【スマート農業の風】(3)データ駆動型農業へ転換しよう2024年4月18日
昔から農業をやっている方は、「栽培暦がカラダにしみこんでいるので、この時期に何をするのかがわかる」や「長年やってきた感覚があれば農作業はだいたい上手くいく」という言い方をする。長年の経験に基づいた判断はもちろん大事で、そこに含まれる個人の情報や地域特有のクセのようなものを農作業に生かしている。
農業は自然と一緒に進むもの
長野県の安曇野地区や白馬地区では、北アルプスの残雪に現れる雪の形を見て農作業のタイミングを知る風習がある。これを雪形(ゆきがた)と言う。雪形が見えるタイミングで農事暦のように作業の準備を始める。雪形には、雪が残って白く見える形と、雪が解けて黒く見える形の両方がある。「種まき爺さん」「常念坊」「蝶」「種まきウサギ」と呼ばれており、雪形の名前から、田畑の仕事や漁を行う時期の目安に利用されてきたことが解る。
雪形は、その年の積雪量や気温の変化によって出現タイミングが変わる。これらは、天候不良や災害の予測、豊作・凶作の占いにも用いられた。例えば、積雪量が少なく雪形が早く消えた年は、水不足が懸念され、また、いつまでも消えない年は冷害が予見される。
長野県白馬村(はくばむら)にある白馬岳(しろうまだけ)で見られる馬型の雪形は「代馬(しろうま)」と呼ばれ、代掻きをする馬の形に見立てたものだ。これが見えると「代掻き作業をする時期が来たよ」と雪形が教えてくれる。諸説あるが、この「代馬」が白馬岳の名前の由来になったと言われている。
とはいえ、最近の気候変動は異常なレベルだ。夏になると猛暑が続き、12月に20度を超える日も出てきた。冬になると、大雪か雪不足のどちらになり、昔ながらの冬の気候にはならない。このような状況の中で、いまままで通りの農業で良いのだろうか。今回は、すぐにできる簡易なデータ駆動型農業を考えていきたい。インターネットや農業管理システムを使った簡単なデータ駆動型農業を紹介する。「隣の家が稲刈りを始めたからうちもやろう」ではない、新しい農業を感じてほしい。
水稲や野菜の収穫適期が分かる積算気温
これを読んでいる方は、積算気温を利用している方もいるだろう。積算気温とは、日平均気温を加算した値で、水稲では、収穫時期などの目安に用いられる。例えば中生品種では、出穂後1,000~1,050度が収穫適期と言われている。積算気温は、レタスやスイカ、トウモロコシ、トマト、ナスなど、さまざまな作物の収穫時期の判断に利用される。起算日は、作物によって変わり出穂や着花、定植日などが用いられる。
積算気温は、インターネットの気象情報サービスから入手することができる。サービスによって、温度を設定して開始日を入れるだけで自動計算できるものや、日々の平均気温をダウンロードして自分で計算するものなどがある。ただ、インターネットで提供される気象情報の多くは、広い地域に対して1所の測定場所から入手した情報で、これをメッシュが大きいという。気象庁の天気予報で使用する情報は、1辺が約20kmの範囲がおおく、山間地や高低差のある地域などでは実測値と差があることがあり、広域型の集落営農の生育判断には不向きといえる。
最近は様々な有料気象サービスがあり、精度が高い1キロメッシュ気象情報が手軽に入手できるようになった。1キロメッシュ気象情報とは、気象庁などの気象データをもとに、標高や地域の特性などの要素を加味し再計算した1km四方ごとの気象情報で、農研機構のメッシュ農業気象データや、営農管理システムZ-GISから利用できる。
営農管理システムZ-GISに搭載される1キロメッシュ気象情報(ハレックス提供)は、24時間天気、1週間天気予報を確認できるだけでなく、風速や風向き、積算気温を見ることができる。特に積算気温は、過去5年間の平均値をもとに、積算気温に達する日にちを表示することができる。これを使えば、目標とする積算温度を設定し、対象作物の起算日(出穂日や着果日・定植日など)を入力するだけで、稲刈りや収穫などの適期を予想することができる。
かつて、雪形を見ることや観天望気は、農業をおこなう上で必要なスキルだった。いまでは、インターネットで精密な気象情報を手に入れることができる。これらの気象情報で明日の天気と風速を調べ農薬散布ができるか判断することや、積算気温を調べ、作業適期(稲刈りや収穫)を予測することが可能となった。これらの情報は、わずかなコストで使えるのも重要なポイントで、手にいれた情報を有効に使うこともスマート農業の第一歩と言える。
重要な記事
最新の記事
-
埼玉県内で鳥インフルエンザ 国内11例目2024年11月25日
-
5年ぶりの収穫祭 家族連れでにぎわう 日本農業実践学園2024年11月25日
-
鳥インフル 米イリノイ州、ハワイ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月25日
-
「JA集出荷システム」と生産者向け栽培管理アプリ 「AGRIHUB」をシステムで連携 農業デジタルプラットフォームの構築目指す JA全農2024年11月25日
-
卓球世界ユース選手権 日本代表を「ニッポンの食」でサポート JA全農2024年11月25日
-
佐賀県産「和牛とお米のフェア」みのる食堂三越銀座店で開催 JA全農2024年11月25日
-
JA全農×農林中金「酪農・和牛の魅力発信にっぽん応援マルシェ」新宿ルミネで開催2024年11月25日
-
EXILE NESMITH監修 くまもと黒毛和牛『和王』の特別メニュー提供 JA全農2024年11月25日
-
「第1回全国冷凍野菜アワード」最高金賞のJAめむろなど表彰2024年11月25日
-
「熊本県産和牛とお米のフェア」大阪の直営3店舗で12月1日から開催 JA全農2024年11月25日
-
都市農業・農地の現状と課題 練馬の野菜農家を学生が現地調査 成蹊大学2024年11月25日
-
食育イベント「つながる~Farm to Table~」に協賛 JQA2024年11月25日
-
薩州開拓農協と協業 畜産ICT活用で経営の可視化・営農指導の高度化へ デザミス2024年11月25日
-
「ノウフクの日」制定記念イベント 東京・渋谷で開催 日本農福連携協会2024年11月25日
-
省スペースで「豆苗」再生栽培「突っ張り棒」とコラボ商品発売 村上農園2024年11月25日
-
在ベトナム農業資材販売会社へ出資 住商アグロインターナショナル2024年11月25日
-
楽粒の省力検証 水稲除草剤の散布時間の比較 最大83%の時間削減も 北興化学工業2024年11月25日
-
【人事異動】北興化学工業株式会社(12月1日付)2024年11月25日
-
幼稚園・保育園など996施設に「よみきかせ絵本」寄贈 コープみらい2024年11月25日
-
平田牧場×福光屋 幻の豚「金華豚」と大吟醸酒粕の味噌漬を新発売2024年11月25日