【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】元祖「地産地消」~篠原孝著『持続する日本型農業』2024年2月29日
グローバリズムの限界が露呈し、海外からの輸入が滞るリスクも高まってきている今、「地域の種からつくる循環型食料自給圏」構築の重要性は間違いなく高まっている。衆議院議員の篠原孝氏は、その重要性を早くから一貫して提唱してきた一人と言えよう。それがいかに正鵠を射ていたかが今証明されている。篠原氏の最新著『持続する日本型農業』(創森社、2023年)を読むとよくわかる。
篠原氏は、現在立憲民主党衆議院議員で政界に入り20年近くになるが、元は農林水産省の官僚であった。20代後半に米国留学で大規模な米国農業を目の当たりにし、1982年に書いた論文「21世紀は日本型農業で-長続きしないアメリカ農業」、1985年の『農的小日本主義の勧め』で注目された。京都大学の農学博士号も持ち、官界と学界の二足のわらじを履いていたが、2003年には政治家になり、ついに3界に身を置くことになった異才だ。
政治家に転身後、毎週3千字のブログを書いたのが千篇を超え、うち農業関係の約200編から、筆者の真骨頂の日本型農業に深くかかわる部分を40編にまとめたのが本書である。
処女論文と本書と、その底流に流れる農政・農業に対する考え方は一貫して変わっていないことに驚かされる。農林水産省は伝統的に規模拡大、専業農家中心の政策を推進しているのに対し、第1章「地産地消から循環・縮小社会へ」で端的に述べられているように、著者は、自然に対する謙虚な農法、すなわち有機農業に親近感を抱き、拡大よりも循環を重視すべきと説いている。
その地で生産したものをその地で消費するのが最も理にかなった生き方とする「地産地消」を初めて使ったのは篠原氏で、「旬産旬消」も篠原氏の造語である。篠原氏は「地産地消」「旬産旬消」の生みの親だ。
第3章では、食料安保のためには種を重視すべきとし、地域での種の循環を取り戻す必要性を力説している。第4章では、飼料を全面的に外国に頼る畜産の立て直しのための地域循環型畜産について論じている。
農水省の役人にも国会議員にも篠原氏ほど筋を通せる者は少ない。しかも、まさに正論で、本書のどこを読んでも「その通り」と膝を打ちたくなる。本書は日本の地域を守るための必読書と言ってよい。最終章、「風土に人あり、希望あり」には、著者の農業人との交流が愛情溢れる筆致で綴られている。「私の農業遍歴」もほのぼのとした物語だ。この章から読み始めるのもよい。一読をお勧めする。
重要な記事
最新の記事
-
飼料用米多収日本一 山口県のあぐりてらす阿知須 10a当たり863kg2025年3月3日
-
【特殊報】ナシ胴枯細菌病 県内で初めて発生を確認 島根県2025年3月3日
-
政府備蓄米売り渡し 入札 3月10日に実施 農水省2025年3月3日
-
新潟県の25年産米概算金「コシ2.3万円」 早期提示に歓迎の声 集荷競争、今年も激化か2025年3月3日
-
米の集荷数量 前年比23万t減に拡大 農水省2025年3月3日
-
米価高騰問題への視座【森島 賢・正義派の農政論】2025年3月3日
-
【次期家畜改良目標】低コスト、スマート農業重視 酪農は長命連産、肉牛は短期肥育2025年3月3日
-
【改正畜安法の現状と課題】需給対策拡大が焦点 問われる「国主導」2025年3月3日
-
あなたたちは強い〝武器〟を持っている JA全国青年大会での「青年の主張」「青年組織活動実績発表」講評 審査委員長・小松泰信さん2025年3月3日
-
JA農業経営コンサルタント 15人を認証 全中2025年3月3日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2025年3月3日
-
農業用バイオスティミュラント「エンビタ」とは 水稲育苗期にも効果 北興化学工業2025年3月3日
-
アミューズメント施設運営「ティスコ」株式を譲受 農林中金キャピタル2025年3月3日
-
「2025ローズポークおいしさまるごとキャンペーン」でプレゼント 茨城県銘柄豚振興会2025年3月3日
-
福岡ソフトバンクホークスとのオフィシャルスポンサー契約更新 デンカ2025年3月3日
-
ファーマーズ&キッズフェスタ2025 好天で多数の参加者 井関農機は農業機械体験2025年3月3日
-
【今川直人・農協の核心】産地化で役割が高まる農協の野菜取り扱い2025年3月3日
-
野菜がたっぷり食べられるカレー味「ケンミンカレー焼ビーフン」新発売2025年3月3日
-
第164回勉強会『海外市場での植物工場・施設園芸の展開』開催 植物工場研究会2025年3月3日
-
春の山梨の食材の魅力を伝えるマルシェ 5日から国分寺マルイで開催 雨風太陽2025年3月3日