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【今川直人・農協の核心】畜産振興と餌自給を2024年3月11日

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飼料が戦略物資

日本の一人当たり肉消費量は依然として多い国の半分以下である。他の食品と肉との相対的な価格差が大きい(と消費者が感じる)のであろう。

2022年5月にウェブサイトOur world in dataに畜産と土地利用に関する研究論文が掲載された。(以下はその一部の要約)

「人類はこの千年の間に森林の3分の1と牧草地の3分の2を消滅させた。最近50年の間に肉の供給量は3倍になったが、それは豚肉と鶏肉を増やし牛を穀物で飼養することによってである。穀物の半分が家畜の飼料に向けられている。多くの研究機関が、世界的にみて農地の拡大が峠を越えたという点で一致している」

家畜は穀物で飼えば肉の何倍もの穀物が要り、放牧するには広い土地が要る。人間は遺伝的に肉食系雑食動物なので、豊かになれば肉の消費が増える。人口増による食料問題は、畜産に行き着く。穀物などの輸出を禁止する国が年々増え、現在22カ国に達している。

日本は1200年に及ぶ肉食禁止で、畜産の視点を欠く歪(いびつ)な国土利用が定着した。国土の3分の2に当たる2500万haが森林で、この面積は幕末以降あまり変わらない。明治維新後、農地は400万ha から最大600万ha(1961年)まで増加したが、森林は温存されたのである。農地一般の拡張政策は2013年で終了した。令和2(2020)年から本格化した草地関連基盤整備は、平成30(2018)年の飼料作付面積89万ha(飼料用米含まず)を令和12年までに28万ha(平成30年の荒廃農地に相当)増の117万haに、飼料自給率を同じく25%から34%に引き上げることを目標としている。年度予算は3000億円を超える主要事業の一つである。この事業は、対象地から山林を除外せず「拡張」を含んでいて農地の減少に歯止めがかかることが期待されている。しかし、現在のところ農地は拡張を上回るかい廃が続き、緩やかにはなったが減少が続いている(令和5年は拡張9000ha、かい廃3万7000ha。かい廃の4割は荒廃化)。

自給飼料による畜産の拡大が課題

畜産部門の農業産出額(生産量×庭先価格)は、1998年に米と並んだ後も増大を続け令和4年に過去最高の3・5兆円、総産出額の39%に達している。現在農水省が進める畜産政策は草地基盤整備・耕畜連携・コントラクター・TMR・粗飼料広域流通・エコフィードなどの飼料対策、クラスター・CBS・CS・公共牧場などの生産基盤、排泄物処理対策など多彩である。これに経営安定対策が他部門同様に加わる。最近、肉類や牛乳・乳製品の自給率に微増ないし下げ止まりがみられる。総合自給率も下げ止まった感がある。円安で輸入が抑制されているにしても政策が自給率を支えていることは確かである。

総合自給率45%・飼料自給率34%は、期限(令和12年)までの到達は無理にしても国民誰もが期待する妥当な目標である。目標を掲げる場合、必ず政策と予算の裏付けがある。聞かれなくても答えられる「説明責任」の遵守である。しかし需要のない予算は使いようも増やしようもない。予算だけではない。農地の2倍近い国有林には貸付制度があるが、農畜産業の活用は1万haである。伝統的な日本の友好国であるスイスは国土の4割が1300m以上の高地で食料自給率5割(動物性食料は100%)を維持している。農業純所得の90%が財政負担である。貿易ルール(国内支持の規律)を守って食料を危うくする国はどこにもない。JAグループの畜産の重要性についての認識が高まっている。座談会・部会などで組合員との政策についての情報共有が広く見られる。草地基盤整備は国土の利用につながる問題であるが、まずは荒廃農地・未利用低地等の活用による飼料自給率向上が急がれる。

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