踊り場に来た清酒の輸出対策を考える【熊野孝文・米マーケット情報】2024年2月13日
農水省がまとめた2023年度のコメ・コメ加工食品の輸出実績は、数量ベースでは前年に比べ8%増えて5万8473tになったが、金額ベースでは6%減って577億円になっている。金額ベースで落ち込んだ最大の原因は、これまで順調に伸びてきた清酒の輸出が減ったことにある。金額ベースでは411億円で、前年に比べ64億円、率にして13%も減少している。コメ・コメ加工品の輸出という括りで最も大きなウエイトを占めていた清酒の輸出が落ち込んだことは国の農産物・食品輸出戦略にも陰りを与える大きな出来事と言える。農政調査会ではこの問題にスポットあてたセミナーを2月5日に開催した。
農政調査員会が2月5日に開催した第11回米産業懇話会では日本酒産業がテーマにされ、岡山大学大学院環境生命自然科学域の大仲克俊准教授、日本大学生物資源科学部食品ビジネス学科の佐藤奨平専任講師、茨城大学農学部地域総合農学の西川邦夫准教授が講師として登壇、日本酒業界の市場構造や輸出、原料米の使用状況、さらには農業参入等について講演、終わりに農政調査委員会の吉田理事長がとりまとめを行った。
この中で日本酒の輸出については、大仲准教授が海外市場とどう向き合うべきか?題して
・海外における日本食の普及の中で日本酒の認知が世界的に広がっている。
・海外市場において、国内の日本酒企業、関連企業の取組みを通じて、日本酒の海外普及は行われてきており、それが結果的に近年の輸出拡大の成果になっている。
・一方、海外普及が進んできたが、海外普及・輸出において、マーケティングや国・地域の特有な事情を踏まえた展開が必要であり、海外輸出・普及戦略の展開は手探りな面が否めない。
・輸出市場を見ていくと「北米」「極東アジア」「東南アジア」「EU」「オセアニア」「中南米」などが想定されるが、地域・国によって食文化・嗜好・習慣が異なり、それぞれに対応に工夫が必要になっている。
・また、海外への輸出・普及では、日本酒のライバルとなるアイテム(国)の存在を理解しなければならない。特に競争相手は一社だけでなく、地域レベルを超えて国レベルで連合してプロモーションを展開している(韓国は常に集中して展開し、大規模な韓国ゾーンを構築する)といった課題をあげ、各国の酒売り場で日本酒がどのように販売されているか写真入りで紹介した。対応策として孫子の言葉を引用して「日本酒業界がこれから国内市場のみならず海外を含めた多様な消費者に展開するにあたり、相手をどれだけ知り、自分をどれだけ把握しているだろうか」とし、足元を業界で見直し、既存の市場とは異なる市場への展開方法を業界または地域レベルでじっくり策定していく時ではないかとした。
茨城大学の西川准教授は、日本酒輸出市場の構造と変化について、はじめに日本酒の輸出額・単価の推移をグラフで示し、コロナ禍後は特定名称酒の割合が上昇、高級化している。国別ではシンガポール、香港、中国が高価格帯、フランス、アメリカ、カナダ、オーストラリアが中価格帯、台湾、韓国、オランダが低価格帯に分化している。国内の清酒企業の階層別(製造数量)で輸出の割合を見ると、1000~1万klの企業の製造量に占める輸出割合が3.6%と高く「地方上位層による輸出の拡大が活発である」とした。また、14社を調査対象にした輸出の状況について「輸出に積極的な階層は地方上位であり、全多的な動向と合致」「アメリカが最大の輸出先である企業が多い」「直接輸出に取り組む製造企業は10社(71.4%)」。出荷商品では、大手は輸出商品として純米、純米吟醸、国内向けはパック酒と明確に区分しているが、中小は輸出と国内向けの商品の境が不明瞭。
輸出商品戦略では「製造企業が現地市場と直接接触するケースが増えている」「輸出専用商品や現地流通業者との共同商品の開発」「規模の大きい層では現地で自ら販促活動を実施」
今後の展望として・中国市場の拡大一服とアメリカ市場の成熟(特定名称酒の輸出拡大は限られる可能性)・コロナ禍の終息による国内料飲店向けの需要の回復(普通酒の製造と販売の拡大により輸出余力が低下する可能性)・輸出の拡大は息の長い取り組みが必要(国内流通と輸出を分離し、製造企業自らが現地の市場開拓に取り組む必要がある)―とした。
吉田理事長は「酒蔵の将来像として製造量の30%~40%分を輸出に向けないと安定した企業運営は出来ない」とし、そのためにはフランスのワインのように生産者補助制度を日本のコメにも導入すべき、商品面では地理的表示、有機等によるブランド化が必要で日本酒の有機認証が不十分だとした。
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