秋田あきたこまち1万7000円超え【熊野孝文・米マーケット情報】2024年1月23日
「量販店には特売をしないようにお願いするか、通年販売の見直しをお願いするしかないですね」。1月18日に開催されたクリスタルライスの取引会終了後にコメ卸に今後秋田あきたこまちの供給計画について聞いたところこうした返事が返ってきた。クリスタルライスの取引会での秋田あきたこまちの売り唱えの高値は1万7,300円であったが、その売り唱え価格のままで成約した。前回、昨年11月30日に開催された取引会の価格に比べ1000円以上値上がりしている。
1月18日のクリスタルライスの取引会概要は、54産地銘柄5万9,212俵の売り物が出た。前回昨年11月30日の取引会よりも約3割売り物が増えたのだが、全銘柄の加重平均価格は前回より5%値上がりして1万6,344円になった。主要な産地銘柄の価格は表の通りだが、軒並み1000円がらみの値上がりとなっている。特に家庭用全国銘柄である秋田あきたこまちは売り唱え価格の高値が1万7,300円であったが、すべて買われたしまった。先行きのことも想定するとこの価格でも手当せざるを得ないということなのだが、今や秋田あきたこまちはプライスリーダー的な存在になっている。それ以外でもいわゆる業務用に向けられる銘柄も軒並み急伸しており、どこまで値上がりするのかわからないような情勢になっている。
現在の状況を整理すると①農水省の需給見通しでは5年産主食用米の生産量が減少したことから今年6月末の在庫は176万tになる。(民間在庫が180万t切ると需給がタイト化する)②インバウンド需要が回復、外食需要が盛り上がっている―が主な要因になっている。供給面を見てみると5年産米の検査数量は363万8000t(昨年11月末現在)で4年産米の同期に比べ98.2%まで積み上がっている。ただし、1等比率は61.2%で前年産の78.7%に比べ17ポイント以上落ち込んでおり、上位等級の比率が落ち込んだというのが5年産の特徴。全国銘柄の検査数量は、新潟コシヒカリが25万0,690t(前年産同期比98・9%)、秋田あきたこまち21万3,229t(同98.4%)、北海道ななつぼし18万3,281t(同95.8%)となっており、3大産地銘柄とも前年産を割り込んではいるものの極端に少ない数量ではない。大きく違うのは等級比率で、新潟コシヒカリは1等がわずか5%しかない。秋田あきたこまちも56・9%とこれまでにないような低い1等比率である。1等比率低下の大きな原因は高温障害によるシラタの発生だが、このことが精米にした段階での商品化率低下の原因になっている。さらに5年産米は全国的に容積重(1リットル当たりのコメの重さ)が軽く、これも商品化率低下の要因になっており、顕著なのが篩下米の減少で昨年産米に比べ20%も少ないと試算されている。このため主食用の増量原料となる中米クラスが供給不足から価格が急騰、1万3000円以上しているほか、加工原料用向けの原料米も大きく値上がりしている。
米穀機構の調査によると一人当たりのコメ消費量は中食や外食で消費する量はコロナ明けの昨年4月から毎月前年同月を上回っており、直近のデータである5年11月前年同月を6%も上回っている。また、インバウンド需要も旺盛で外食業界がまとめた企業別の既存店舗の売上高を見ても軒並み10%程度伸びており、需要面でも価格押上の要因が働いている。
需給がタイトになると裾ものから値上がりするが、5年産の場合、裾ものの値上がりもさることながら供給量を絞り過ぎた結果、中間クラスのコメまでタイト感が強まっている。
1月23日には早くも6年産米(2024年産米)の政府備蓄米の買入入札が行われるが、市中相場が急伸していることから、新米の価格の位どころが掴めず、リスクを負いたくないという思いからか6年産は応札を見送るというところも出始めている。
最大の焦点になっている応札価格位どころに関しては、落札可能な水準としては、過去の落札価格や相対取引価格から1万3,406円が最低ラインと試算され、1万3800円から1万3900円の応札が多くなると予想されている。ただ、現在の相場をみると応札者が1万4000円以下ではメリットがないと判断するのは自然だが、それ以上にある意味、こうした異常な状況が続けば端境期には予想もつかない価格が現出する恐れがあり、政府備蓄米に応札すること自体が高いリスクを抱えることになりかねない。
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