山間地の多い長野県にも問いかけ、「支援を迅速に届けるには何が必要か。同様のリスクを抱えている現実を、改めて認識しておきたい」とする。

政府の対応については、「元日という特別なタイミングで起きたことを差し引いても、実態把握のスピードという点で後れを取ったのは否めないだろう」とし、「助けを求める人がどこにどれだけいるかを一刻も早く把握するのは災害対応の基本だ。課題を検証し、国レベルで対策を詰めていく必要がある」と今後の課題を提示する。

自治体の役割と限界克服策

「能登半島地震の発生から2週間。この大災害は人口の減少と高齢化に直面する地域での災害対応の大変さを浮き彫りにした。強い揺れによる深刻な木造住宅の被害、道路の寸断による長引く孤立、停電や断水、通信障害、なかなか進まない避難所の生活環境の改善...」で始まる佐賀新聞(1月16日付)の論説(共同通信配信)は、「災害への緊急対策、復旧・復興の司令塔は住民に最も近い市町村」として、自治体が認識すべき役割を提示している。当コラムは、その内容を次のように整序した。

(1)住宅の耐震改修の促進。費用負担から自宅の補強に踏み出せない人も多いことから、箱型の個室「耐震シェルター」を置くような簡易な方法も活用し、耐震化を進める。

(2)孤立対策の充実。集落単位で食料や飲料水、燃料、発電機、仮設トイレなどの備蓄を増やし、井戸も掘って生活用水を確保する。救助や土砂の除去のため重機も配置。

(3)安全な避難所を十分に準備し、仮設住宅の設置場所も事前に決める。

(4)復興に向けた青写真も住民参加で議論する。

しかし、大規模災害や感染症危機など既存の法律で対応できない非常事態での行使を前提としたうえで、「地方自治法が改正され国から自治体への『指示権』が拡充される予定」であることを紹介し、自治をないがしろにしないか、地方側がしっかり監視することを求めている。

さらに、2014年に時の安倍晋三首相が「地方創生」を提唱した後、東京一極集中の是正と人口減対策が進められてきたものの、効果がほとんどなかったことから、「国の対策はあてにせず、大幅減を前提に地域の生活を守るサービスや行政をどう維持するのか、自治体は自ら対策を練らなければならない」とする。ただし、マンパワーが不足しているため、周辺市町村、都道府県との連携や、NPOや企業も巻き込んでの官民融合型の組織づくりなどを提起している。

本気で能登半島の復旧・復興を考えているのか

日本農業新聞(1月17日付)は、「農村の災害は農業、食の危機につながる」ことから、中山間地域が被災地となった能登半島地震の復旧・復興は、「農村再生策と両輪で進められなければならない」と訴える。当該地域の過疎化が進めば、農村に根付いた伝統や文化を失うだけでなく、当然食料生産にも影響を及ぼすこととなる。中山間地域の人口は全国の約1割にすぎないが、国土の6割以上を占めている。耕地面積と農業産出額は各4割を占め、多面的機能も担っている。農水省も「国民の大切な財産」と位置付けているとのこと。しかし災害の度に農地は荒廃し、熊やイノシシなどの野生動物による被害が増えることから、食料自給率の低下を危惧し、「農村を守ることは日本の未来を守ること」という視点が、被災地支援には欠かせないとする。

この論調に異議はない。しかし、農林漁業という第1次産業、それを生業とする農家、漁家、林家、それらが存在する農山漁村をないがしろにしてきたこの国の政治が、能登半島の復旧さらには復興に本気で取り組むとは到底思えない。日本海の向こうに控える国々の脅威を強調し、復旧・復興への国費投入を出し渋り、「半島仕舞い」に追い込み、防衛施設等の迷惑施設の集積所にするのではないかと、勘ぐっている。これがゲスの勘ぐりであることを願うばかり。

早晩、「日本の未来を守る」ために「農山漁村」が必要なのか、「迷惑施設」が必要なのかが突きつけられるはず。その時、多くの国民が「農山漁村」と答えるために、平和を希求する人々がどれだけ知恵と汗を出し続けるか、それがこの国の未来を決める。

「地方の眼力」なめんなよ

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