【書評】「日本が瓦解する日」金子勝 著(徳間書店2023,9月)2024年1月19日
金子節がさく裂する。バブルとその崩壊後の日本の「失われた30年」を時代の渦中で生きてきた私たち。世界で第2位の経済規模がいまや中国の3分の1,ドイツにも円安で抜かれそう、かつて製造業で世界を席巻していた日本の凋落、2011,3,11以後も忘れ去ったかのような旧態依然としたエネルギー政策、そして目を覆うばかりのだらしない劇場と化した自民党をはじめとする政治に「なぜ?」を自問する日々。そんな状況を手際のよいベテラン医師よろしく切開手術をして見せる。
日本経済がイノベーションで後れを取った原因は経団連企業が安倍・黒田金融緩和路線に胡坐し、株価中心の経営で「内部留保」「自社株買い」「配当」優先で開発・研究投資と人材投資(教育)を怠ったことにあるとしている。
政府予算編成・執行にごまかしがあり、例として防衛予算43兆円のからくりを説明。予備費を直近3年で毎年10兆円計上して残額を残すやり方で国会審議をすり抜けようとしている。(国家予算まで裏金化)
GDPの2倍以上の国債発行残高は国内貯蓄減少と貿易(経常)収支赤字化により国内で支え切れず、暴落するリスク大(金融大混乱とインフレ懸念)以上3点を指摘している。
近年資本主義の行き詰まりや地球環境問題などから「脱経済成長論」を説く識者が多いが、私は日本の財政や国債残高を考えると成長を求めざるを得ないと考える。金子さんはイノベーション重視論者なので納得感がある。金子処方箋は説明尽くされていない部分もあるが次の通り。
① エネルギーと食料政策を自給型地域分散システムに抜本的に替える(イノベーションの起爆剤になりうる)
② 地方分権改革(税制改革前提と思われる)と教育研究体制の拡充
③ 原発の廃止、既存電力会社の見直し・廃止と再生エネルギーへの転換(原発不良債権処理化)
④ 財政カタストロフ時には国債残高も凍結・不良債権処理化
私たち国民は安倍・黒田路線とこれを踏襲する現政権のおかげで100年の負債を背負わされてしまったのかもしれない。金子処方箋・「日本の瓦解を食い止める」ことは実現できるのか?私たちへの重たい問でもある。
(協同組合懇話会 代表委員 今尾和實)
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】JA全農(2025年1月1日付)2024年11月21日
-
【地域を診る】調査なくして政策なし 統計数字の落とし穴 京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年11月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】国家戦略の欠如2024年11月21日
-
加藤一二三さんの詰め将棋連載がギネス世界記録に認定 『家の光』に65年62日掲載2024年11月21日
-
地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日
-
全農いわて 24年産米仮渡金(JA概算金)、追加支払い2000円 「販売環境好転、生産者に還元」2024年11月21日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
JAあつぎとJAいちかわが連携協定 都市近郊農協同士 特産物販売や人的交流でタッグ2024年11月21日
-
どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第317回2024年11月21日
-
JA三井ストラテジックパートナーズが営業開始 パートナー戦略を加速 JA三井リース2024年11月21日
-
【役員人事】協友アグリ(1月29日付)2024年11月21日
-
畜産から生まれる電気 発電所からリアルタイム配信 パルシステム東京2024年11月21日
-
積寒地でもスニーカーの歩きやすさ 防寒ブーツ「モントレ MB-799」発売 アキレス2024年11月21日
-
滋賀県「女性農業者学びのミニ講座」刈払機の使い方とメンテナンスを伝授 農機具王2024年11月21日
-
オーガニック日本茶を増やす「Ochanowa」有機JAS認証を取得 マイファーム2024年11月21日
-
11月29日「いい肉を当てよう 近江牛ガチャ」初開催 ここ滋賀2024年11月21日
-
「紅まどんな」解禁 愛媛県産かんきつ3品種「紅コレクション」各地でコラボ開始2024年11月21日
-
ベトナム南部における販売協力 トーモク2024年11月21日
-
有機EL発光材料の量産体制構築へ Kyuluxと資本業務提携契約を締結 日本曹達2024年11月21日