主食用多収品種の「にじのきらめき」が人気になる理由【熊野孝文・米マーケット情報】2024年4月30日
新潟県のコメ集荷業者が精米の納入先の生協で3品種の食べ比べテストを行った際の結果が会員制向けの通信に以下のように記されている。
「その際100名ほどの一般参加者におにぎりの食べ比べを行いました。同じ条件で炊飯した3品種のおにぎり、特別栽培コシヒカリ、新之助、にじのきらめきの品種あてと『一番美味しいと感じたおにぎりは』との問いに、約20名の参加者が『にじのきらめき』と答えました。私も多収性品種である『にじのきらめき』が思いのほか美味しかったので複雑な気持ちでした」
にじのきらめきは、なつほのかを母に北陸223号を父に交配して2018年に品種登録された比較的新しい品種だが、作付け面積が急拡大しており、5年産では茨城や新潟を中心に2万8202tが検査されるまでになっている。品種特性は①短稈で倒伏しにくく、多肥条件で多収栽培が可能②生育日数(移植~成熟期)は、「コシヒカリ」に比べて、4~5日程度長い③高温登熟耐性やイネ縞葉枯病抵抗性など優れた品種特性を有する。高温登熟耐性については新潟県での5年産品種別等級比率では、コシヒカリが1等5.0%、2等42.0%で3等に格落ちしたのが49.5%と約半分を占めたのに対して、にじのきらめきは1等が17.8%、2等が72.3%で3等に格落ちしたのは9.3%に留まった。これ以外の特性として大粒で炊き増えがすることが上げられる。千粒重はコシヒカリが22.4gであるのに対してにじのきらめきは23.9gもある。また、ブレンド適性が良く、にじのきらめきの契約栽培を推進している米穀業者の中には、にじのきらめきと他の品種をブレンドすることによって食味が良くなることから「にじブレンド」と命名して外食など業務用を中心に取扱量を増やしている業者もいる。
にじのきらめきの特性はこれだけでなく、ユニークな特性も持ち合わせている。それは再生二番穂としての収量性の良さである。農研機構は福岡県でにじのきらめきを使って再生二期作の栽培試験を行い、その結果、1期作と合わせて10a当たり950キロの収量を上げている。これだけの収量を上げられれば加工用米として冷凍米飯の原料米の認定を受ければ生産者にとって安定して高い収益を得られる作物になる。農研機構でもにじのきらめきを使って再生二期作を行う理由について、生産コストの引き下げが可能で「良食味多収品種で輸出用米や業務用米」に用いられることを想定している。
クリスタルライスは4月22日に4月1日から15日までに取引が成立した産地銘柄の加重平均価格(関東着基準、1等、包装込み、税別)を公表した。それによると宮城ひとめぼれは1万9、021円、秋田あきたこまち2万0、492円、関東コシヒカリ1万9,544円、関東あきたこまち1万8、953円、関東その他銘柄1万8、324円となっている。4月15日以降、市場のスポット価格はさらに値上がりしており、関東コシヒカリも2万円の大台で買われている。卸や仲介業者の見方は6~7月はさらに厳しい情勢になるというのが大方の見方で、卸が今一番力を入れているのが産地に出向いて新米を一刻でも早く渡して欲しいということ。超早場の南九州の早期米には2万円という声も出ているが、卸サイドとしては新米の店頭価格をなんとしても5キロ2000円以下に抑えられるような仕入れ価格にしたいとし1万6500円以下の仕入れを目論んでいるところもある。
冒頭の産地の集荷業者の通信には「一般消費者が低価格でコシヒカリに負けない食味の品種があったら昨今の物価高の影響もあり、普段食べているコシヒカリから価格が安くて食味の変わらない『にじのきらめき』や『つきあかり』に転換する人がそれなりに出て来ると思うのです。生協のコメ供給もかつてのこだわり高価格帯商品から精米5キロ1500円から2000円以下の安くてそれなりに美味しいお米の売れ行きが伸びています。取引先米穀業者も『6年産はBランク米。特につきあかり、こしいぶき、にじのきらめき、をなるべく多くわが社に売ってください』という要望が今からきているのです」と記されている。
新潟県の飼料用の特認品種は、新潟次郎、アキヒカリ、ゆきみのり、亀の蔵、いただき、ゆきみらいであり、多収品種のにじのきらめきは入っていない。特任品種でなければ飼料用米として出荷しても助成金は満額受け取れない。飼料用米の出荷が減って主食用米の生産量が増えるのは確実だ。そのことは新潟県だけの特有の動きではなくコメの産地では大方同じような動きになると予想される。
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