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農業者の全人間的関心【森島 賢・正義派の農政論】2024年3月25日

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いま、農業者の、報道についての全人間的な関心は、どこにあるか。

当協会の基本理念は、村上光雄会長が指示しているように「農協の良心」を目指すところにある。このHP JAcom も、この理念にしたがって報道している。はたして、実際にそうなっているか。

この点を、閲覧記録(アクセス・ログファイル)を使って検討してみよう。

これは、JAcomをより良くする目的で行うだけではない。「農協の良心」である読者が、JAcom のどんな記事に関心を持っているかを明らかにし、それに応えるためである。それは、農村の知識層が、報道に何を求めているか、の解明になるだろう。

結論を先取りしていえば、彼らは農業生産だけに関心を持っているのではない。農業をとりまく社会全体についても、強い関心を持っている。つまり、全人間的な関心といっていいだろう。

そこには、協同組合としての農協が、生まれながらにして持っている世界観に基づいていて、資本主義を基調にした、いまの社会体制の全体に対する、全人間的な批判があるだろう。

1.jpg

上の図は、JAcomの読者の関心が、どこにあるか、をみたものである。

資料は、毎日記録されている克明な閲覧記録である。その量は、圧縮しても毎日50メガバイト程度の膨大なものである。

この図は、先週7日間について、JAcomの全部の記事を7つの「種別」に分けて、それぞれ丸印で示してある。「ある種別」の図の中での位置は、「他の種別」との「親近度」が親密であればあるほど近くの位置においてある。その「親近度」は、同じ読者が「或る種別」の記事と、「他の種別」の記事を、両方とも読んだ読者の人数から推計したものである。(文末の【注】を参照)

図の全体を見るとき、図の「上」と「下」には何の意味もない。また、「右」と「左」にも意味はない。ただ丸印どうしが、「近」いか、「遠」いか、だけに意味がある。だから、この図を平行移動しても、回転しても、対称移動しても、意味することは同等である。

この図をみると、中心部はやや右側にある。はじめに、「人事」をみてみよう。これがその真ん中にあって、丸印の大きさが大きい。これは、「人事」がJAcomの看板記事で、その内容の正確性と速報性を、多くの読者が高く評価していることの結果だろう。

以下では、「農政」に注目しよう。

「農政」は中心部にあるものの1つで、他の「技術」や「農協」や「流通」と近い位置にある。そうして、中心部を作っている。

ここから、JAcomの読者である農村の知識層が、報道に何を期待しているか、を推察しよう。

読者が期待して読んでいるのは、農村の中核的な組織である各地の農協の情報だけではない。農業生産にかかわる技術情報だけでもない。経済問題にかかわって、流通問題にも関心がある。政治問題にかかわって、農政問題にも強い関心をもっている。

これは、農村の知識層の全人間性である。農業者は、農業生産にたずさわる労働者というだけでなく、全人間的な活動を行い、そのための情報を求めているのだろう。

さて、ややキナ臭い話になるが、巷間には、情報は第6の戦場だ、という専門家がいる。だから、新しい軍隊を編成すべきだという。

以前の軍隊は、陸海空の3軍だった。その後、宇宙軍が加わり、さらにサイバー軍が加わった。そして、これからは、脳と精神と神経を戦場にした軍隊が肥大化して、もう1つの軍隊になるという。そのとき、報道が主な戦場になるのだという。

この6軍の最高指揮官は誰か。資本主義のもとでは,資本家が任命することになる。

このことを、協同主義は、どう考えるのだろうか。

協同主義には、生まれながらに持っている強烈な資本主義批判がある。市場原理主義をただ一つの至高な理念に掲げる、いまの資本主義に対する痛烈な批判である。そして、いま、世界中にその害毒を流している市場原理主義への批判である。

農協は協同主義の側の一員として、資本主義の側の第6軍に立ち向かって、これを正す責任がある。これらの点で、JAcomが期待されているものは大きく重い。

今後も、この期待に応えていきたい。

【注】
1.「種別A」の記事と、「種別B」との間の「親近度」は、この2つの記事を両方とも読んだ読者の人数の、最小値を1にした補数である。
2.閲覧記録にある読者には、インターネットの閲覧情報を機械的に集める組織がある。この情報の歪みを修正するために、1人の読者が1度に100の記事を閲覧したばあい、1つの記事の読者数は、0.01人とした。
3.正確な図は、7次元で示さねばならないが、2次元に圧縮して、人間の目で識別できるようにした。これに伴う誤差は、最小二乗法で処理した。その方法は、総記法である。

(2024.03.25)

(前回   日本農業経済学会100周年記念大会に寄せて

(前々回  一農政学徒の手記・・・搾取から協同へ

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