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ふるい下米の需給調整の役割を考える【熊野孝文・米マーケット情報】2024年3月26日

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3月21日に東京千代田区で開催された全国米穀工業協同組合(略称 全米工)の東日本情報交換会で、農水省が開催した食糧部会で初めて「ふるい下米」が取り上げられたことが話題となり、発生量を示したデータが事務局より参加者全員に配布された。そのデータによると令和5年産米のふるい下米発生量は32万tで、4年産米に比べ19万tも少ない数量になっている。そのデータの次のページには、MA米及び政府備蓄米の加工原材料用途への販売についてと題して「平成24年産におけるふるい下米発生量の減少に伴う国産加工原料用米穀の不足分に対して平成25年4月に約2.7万tの政府備蓄米を販売」と記されている。

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不足感が著しい加工原料米として政府備蓄米が売却されるか否かは原料米搗精業者で組織される全米工の組合員にとって最大の関心事であることは言うまでもないが、これは加工原料米だけの世界にとどまらず、主食業界にも多大な影響を与える。そのことに触れる前に加工原料米需給のひっ迫度具合がどうなっているのか、米菓、味噌業界についてはすでに触れたが、清酒、焼酎など醸造業界も深刻な影響が出ている。特に焼酎業界はコメの端境期に仕込み時期を迎えるため、九州の原料米納入業者によると焼酎メーカーの中にはMA米に切り替えられないため製造をやめる中小業者もいるという。

特にコメ焼酎業界は直接農水大臣に陳情するという動きにあるという。焼酎業界は、事故米事件以前は外国産米も使用しており、味噌業界と同じように価格により国産特定米穀か外国産米を使い分けていたが、事故米以後は国産米使用を謳っており、価格が高くても使わざるを得なくなっている。

全米工は3月14日に九州で情報交換会と席上取引会を開催しているが、その取引会ではヤケ米や砕米がkg当たり210円というこれまでの感覚では考えられないような高値で成約している。玄米では規格外米が1万5000円という高値で買われており、しかも買い人が多くてじゃんけんになったというのだから驚きだ。東京ではそこまではフィーバーしなかったものの中米が1俵1万5000円、中白米がkg270円、砕米がkg180円と言った高値で成約している。

コメの品位からすると考えられないような高値になっても買わざるを得ないのは、全米工組合員は既存の取引先(需要者)に納入しなければならないという供給義務があるためで、その分原料米納入業者も極めて高い在庫リスクを背負うことになる。

既報のように米菓、味噌などコメ加工業界は2度にわたって国に対して原料米対策の要請を行ったが、特定米穀の不足に関しては「特定米穀は発生するものであって生産されるものではない」という理屈で対策を講じず、あくまでも需給と価格の安定を旨とする食糧法外の世界であるという姿勢だが、これは明らかにおかしい。

コメマーケット・ふるい下米の需給調整の役割を考える(熊野)

表は、農水省が食糧部会に提出したふるい下米発生量の発生量の推移だが、ふるい下1.85ミリ未満1.7ミリ以上とふるい下1.7ミリ以下の発生量が色分けして示されている。

令和5年産米は1.85ミリ未満1.7ミリ以上の発生量が21万t、1.7ミリ未満が11万tで合計32万tになっている。なぜ色分けされているのかと言うと、農水省統計では主食用米の生産量と言うのはライスグレーダーの網目1.7ミリ以上の玄米重を言っており、1.7ミリ以下は生産量にカウントしていないからである。しかし、実際には生産現場で使用されているライスグレーダーの網目は平均で1.85ミリが使用されており、その下に落ちるコメもあり、当然そうしたコメは主食用米の需給内にカウントしなければならない。つまりそうした特定米穀もちゃんと食糧法の定める範囲に入っていることを意味している。

さらに言えば、1.85ミリ以下に落ちるコメも主食用増量原料として使用されるためこのコメが不足すると裾もの需給のひっ迫要因となり、まさに今それが起きている。

再三指摘していることだが、コメの需給を主食用だとか非主食用だとか恣意的にカウントして需給見通しを策定していてはコメの需給など見通せるはずがない。用途に関わらずコメの全体需要を把握したうえで、用途限定と言う法律は廃止して、価格は市場に任せて全体需給を俯瞰するようにしなければコメの安定した需給は見通せない。

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