有機農業は原発依存症に効く【小松泰信・地方の眼力】2024年4月24日
4月23日、岡山県和気町は、農業・農村の維持発展、地域の活力向上を目指して、農薬や化学肥料を使わない有機農業に地域をあげて取り組む「オーガニックビレッジ宣言」を行った。
有機農業を産業振興策のひとつに
環境への負荷を抑える農林水産省の支援事業を活用し、岡山県内では初めての宣言。対象作目は米と野菜。『和気町有機農業実施計画~地域と子どもたちを元気にする、持続性の高い魅力ある農業の実現~』(2024年3月)によれば、「有機農業の推進、啓発」「栽培技術の普及、定着、経営安定促進」「販売促進、有利販売の取組強化」「多様な担い手、農地等生産基盤の確保」の4項目を施策の柱とし、次代を担う子どもたちへの食育の推進、栽培技術の習得支援、学校給食への有機農産物の安定供給、新規参入者の受け入れ促進などを進めることになっている。
現在、和気町が公式的に把握している「7経営体で栽培面積1.7ヘクタール」の取り組みを、2028年度までの5年間で「15経営体で栽培面積10ヘクタール」に拡大することを計画している。
宣言には、「地元農家の方々と手を取り合い、有機農業の普及に向け、収益性の高い作物の生産振興、資源管理のための集落共同活動、鳥獣被害防止に向けた取組を総合的に支援することで、地域と子供たちを元気にする、持続性の高い魅力ある農業の実現」を目指すことが謳われている。
町では、2023年度より、国の「みどりの食料システム戦略」のうち「有機農業産地づくり推進事業」に取り組み、試行的な取り組みを行ってきた。今回の「オーガニックビレッジ宣言」を契機に、「和気町有機農業実施計画」に基づく取り組みを加速させる。
核のごみ捨て場が産業振興策?
西日本新聞(4月18日付)によれば、町内に九州電力玄海原発をかかえる佐賀県玄海町議会(定数10)は、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、文献調査を受け入れるよう求めた請願が提出されたことを受け、4月17日、原子力対策特別委員会を開き、調査に応募するかどうかの審議を始めた。次回の特別委を25日に開催し、請願への質疑などを経て採決する見通し。文献調査を支持する町議が7人を占めており、請願は過半数で採択される可能性が高いとのこと。
原発が立地する市町村で文献調査に関する請願が出たのは全国で初めて。26日に予定される本会議でも採択される可能性が高く、脇山伸太郎町長の判断が焦点となる。
請願を提出したのは、玄海町の商工3団体。うち旅館組合は、玄海原発1、2号機の廃止決定に伴う原発作業員の減少で経営が厳しいことなどを説明するとともに、「高レベル放射性廃棄物の発生原因を有する自治体の責務」とも指摘したそうだ。また、飲食業組合は、新型コロナ禍の観光客減少もあげ、最終処分場を「新たな産業振興策における選択肢の一つ」と訴えたとのこと。
なお、佐賀県の山口祥義知事は16日、処分場の受け入れに「反対」を明言している。
当コラム、原発立地自治体の住民に、「核のゴミ捨て場」となることを「当該自治体の責務」と語らせ、「新たな産業振興策における選択肢の一つ」にあげさせることは、「原発依存症」による当該自治体の無為無策、思考停止を反映したものと考える。
不誠実な北陸電力
4月17日午後11時過ぎ、愛媛、高知両県で震度6弱の地震があった。原子力規制庁によると、愛媛県にある四国電力伊方原発に異常は確認されていない。
中国新聞(4月19日付)の社説は、政府が首相官邸に対策室を設置したが、南海トラフの想定震源内や周辺での地震発生時に臨時開催する有識者の評価検討委員会が、マグニチュード(M)が6.6で6.8以上という基準値に満たなかったため見送られたことを、「国民に情報を説明するには、しゃくし定規の感がある」と批判する。さらに、「四国電力伊方原発では、地震の影響で蒸気の水分を除去する加熱器のタンク弁が不調になった。四国電力は発電機の出力が約2%低下したものの運転に支障はないと説明している」ことを取り上げ、「地震の影響や発生時のトラブル公表に消極的な態度は許されない」ことを強調する。
加えて、能登半島地震の影響で北陸電力志賀原発(石川県)の原子炉圧力容器下部にある制御棒関連の部品が脱落していたことが、3月の点検で不具合が判明したにもかかわらず、4月17日開催の原子力規制委員会の会合まで報告されなかったことを「不誠実だ」と断罪する。
傲慢な東京電力
こちらも不誠実さでは負けていない。再稼働をめぐる議論が続く、新潟県にある柏崎刈羽原子力発電所について、東京電力は再稼働に必要な検査の一環として、15日午後5時すぎから7号機の原子炉に核燃料を入れる作業を始めた。この3月に再稼働に必要な検査の一環として核燃料を入れることを規制委員会に申請し、15日の午前中に承認されたことからの作業開始。てめえに利のあることには抜け目ない迅速な対応には唖然とする。とにかく油断も隙もない連中だ。
信濃毎日新聞(4月17日付)の社説も、「地元自治体が再稼働に同意していない状況での、異例の動きだ」で始まる。もちろん「検査の一環」との説明を「事実上のスタンバイ」と見抜き、これまでも「安全性に対する疑問の数々を素通りして再稼働の準備を進めるような対応は認められず、取りやめるべきだと主張」してきたことから、改めて作業中止を訴える。
さらに、「地域住民に不安の声が広がっている。意に介さず突き進むのは傲慢で、事故が起きれば取り返しのつかない事態を生む原発の運転者として大きな疑問符が付く」と容赦ない。
原発自治体をオーガニックビレッジに
改めて言うまでも無いが、原発が立地しているところの多くは農業を基幹産業としている。この国の農政のもとで農業が衰退産業となっているが、「みどりの食料システム法」(2022年4月制定)以降、環境負荷を抑えた持続的農業をめざした各種施策が打ち出されている。「原発依存症」という病に侵されないために、あるいは病を克服するために、原発自治体には、原発を捨て有機農業に取り組むことを提案する。地域では、化学肥料や農薬を投入されていない耕作放棄地が、有機農業適地として再生利用されることを待っている。原発自治体がオーガニックビレッジとして再生されることは、持続可能な社会づくりの一助となる。
「地方の眼力」なめんなよ
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