シンとんぼ(92)みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(2)2024年5月4日
シンとんぼは令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まり、みどり戦略の大義である「安全な食糧を安定的に確保する」を実現するために、現場は何をすべきなのかを、同戦略のKPIとその有効性や今後の農業に与える影響などをひととおり検証しながら考察を加えてきた。そして行きついたシンとんぼなりの結論が、現在ある技術を正しく活用すれば、新たな技術開発やイノベーションを待たずとも、みどり戦略の大義は達成可能だろうということだった。
そこで、前回からみどり戦略対応のために、農業現場はどう動くべきなのか、昆虫の分際で持論を展開している。今回は、化学農薬のKPI対策の続きだ。
まずは、作物ごとにどんな化学農薬をどれだけ使用しているか実態を明らかにし、絶対に減らせない農薬(防除を省略できない病害虫を防除できる化学農薬)、減らしても大丈夫な農薬(対象の病害虫の発生が少なかったり、他の方法で代替が可能なもの等)といった具合に仕訳していくと、絶対に減らせない農薬を温存しつつ、リスク換算値を減らすための算段が必ず見えてくる。
うまくやれば、2030年の10%削減どころか、2050年の50%削減だって可能な作物もあるだろう。ただし、これは、普段使用している農薬とその使用方法、使用量が何であるかによって、対応がまるっきり違うので、暦がある作物であれば暦単位で、暦が無ければ農家単位で考えていかなければならない。
そう書くと何やら難しそうに感じるが、これはそんなに難しいことではなく、まずは、使っている全ての農薬のリスク係数を調べ、それぞれの使用方法、使用量をリスト化して現在のリスク換算数量合計を算出する。それができたら、作物の収量・品質を考えて欠かせない農薬を除き、まずは、削減しても大丈夫な農薬をリストアップする。そして、その減らしてもいい農薬の役割を代替できるIPM資材やリスク換算量の少ない農薬を探し、あればそれを当てはめていけば良い。この時、代替する農薬のリスク換算量を計算しておいて、比較しながらするとよい。あくまで、使用している農薬の全てを減らさなければならないのではなく、使用している農薬のリスク換算量総計を削減すればいいのが大前提なので、これを頭においておけば必ず良い対策方法が導きだせると思う。
もし、生産量を維持するためにどうしても化学農薬のリスク換算総量を減らせない作物がある場合は、地域で栽培している他の作物での削減を考えれば良い。何度もいうが、みどり戦略のKPIは、合計値を減らせばいいので、減らさない作物と減らす作物を組み合わせて、地域で作付している作物に対する農薬のリスク換算値総計を減らす算段をすれば良い。もちろん、その場合は地域単位、JA単位で考えなければならないので、指導機関等のリーダーシップが必要になるが、産地を維持し品質の良い生産を守るためには有効な方法となるだろう。
重要な記事
最新の記事
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(2)今後を見据えた農協の取り組み 営農黒字化シフトへ2025年1月23日
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(3)水田に土砂、生活困惑2025年1月23日
-
災害乗り越え前に 秋田しんせい農協ルポ(4)自給運動は農協運動2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(1)2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(2)2025年1月23日
-
人づくりはトップ先頭に 第5次全国運動がキックオフ 150JAから500人参加【全中・JA人づくりトップセミナー】(3)2025年1月23日
-
元気な地域をみんなの力で 第70回JA全国女性大会2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(1)新しい仲間との出会い 次世代へつなげるバトン 青森県 JA八戸女性部 坂本順子さん2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(2)この地域を、次世代に繋ぐ、私たち 山梨県 JA南アルプス市女性部 保坂美紀子さん2025年1月23日
-
【JA女性組織活動体験発表】(3)私たちの力で地域をささえ愛 愛知県 JA愛知東女性部 小山彩さん2025年1月23日
-
旧正月【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第325回2025年1月23日
-
地元産米を毎月お届け 「お米サポート」スタート JAいずみの2025年1月23日
-
定着するか賃金引上げ 2025春闘スタート 鍵は価格転嫁2025年1月23日
-
鳥インフル 米アイオワ州など5州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月23日
-
鳥インフル 英シュロップシャー州、クルイド州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月23日
-
スーパー売り上げ、過去最高 野菜・米の価格影響 「米不足再来」への懸念も2025年1月23日
-
福島県産「あんぽ柿」都内レストランでオリジナルメニュー 24日から提供 JA全農福島2025年1月23日
-
主要病虫害に強い緑茶用新品種「かなえまる」標準作業手順書を公開 農研機構2025年1月23日
-
次世代シーケンサー用いた外来DNA検出法解析ツール「GenEditScan」公開 農研機構2025年1月23日
-
りんご栽培と農業の未来を考える「2025いいづなリンゴフォーラム」開催 長野県飯綱町2025年1月23日