6年産米50車を事前購入予約したという大手小売【熊野孝文・米マーケット情報】2024年5月7日
大型連休の初日、東京の大手業務用小売店が集まって緊急の情報交換会が開催された。テーマは、現在の米価高騰にいかに対応すべきかということが主題で、小売組合が作成した5年産米の状況や客観的に現状をどう認識するかと言った内容が記された資料が配布された。情報交換会の終わりに主催者が締めの挨拶を行ったが、その中身に驚いた。なんとこの大手小売は産地の農協等と交渉して6年産米50車(※1)を事前購入予約したというのだ。
情報交換会では、東京都米穀小売商業組合が作成した「直近の米価上昇について」と題する資料が参加者に配布された。それには以下のように記されている。
「今般、組合員各位より玄米仕入れ値の価格上昇につき悲鳴とも取れる『今後、どうなってしまうのか』と言った声が散見されるが、当会としての基本的対応のため、客観的現状を抑えておきたい。
1. コメがないのか→平成5年のコメパニックの状況とは全く異なる。令和5年産の作況は101であり、主食用収穫量は661万トンある。ただし、コメの品質は思わしくなく、そのため歩留まりは悪い。その意味においてタイト感はあるが、絶対量を不安視する状況にはない。
2.価格上昇について→まず、相対価格は出来秋からほぼ価格上昇はない。他方、クリスタルライスの直近取引状況を見ると、例えば令和5年産秋田あきたこまちは9月1万5000円でスタートして、3月1万8,800円程度と4000円弱上昇、また令和5年産関東コシヒカリも9月に1万3,900円程度でスタート、3月には1万7,800円程度とこちらも4000円弱上昇している。これらは、玉のない卸がある意味カネに糸目をつけずに買いに行っている余波であるが、民民取引の指標になっている関係でクローズアップされている。
3.今後の価格推移について→いくつかの資料を確認すると、まず、備蓄米の買入状況は、第1回目こそ3%の低入札であったが、現在4回目まで終了して8割消化されている。令和6年産はおおよそ1万3,500円程度と言われており、この価格帯でおおよそさばけてきている意味を考えると、今後とも青天井で価格が上昇していく可能性は低いのではないか。
また、作付け意向をみるとおおむね前年並みであり、大きく作付過多なる可能性は低い。このことからもどこかで価格的な落ち着きを見せるのではないかと思われる。ただし、将来のことは誰にも分らない。その意味において、仕入れ当用買いに留めることが賢明と思われる」
情報交換会では、関心が高い政府備蓄米の緊急放出に加え、先物市場がどうなるのかに話題が集中したが、備蓄米の放出については主催側からは「ないだろう」という見方が強かった。また、先物市場については、堂島取の本上場申請の審査が順調に行っても実際に取引が開始されるのが8月13日で、しかも取引限月が当初の見込みとは違い今年10月限がスタート限月ではなく、来年2月限がスタート時の当限月になると見込まれており、これでは6年産米のスタート時の価格が見通せなくなり、新米の出回り初期は、売り手買い手の相対取引かもしくは席上取引会での先渡し条件で取引することになる。
端境期で需給がひっ迫する中での現物や先渡し条件での取引は極めて高いリスクを背負うことになることは必須。このためリスクヘッジできる最初の取引限月が来年の2月からでは遅過ぎる。
おまけに現在のひっ迫感がさらに強まる可能性が高い要因がある。それは国が制度として位置付けた「周年安定供給対策」。この対策はコメが過剰になったとき価格が下がらないように国が余ったコメに対して金利や保管料を補填するもので4年産米は25万tが申請され、18万tが支援の対象になった。この18万tは今年の3月末までにすべて売り切ってしまった。このため保管されているコメはないはずだが、なんとこの制度には毎年50億円の予算がついていることから産地に5年産の申請を募ったところ複数の産地から今年11月以降に販売する分について申請が上がっているのだ。具体的な産地名や数量について農水省は明らかにしていないが、ひっ迫している5年産を次年度以降に販売を先延ばしするということはタイト感に拍車をかけることだけは間違いがない。
コメ対策では、入り口対策(生産調整)で4000億円を超える巨額な税金をつぎ込みコメ減らしを行い、さらに米価を上げるために出口対策(周年安定供給対策)に税金をつぎ込んで国が在庫負担するというのが現在の制度で、消費者は税金を支払いさらに高いコメを買わなくてはいけない構造になっている。
冒頭で大手小売が事前契約で50車を購入したというが、いくらだったのか価格は記さないが、それを売るには取引先の外食店などに白米の大幅な値上げを要求しなくてはならない。
※1 卸や大手小売でのコメの取引単位で、トラック1車単位のこと。通常は200俵(30kg紙袋で400袋)を指す。
重要な記事
最新の記事
-
幻の青大豆「キヨミドリ」で作るみそ 真庭市で仕込み始まる JA晴れの国岡山2025年1月28日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月28日
-
【第2回JA女性職員活躍サミット】全国の10JA結集 まず職場環境整備を2025年1月28日
-
人気漫画の「米シーン」が米袋に 石川県産米を応援 JAグループ石川2025年1月28日
-
2月3日は「大豆の日」国産大豆商品プレゼントキャンペーン実施 JA全農2025年1月28日
-
【役員人事】クボタ(2025年3月予定)2025年1月28日
-
伐採跡地の再造林を加速 国内林業活性化へ 住友林業2025年1月28日
-
全国の野菜・果物が集結「にっぽん青果祭」大阪・扇町公園で4月開催2025年1月28日
-
旬の福岡県産「あまおう」パフェ 期間限定で登場 銀座コージーコーナー2025年1月28日
-
今年の節分は2月2日 親子で長さ7mのジャンボ巻きずしに挑戦 コープこうべ2025年1月28日
-
工場廃熱をCO2フリー電力へ変換 熱電発電システムを実用化 ヤンマー2025年1月28日
-
帰省など国内移動やインバウンドで堅調 外食産業市場動向調査12月度 日本フードサービス協会2025年1月28日
-
雨に強い大輪系「よく咲くペチュニア パフィン」シリーズに新色ブルー追加 サカタのタネ2025年1月28日
-
ライブコマース「旬彩ときめき!南房総いいものライブ直送便」29日に配信2025年1月28日
-
スロベニア・シンガポールでアシストスーツを販売開始 イノフィス2025年1月28日
-
エジプシャンクローバーの高精度全ゲノム解読 品種特性を最新ロングリード技術で解明 かずさDNA研究所2025年1月28日
-
「姫路いちごフェア」2月5日に開催 数量限定で無料試食も2025年1月28日
-
「植物工場業界の今 参入するのは今か?」ライブセミナー配信 矢野経済研究所2025年1月28日
-
米の備蓄制度 根本見直し議論を 産地の声2025年1月27日
-
【注意報】冬春ピーマン「斑点病」、冬春トマト「すすかび病」県内で多発 宮崎県2025年1月27日