【JCA週報】協同組合運動と定義力(松岡公明) (2013)2024年3月18日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 山野徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫 日本生協連代表会長)が協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、本機構が前身であるJC総研時代に発行した協同組合研究紙「にじ」の2013年春号の巻頭言です。
協同組合運動と定義力
松岡 公明(一般社団法人 JC総研 理事)
にじ 2013年 春号 No.641
定義とは何か?「ウィキペディア」によると「一般にコミュニケーションを円滑に行うために、ある言葉の意味や用法について、人々の共通認識を抱くために行われる作業である」と説明される。
1+1=2という数式には「足し算の定義」があるように、組織運動にも定義が必要である。協同組合にも定義がある。1995年国際協同組合同盟(ICA)声明では「協同組合とは、人々の自治的な協同組織であり、人々が共通の経済的・社会的・文化的なニーズと願いを実現するために自主的に手をつなぎ、事業体を共同で所有し、民主的な管理運営を行うもの」と定義されている。
レイドローは「思想の危機」を指摘したが、今日の協同組合運動の混迷は、言葉としての「理念」をさらに因数分解し、双方向コミュニケーションにより説明責任を果たしていくという「定義力」の弱さにあるのではないか。
例えば「参加」にしても社会の構造変化のなかで組合員意識も多様化し、協同組合自身の事業経営体としての成長拡大、大規模化への構造的変化が参加をより困難にしている面もあるが、そもそも、なぜ、協同組合は参加しなければならないのか、多くの組合員には「参加」の意味や意義が理解されていない。
「参加とは何か」、その定義力が問われているのである。定義を押えることは、本質を理解することにつながる。
JAグループでは向こう3ヵ年の運動ビジョンとして、第26回JA全国大会で「次代へつなぐ協同」を組織決定した。多様な組合員構造があるなかで、「次代」とは何を指すのか、「つなぐ」とはどういうことを行うのか、「協同」の今日的な意義とは何かについて「定義づけ」する必要があるだろう。
次世代の組合員後継者に「JAとは関係ないね」といわれたとき、何と答えるのか。あるいは「協同組合としての農協」について、どのように説明責任を果たすのか。組織リーダーが組合員や地域住民に対して「何を語るか」、ビジョンにかかる言葉の定義づけが大きく問われることになる。組合員が納得し行動するのは、JA側から提案され語られる内容に賛同するとともに、提案し語りかける人物に共感と信頼を覚えた時だけである。そこに組織リーダーの、まさにリーダーシップが求められる。
ゲーテは言っている、「人は自分が理解できないものを、自分のものとは思わない」と。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(123) -改正食料・農業・農村基本法(9)-2024年12月21日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (40) 【防除学習帖】第279回2024年12月21日
-
農薬の正しい使い方(13)【今さら聞けない営農情報】第279回2024年12月21日
-
【2024年を振り返る】揺れた国の基 食と農を憂う(2)あってはならぬ 米騒動 JA松本ハイランド組合長 田中均氏2024年12月20日
-
【2025年本紙新年号】石破総理インタビュー 元日に掲載 「どうする? この国の進路」2024年12月20日
-
24年産米 11月相対取引価格 60kg2万3961円 前年同月比+57%2024年12月20日
-
鳥インフルエンザ 鹿児島県で今シーズン国内15例目2024年12月20日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】「稼ぐ力」の本当の意味 「もうける」は後の方2024年12月20日
-
(415)年齢差の認識【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年12月20日
-
11月の消費者物価指数 生鮮食品の高騰続く2024年12月20日
-
鳥インフル 英サフォーク州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年12月20日
-
カレーパン販売個数でギネス世界記録に挑戦 協同組合ネット北海道2024年12月20日
-
【農協時論】農協の責務―組合員の声拾う事業運営をぜひ 元JA富里市常務理事 仲野隆三氏2024年12月20日
-
農林中金がバローホールディングスとポジティブ・インパクト・ファイナンスの契約締結2024年12月20日
-
「全農みんなの子ども料理教室」目黒区で開催 JA全農2024年12月20日
-
国際協同組合年目前 生協コラボInstagramキャンペーン開始 パルシステム神奈川2024年12月20日
-
「防災・災害に関する全国都道府県別意識調査2024」こくみん共済 coop〈全労済〉2024年12月20日
-
もったいないから生まれた「本鶏だし」発売から7か月で販売数2万8000パック突破 エスビー食品2024年12月20日
-
800m離れた場所の温度がわかる 中継機能搭載「ワイヤレス温度計」発売 シンワ測定2024年12月20日
-
「キユーピーパスタソース総選挙」1位は「あえるパスタソース たらこ」2024年12月20日