【JCA週報】協同組合のアイデンティティと地域社会への関与(北川 太一)2024年2月26日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 山野徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫 日本生協連代表会長)が協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、本機構の協同組合研究紙「にじ」の2023年冬号に寄稿いただいた論考です。
1.協同組合のアイデンティティ確立の要件
「アイデンティティ」という言葉を、私たち(組織や団体も含めて)がこの世に存在する意味・証(あかし)と捉えたとき、協同組合が自らのアイデンティティを確立するためには、次の要件が考えられる。
第一は、協同組合の理念(協同組合に携わる人の思いや願い)および強みや有効性が明確であり、それらが関係者の間で共有されていることである。
今回の特集で念頭に置かれているアイデンティティ声明や、それを踏まえて作られるビジョン・綱領は、この点からみて極めて重要な位置を占めている。
第二は、単に理念を振りかざすだけではなく、協同組合らしい事業(経済的取引をベースとしたビジネス)や活動(組合員を中心とした主体的な取り組み)が実践されていることである。
資本主義システムの中に身を置く協同組合にとっては市場経済が正常な機能を果たすことが求められるが、市場経済は決して万能ではない。自然・環境の破壊、雇用・労働条件の悪化、食品偽装表示など食の安全・安心も含めた企業倫理の欠如、さらには格差問題の発生など、いわゆる「市場の失敗」と呼ばれる多くの事象に現代は直面している。協同組合には、こうした市場経済の限界・欠陥を補完・克服するための有効な事業方式の確立が求められている。
第三は、協同組合の理念と実践に対する認知が広く社会に浸透していることである。そのためには、協同組合の目的が、共益(組合員にとっての共通の利益)と同時に地域の公益(組合員だけではなく、資源や環境も含めた地域社会にとっての利益)の実現にあることを広く内外に示す必要がある。
2010年代に顕著になった「農協改革」(国や政府、経済団体からの改革要請)の議論で典
型的であったように、協同組合は特定の組合員のための利益保護団体であるという誤解が根強く存在している。それらを払しょくし、理解へと転換することが求められている。本稿のテーマである協同組合の地域社会への関与の問題は、この点と大いに関係している。
以降の論考の章立ては下記の通りです。
2.『レイドロー報告』、「第7原則」と現場の反応
3.国連・国際協同組合年-「協同組合がよりよい社会を築きます」-
4.関心の高まりの背景-地域政策の変化と「小さな協同」-
5.持続可能な開発目標(SDGs)とユネスコ無形文化遺産への登録
6.アイデンティティ声明を現代的にどう受け止めるか
7.アイデンティティ原則をより身近なものにするために
重要な記事
最新の記事
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(2)今後を見据えた農協の取り組み 営農黒字化シフトへ2025年1月23日
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(3)水田に土砂、生活困惑2025年1月23日
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(4)自給運動は農協運動2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(1)2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(2)2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(3)2025年1月23日
-
元気な地域をみんなの力で 第70回JA全国女性大会2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(1)新しい仲間との出会い 次世代へつなげるバトン 青森県 JA八戸女性部 坂本順子さん2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(2)この地域を、次世代に繋ぐ、私たち 山梨県 JA南アルプス市女性部 保坂美紀子さん2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(3)私たちの力で地域をささえ愛 愛知県 JA愛知東女性部 小山彩さん2025年1月23日
-
旧正月【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第325回2025年1月23日
-
地元産米を毎月お届け 「お米サポート」スタート JAいずみの2025年1月23日
-
定着するか賃金引上げ 2025春闘スタート 鍵は価格転嫁2025年1月23日
-
鳥インフル 米アイオワ州など5州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月23日
-
鳥インフル 英シュロップシャー州、クルイド州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月23日
-
スーパー売り上げ、過去最高 野菜・米の価格影響 「米不足再来」への懸念も2025年1月23日
-
福島県産「あんぽ柿」都内レストランでオリジナルメニュー 24日から提供 JA全農福島2025年1月23日
-
主要病虫害に強い緑茶用新品種「かなえまる」標準作業手順書を公開 農研機構2025年1月23日
-
次世代シーケンサー用いた外来DNA検出法解析ツール「GenEditScan」公開 農研機構2025年1月23日
-
りんご栽培と農業の未来を考える「2025いいづなリンゴフォーラム」開催 長野県飯綱町2025年1月23日