これまでの多国間経済連携協定と3極化の世界を振り返る(2)【近藤康男・TPPから見える風景】2024年3月7日
前回の本コラムでは、2010年以降の日本の多国間経済連携協定を概観した。今回は、原型としてのTPP12の構成から始め、経済連携協定に何が期待されていたのか、その効果はあったのか、などについて概観したい。
多国間経済連携協定の原型であるTPP30章の構成はどんなものだっただろうか?
TPPは前文と全30章で構成されている。多分多くの方々は、TPP協定のそれぞれの章が何についてのものなのかは、あまり覚えてはいないことと推察する。
あらためて、TPP12の協定本文の章の呼称のみを以下に記す。前文と30の章で構成される
協定本文に加え、多くの付属書、加えて各国毎の付属書などが締結されてTPP12の全体が構成されている。
多国間経済連携協定は何を目指したのか?それは実現したのだろうか?
経済連携協定は、概ね以下の目的をもっていると言っていいだろう。
(1)自由な投資と関税削減・撤廃による貿易の拡大とそれによる生産性向上。
(2)規制の整合性:共通の規制による投資・貿易における開かれた関係と協力関係の強化を目指す。
(3)そして、その結果としての経済成長を実現する。
更に、
(4)農業・漁業分野の進展、紛争処理機能について機能不全が目立ち、充分に機能を発揮できていないWTOの代替機能を目指す。
(5)国内政策法制化のための後押しをするための条項を織り込む。典型は後述するTPPの付属文書である「保険等の非関税障壁に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡」がそれに当たるといってよいだろう。この書簡では規制改革推進会議の役割とその政策的活用までも書き込まれている。
政府の経済連携協定に対する期待をその経済効果試算に見る
日本政府は、経済連携協定の交渉に際し、以下のような経済効果があると喧伝して協定の必要性を訴えてきた。当時の安倍首相は、何度も"国益"という言葉を強調していた記憶がある。しかし、喧伝はしたもののの、そのことが妥当だったのか、実現したのかは、日本政府の常として、全く検証されていない。国会での承認手続きは採るものの、私自身は、日本政府の"法治主義ならぬ放置主義"と呼ぶことにしている。失われた30年ならぬ多国間経済連携発効以降の低成長・労働生産性などにその限界が表れている。
経済連携協定は日本においては経済成長につながらなかった
失われた30年?の声が未だに囁かれる日本だが、残念ながら経済連携協定は、当初の効果試算通りには奏効したとは言い難い。経済成長・労働生産性の伸びを見てみても芳しいものとは言えないだろう。CPTPP発効の2018年以降の数字で見れば、下記の表のように、上述した政府の"経済効果試算"の数字には届かず、国際的にも低水準の伸びが続いているし、2022年の労働生産性はOECD38ヶ国中1人当たりで31位、時間当たりで30位!だ(日本生産性本部2023年12月22日付「労働生産性の国際比較2023」)。
(CPTPP発効年の2018年以降の数字を載せた)
※労働生産性については時間当たり実質労働生産性上昇率と一人当たり実質労働生産性上昇率とを掲載作成:日本生産性本部「日本の労働生産性の動向2023」による。
※輸出入金額は財務省貿易統計による
こうしてみると、失われた30年間における人材育成・投資・革新の欠如の結果と言わざるを得ない。
(参考URL)
日本生産性本部「日本の労働生産性の動向2023」
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/trend_full_2023.pdf
※2024/3/21 一部修正
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