(369)米国の農場(2022年)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年2月2日
米国農務省から2022年の米国農場の概要が公表されていますので、その中で興味深い点をご紹介します。
米国の農場は大別すると4種類に分類される。内訳は、小規模家族農場(Small family farms)、中規模家族農場(Midsize family farms)、大規模家族農場、そして非家族農場(Nonfamily farms)である。
ここで、GCFI(Gross Farm Cash Income)という概念を理解しておく必要がある。直訳すれば農場現金総収入で、経費控除前の年間収入である。ただし、この中には現金収入、農業関連収入、そして政府からの農業プログラムの支払いを含む。
先に述べた4分類のうち、小規模家族農場とは、GCFIつまり現金農場総収入が年間35万ドル未満の農場である。内容は以下のとおりである。
・Retirement farms:
引退農場。主たる経営者が引退し、小規模で継続している農場。
・Off-farm Occupation farms:
副業農場。主たる経営者の主な職業が農業ではない農場。
・Farming-occupation farms:
専業農場。主たる経営者の主な職業が農業の農場。
専業農場は、GCFIが15万ドル未満のクラス(Low sales)と15万ドル以上35万ドル未満(Moderate sales)に分かれる。
中規模家族農場は、GCFIが35万ドル以上100万ドル未満の農場である。
大規模家族農場は、GCFIが100万ドル以上の農場であり、500万ドル未満のクラス(Large farms)と500万ドル以上のクラス(Very large farms)に分かれる。
最後に、Nonfamily farms(非家族農場)がある。これは農場経営者とその関係者が事業の過半数(50%)を所有していない農場である。以上をまとめると表のようになる。
* *
ところで、現在の米国には約200万の農場がある。これをどう見るかは見方による。
例えば、家族農場か否かという観点で見れば、農場数では家族農場が全体の97.3%、面積では92.7%、販売額では89.6%を占めている。これだけで言えば、現代の米国では家族農場が圧倒的多数である。ここからは米国の農業は家族農場が中心という主張が当然のように導き出される。もちろん、間違いではない。
一方、農場数で見れば、小規模家族農場は全体の88%を占めるが、実際の農地に占める割合では46%にまで低下する。さらに、販売額に占める割合では小規模家族農場は全体の19%にまで低下する。ここからは、米国の農場は数の上では小規模家族農場が圧倒的だが、実は販売額では2割にも満たず、実際は中規模あるいは大規模の家族農場が中心という別の側面を主張することができる。
さらに、大規模家族農場に注目することもできる。農場数では3.4%、農地面積では24.8%だが、販売額に占める割合では51.8%を占める。ここからは、今や米国では農場数3.4%に過ぎない67,936の大規模家族農場が全米200万農場の販売額の過半数を占めている。その中でも500万ドル以上の販売額を持つ8,134農場だけで全販売額の22.8%を占めていると言うことができる。
また、訪問時にあなたの農場は「Large」と言うか、「Very large」と言うかで実は定義上は販売額が異なることなど、意外と話のネタになるかもしれない。
さて、物事は、どこを切り取り、どのような形で焦点を当てるかにより、同じ内容を述べていても印象が大きく異なる。使い古された例では、半分まで水が入っているコップを見て、「もう半分しかない」と考えるか、「まだ半分ある」と考えるかというような違いに近い。数字で示せば、50%は半分であり何も言うことはないが、30%が50%に増加したのか、それとも80%が50%に減少したのかにより同じ50%でもその意味が異なるのと同じである。
こうしたことを考えると、当たり前だが、先の農場の分布ももう少し細かく内容を見ないと何とも言いようがない。作物別あるいは畜種別の分布や各々の所得など、そのあたりは次の機会に検討してみたい。
* * *
こういうデータをじっくりと読み込む時間が年々少なくなりつつあります。現実に戻れば期末試験の採点、これが当面の作業です。
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