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【スマート農業の風】(2)事業承継と農業の記録2024年3月21日

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農業に定年退職はないが、いまやっている農業を誰かに引き継ぐための準備は必要だ。

「俺は若いからまだ大丈夫」「次の世代に譲って経営が上手くいくか不安」など、引き継ぎを考えたくない理由はいろいろあるが、一度、事業承継について考えてみたい。

スマート農業の風

事業承継に必要なもの

事業承継で受け継ぐのは、財産や権利だけではない。先代から、地位や精神、身分、仕事、事業などをすべて受け継ぐのが、承継だ。民法など法律でも「事業承継」という言葉が使われている。

農業は事業だから、経営権を含めて事業を承継することが必要となる。その中には、土地ごと(地域という意味も含めて)の仕事のやり方や、先代から受け継いだ特別な栽培方法、土地に対する思い(マインドと呼ばれるもの)も含まれるはずだ。それら営んできた「農業の記録」を見える形で残すことが重要だ。

事業承継をするためには、帳簿のような記録が必要だが、紙で書いたほ場の記録帳簿、所在を表す紙の地図など、バラバラに保存されていてはよくわからない。できれば、スマホやタブレットでほ場の場所を表示する機能や帳簿の内容を表計算ソフトで見ることができる営農管理ソフトの導入を考えたい。またそれがスマート農業につながる。

「農業の記録」は事業承継の入り口

農業の事業承継の形はひとつではない。親から子へ農業を引き継ぐ事業承継もあれば、今営んでいる個人経営を地域の集落営農に引き継ぐのも事業承継だ。また、企業など別な農業者へ引き継ぐということも今後考えられる。

子に渡すにしろ、集落営農に引き継ぐにしろ、事業承継には準備が必要だ。その入り口が農業の記録である。

毎年同じように米や作物を作っていると、頭の中に種まきや防除など時期ごとにやることは入っている。しかしながら、頭の中にあるままでは、人に引き継ぐことはできない。農業を受け継いでくれる人が身近にいれば、ある程度一緒の年月を過ごし、仕事を覚えさせながら伝えていく方法もあるが、多様性が求められ、仕事も複雑になった現在では、数年一緒に仕事をしながら覚えることは不可能に近いし、集落営農への事業承継ではこの方法は使えない。

現状を記録して分析する

ノートやパソコンに仕事のやり方や考え方、作業の種類、時期などの記録を残しておきたい。また、記録することで現状を把握できるという利点もある。「このほ場はどの程度のポテンシャル(収量などの生産力や生産のしやすさのこと)があり、どの程度もうかるのか」また「昨今の気候変動からくるアクシデントに、どの程度耐えられるのか」など、いろいろな記録で把握ができる。

記録は、日々の作業や、ほ場の場所、どのような作物でどのような栽培方法か、どんな薬剤・肥料をどのくらい使用しているかなど、農業経営に役立つ情報だ。ノートやパソコンに漫然と書くことでも記録はできるが、分析をするためには、営農管理ソフトがあると便利だ。無料で利用できるものや、格安で利用できるもの、農業機械と連動してメンテナンス時期やほ場での利用状況などを教えてくれるもの、ある程度の経営診断ができるもの、などいろいろなものがある。ただし、有料利用か無料利用かによって入力に制限がある場合や、ほ場ごとの現状分析(各ほ場の処方箋のようなもの)を先に記入しないと使用できないものもある。

使うのであれば、汎用性が高く、Excelがベースで今までの手書き入力を生かせるような使い勝手の良いシステムが良い。特に、営農管理ソフトZ-GISは利用料が安く、Excelのデータをそのまま引き継ぐことができるので使い勝手が良い。Z-GISは、営農管理ソフト特有の使用開始前のほ場ごとの処方箋入力が必要ない。いままで入力したExcelデータがあればそれを流用することができるし、書き直しの必要もない。既存のExcelデータとひもづけて、電子地図にほ場を登録することができる。もちろん、スマートフォンやタブレットで表示することもできるので、現地のほ場で情報を確認することもできる。

スマート農業と事業承継は、一見離れているように見えるが、ほ場の情報や承継する内容を正しく伝えるためのデータが必要で、パソコンやスマートフォンを使って記録をする営農管理システムは必須といえる。営農管理システムは、スマート農業の最先端とは言えないが、スマート農業の第一歩として欠かせない技術のひとつといえる。

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