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【今川直人・農協の核心】本来の役割より重く2024年2月8日

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改革の目的は農協の存続

令和4年1月1日施行の農協等の監督指針の改正は、自己改革の猶予期間が明けて一段と行政指導を強化する内容であった。(主な新設・改正事項下記)

「実践サイクルの構築、数値目標と実施期限の明示、将来の収益及び費用の見通し(中長期収支シミュレーション)、常態的赤字の段階的縮減、目標未達事業の要因分析と対策の修正、量と形態に応じた大口利用者対応、農業所得向上に関するKPI、経済事業の黒字化、准組合員の位置づけと事業利用の在り方の検討など」

本来、法律になじまない経営や事業の改善を行政指導で細大実現する意図が前面に出ている。とくに経済事業の収支改善に関わる指導が周到になっている。

国鉄、郵政改革は政府の関与を見直し自由度の高い株式会社に移行する(郵政は現在不動産事業参入を予定)ものであったが、同じ官製の改革でも農協改革は意義が異なる。農協改革の目的は、農業振興に寄与する農協の「存続」である。

農協改革の効果は、部分的であるが数字になって表れ始めている。令和3年度総合農協統計表による販売事業取扱高は、価格下落による米の減少(前年比9.1%減)を畜産・酪農の伸びで補い前年比0.9%減に留まっている。生産購買では餌料等の伸びにより前年比5.1%増となっている。また、合併による救済もあって剰余金計上農協の割合は平成30年以来伸び続け、令和3年度では95.1%に達している。

超長期の低迷を脱し、延命といった次元を超えて本来の姿を取り戻しつつある。

農協の農業経営の意義

令和5(2023)年4月に農協の農業経営のための組合員の同意手続きを緩和する改正農協法が施行された。

農協の農業経営は1993年の農業生産法人への出資法認に始まる。その後、譲渡制限のある株式会社が農業生産法人の一形態とされ、2009年に「農業の経営」(リースによる直営)が農協の事業に加わり出資と直営二本立ての現在に至っている。  

令和5年農協法改正は、組合員同意を「書面決議」から「総(代)会」に簡素化し、直営の拡大を図るものである。

農協の農業経営事業への取り組みは増加傾向が続いている。(現状下記)

「農協直営 72農協 620ha (令和3年度総合農協統計表)/農協出資農地所有適格法人 214法人 20,219ha(令和3年1月1日現在 農地政策課調べ)」

株式会社等のリース方式による参入も年々増加しているが、自社の加工・調理・販売用が主である。(令和4年1月現在 4,202法人、平均3.4ha)

農業経営の意義は、公的効用や農協事業への好影響など、今のところ副次的である。しかし、担い手の不足がさらに深刻になればその意義が大きく見直されるよう。すなわち、職員の稼働・地域住民の参画による農業生産である。農地の集積が進み、今や農業経営体と職員数の桁数は同じである。職員は農協改革に伴い減少が続き現在不足気味である。しかし、農地は現在も加速度的に集積している。外務活動、担い手の確保、技術開発・指導、家畜の生産・育成などの農業支援部門を強化しつつ、さらに生産段階に接近することが求められてくるであろう。

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