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【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】食料自給率の意味が理解されていない~「『一本足打法』ではだめだ」とは何?2024年4月11日

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25年ぶりに食料・農業・農村の「憲法」たる基本法の見直しを今やる意義とは、世界的な食料需給情勢の悪化と国内農業の疲弊を踏まえ、不測の事態にも国民の命を守れるように国内生産への支援を早急に強化し、国民が必要とし、消費する食料は、できるだけ国内で生産する(国消国産)ために、食料自給率を高める抜本的な政策を打ち出すためだ、と考えられた。

しかし、新基本法の原案には食料自給率という言葉がなく、与党からの要請を受けて、「食料自給率向上」という文言を加えるという修正は行なわれたが、なぜ自給率向上が必要で、そのために抜本的な施策を講じるという言及はなされていないのはそのままだ。

まず、食料自給率という指標の位置づけについても審議会関係者の中では、「食料安全保障を自給率という一つの指標で議論するのは、守るべき国益に対して十分な目配りがますますできなくなる可能性がある」とさえ指摘されていたというのだから、理解に苦しむ。

事務方は、食料自給率を唯一の指標にしていたのが間違いだとする理由として、「自給率という『一本足打法』ではだめだ」と言う。その根拠が、農地や労働力や肥料などの生産要素・資材の確保状況などが食料自給率とは別の指標として必要だと説明されている。これは、食料自給率の意味が理解されていないことを意味する。

食料自給率は生産要素・資材と一体的な指標である。なぜなら、生産要素・資材がなかったら、食料生産ができないから、食料自給率はゼロになる。これは、今も、飼料の自給率が勘案されて38%という自給率が計算されていることからもわかる。

具体的には、ほぼ100%輸入に頼っている肥料を考慮すると実質自給率は22%、さらに、野菜だけでなくコメなどの種の自給率も10%に低下すると、実質自給率は9.2%という試算ができる。つまり、生産要素の確保状況が問題なのはそのとおりであるが、それを考慮すると実質自給率が低下する形で、それらは自給率と一体的な指標であり、すべてを勘案した総合・実質自給率を高めることが重要なのである。

だから、生産要素の国内での確保状況、その自給率が大切な指標であることは間違いないが、それと食料自給率という指標は独立してあるわけでなく、飼料以外の生産要素も飼料と同様に勘案することで実質自給率が計算されるものであり、生産要素・資材の確保状況は自給率に集約される構成要素であることが理解されていない。

自給率向上を書きたくなかった理由には、「自給率向上を目標に掲げると非効率な経営まで残ってしまい、予算を浪費する」という視点もあったと思われる。しばしば、「輸入を国産に置き換えて自給率を1%上げるのにどれだのコストがかかるか。非現実的だ」かのようにも言われる。

輸入が滞るリスクが高まっているから議論していることがまったく理解されていない。輸入が止まったときに命を守れないという計り知れないコストを勘案したら、国内生産のコストが少々高くとも食料や種は国内で自給することこそが安全保障で、長期的・総合的には一番安いのだ。

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