波乱含みの早期米産地千葉の6年産米事前契約【熊野孝文・米マーケット情報】2024年4月2日
関東の早場米産地千葉県では、早いところでは3月下旬から田植えを始めた人もおり、今月上旬から本格的に6年産水稲の田植えが始まる。今年の早期米は、需給がひっ迫していることもあって、例年以上にその動向に関心が集まっている。すでに地元の商人系集荷業者のところには全国に販路を持つ大手卸が6年産米の事前契約を打診し始めている。ただし、現在のスポット価格が跳ね上がり過ぎているため、価格の位どころを売り手、買い手とも掴みかねている。
農水省がまとめた第一回水田作付意向調査によると、千葉県は、主食用米は5年産との比較では横ばい、戦略作物では加工用米が増加する傾向になっているが、飼料用米やWCS用稲、麦、大豆とも減少傾向になっている。備蓄米は、千葉県は買い入れ予定枠が662tと少なく、第3回目までに642tが落札されおり、残枠は20tしかない。
千葉県農業再生協議会では、県内の稲作農家に対して主食用米からの作付け転換への支援策を示しており、国の助成金である戦略作物助成や産地交付金、コメ新市場開拓等促進事業、畑地化促進事業等以外に県の支援策として「飼料用米等拡大支援事業」を講じている。中身は①飼料用米の定着支援として、多収品種で飼料用米、米粉用米、WCS稲を作付けすると10a当たり3000円、主食用品種でも10a当たり1500円を支給②転作作物の拡大支援として、前年に比べ転作作物を拡大した面積に応じて、多収品種の飼料用米、米粉用米、WCS稲、麦、大豆、野菜等に10a当たり5000円を支給③5以上の団地化に対して多収品種の飼料用米、WCS用稲、麦、大豆等に10a当たり4000円を支給する措置を講じている。また、今年から新たに輸出用米や米粉用米を低コスト生産すると直播の機械代の3分の1を助成するという対策も示している。
千葉県は畜産県でもあり、これまで飼料用米の作付面積は増加傾向にあり、5年産実績は10,154haと1万haを超えるまでになっている。しかし、6年産では一転して飼料用米の作付面積が減少する見込みである。県にその原因を聞いてみると、一般品種を作付けした場合、助成金単価が減額されることと主食用米の価格が上昇していることをあげる。どの程度飼料用米の面積が減るのかには言及しなかったが、飼料用米を取り扱っている集荷業者によるとあくまでもおおよその感覚だとしながら3割から4割が飼料用米から主食用に転換するのではないかと見ている。大規模生産者は栽培体系が固まっていることや多収品種を準備しており、そうした生産者はこれまで通り飼料用米を作付けすると見ているが、これまでふさこがねなど主食用品種で飼料用米を作付けしてきた5ha未満の生産者は飼料用米の生産を辞めると見ている。その要因には5年産米までで複数年契約が終了したこともあげられるが、それ以上に主食用米の価格が急騰していることが最大の要因になっている。
冒頭に触れたように大手卸が商人系集荷業者のところへ来て6年産米の事前契約を打診している。打診されているのは農協も同じで、直接契約を持ち掛ける動きが活発化している。直接契約を打診している卸は首都圏の卸だけではなく、北陸からも来ているというのだから今年の端境期の新米手当てが緊迫する可能性が高い。
具体的に新米価格が決まるのは例年8月の盆過ぎになり、同じ時期に農協系統の買取価格も示されるが、今年はそうしたスケジュールでは上手く新米を確保できないと予想される。それ以前にしっかりとした事前契約を結ぶ必要がある。この場合の事前契約とは単なる数量だけの計画ではなく、価格を前もって決める必要がある。その場合の新米価格の位どころが実に悩ましい。これまでも毎年開催される新米取引会でも売り手買い手の思惑が交錯し、取引が成立するまでの事前情報の収集合戦が熾烈であったが、今年は需給のひっ迫度具合が違っており、価格の設定が困難な状況になっている。あえて位どころを示すならば6年産政府備蓄米落札価格1万3500円をベースに10%高と言う価格を示せないことはない。買取共計で最低価格を政府備蓄米落札価格にすれば生産者への手取りは保証されるわけだが、保証されることと納得することとは違う。
それだけ市中価格の水準がこれまでの感覚とは違うところに来ており、売り手、買い手とも大きなリスクを負う。農水省が事前契約を推進するのは良いが、価格と数量がセットになった事前契約が旨く行くのか千葉の早期米はその真価が問われることになりそうだ。
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