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値上がりに歯止めがかからない5年産米【熊野孝文・米マーケット情報】2024年3月5日

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大手量販店のコメ売り場で3月4日から精米価格改定が表示されていた。改定価格は5㌔当たり100円の値上げ。この量販店はエブリデイロープライスが売り文句で、商品の値入交渉が最も厳しいことで知られている。この量販店に精米を納入しているところは資本力において他の卸より抜きんでている商社だが、それでも価格改定をせざるを得ない状況になっている。3月1日に行われたクリスタルライスの取引会の後、落札できなかった卸から「精米価格をどう転嫁しているのか教えて欲しい」と言われた。それほどまでに値上がりの上げ幅が大きかった。

値上がりに歯止めがかからない5年産米3月1日に実施されたクリスタルライスの取引会上場概要は、上場数量は54産地銘柄6万2431俵で、前回取引会より5%増えた。売り玉が増えたことに対しての捉え方に差があり、中には「ないないと言われるのがカネとコメ」と揶揄する向きもある。これまで5年産米はすべて販売先と結び付いており、新規に売れるコメはないと言われていても価格が前回(1月)に比べ1000円も上がれば売り物は増える。ただし、売り物が増えたからと言って産地に浮動玉が多いのだろうとは言い切れない。それは前年同期に比べると76%の水準にとどまっており、売り玉が多いとは言えない。

主要産地銘柄の売り唱え価格は表の通りだが、前回価格に比べると揃ったように各産地とも1俵1000円以上の値上げになっている。主催者は「あくまでも売人の希望価格」というスタンスだが、前回の取引会の後には仲介業者が売り物を引っ込めてしまった。今回も週明けの月曜日には売りメニューをクリスタルの価格並みに値上げしている。

今やクリスタルライスの取引会はコメのスポット市場のプライスリーダー的な役割を果たしている。
それにしても月ごとに1000円も値上がりするという一種異常とも言える相場の高騰をどう理由付けしているのか各方面に聞いてみると、能登半島地震の影響と見る向きもある。東日本大震災の後、物流の混乱や福島産米が使えなくなったことから一気に1万9000円台まで値上がりしたことがあったが、それの連想と言う見方。震災の後にはコメが値上がりするケースが多く、能登半島地震では北陸の農協倉庫でも7か所が荷崩れを起こしており、物流に影響が出たが、それよりも本質的には需給が農水省の見通しよりタイトになっていることが上げられる。そのことに関しては奇しくも農水省が開催した「コメ産業化のための意見交換会」で出席した流通業者や需要者から5年産米は農水省の発表の生産量より実際には穫れていないのではないかと言う意見が多く出たことに現れている。極めつけは大手ベンダーが自社の使用するコメの必要量がショートしていると発言したことで、これは大きなインパクトがあった。なぜならわかりやすく言うとこの大手コンビニベンダーに対して精米を納入している卸連合は、他の需要者分を差し置いても最優先して必要銘柄を確保するはずなので、このベンダー分までショートするというケースは考えられない。本当にショートしていると言うのならまさに本当にコメは穫れていなかったということになる。

このことは端境期にとんでもない相場になることもさることながら6年産以降にも大きなインパクトを与えかねない。それはこのコンビニベンダーは卸に任せておいても自分たちの必要なコメは確保できないという思いを強く持つようになったのではないか。また、農協系統の集荷・販売対策についてもこれまで通りと言うわけにはいかなくなる。

第一に農協系統の基本的な枠組みである「基準価格プラスマイナス10%」という相対販売方法の基本方針が通用しなくなる。そのことは現在の大幅な5年産米も値がりを見ると6年産米でこれを当てはめるわけにはいかない。

とくに早場産地は価格の乱高下が予想される端境期に値決めをしなければならず、どういった契約条件にしろ売り手買い手とも大きなリスクを背負う。これを回避しリスクを最小限にして取引を円滑に行おうと思うのなら先物市場を活用するしかない。日本米平均価格を本上場する堂島取は農水省や経産省の審査が順調にいけば8月13日にコメの先物取引が開始される。その時は令和6年10月限、12月限、令和7年2月限、4月限、6月限、8月限までの取引が可能になる。取引開始前に堂島取が説明会を実施するはずなので、どのように活用してリスクを回避するのか理解しておいた方が良い。

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