【JCA週報】2010年のJAが危ない、将来方向は#6 (坂野百合勝) (2002)2024年5月20日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長山野徹JA全中代表理事会長、副会長土屋敏夫日本生協連代表会長)が協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、当機構の前身である協同組合経営研究所が発行した「協同組合経営研究月報」2002年7月号に、坂野百合勝氏が執筆された「2010年のJAが危ない、将来方向は」です。
ボリュームの関係から複数回に分けて掲載いたします。途中で他の掲載を挟んだ場合はご容赦ください。
2010年のJAが危ない、将来方向は#6/全7回 (2002)
坂野百合勝(全国農協役職員共済会・常務理事)(当時)
(連載21世紀における協同組合の意義と課題 第2回)
はじめに (#1)
10年後のJAが危ないー経営基盤を揺るがす世代交替一
1.右肩下がりの環境下で経営力低下 (#1)
2.世代交替がもたらす深刻な影響 (#2)
3.経営基盤を揺るがす資本力の低下 (#3)
4.伸び率低下の事業伸長率 (#4)
5.進む正組合員の勢力縮小 (#4)
6.組合員の参加・参加力の低下 (#5)
7.次々に発生する不良資産 (#5)
8.高コストで競争力低下 (#5)
10年後も活力ある組織で発展し続けるために (#6)
JAの将来像と課題 (#7)
10年後も活力ある組織で発展し続けるために
JAの経営診断指標である①資本力,②事業伸長力,③勢力拡大力,④組合員力,⑤不良資産処理力,⑥生産性力等の指標の側面から,若干の考察を試みたが,いずれの指標も右肩下がりとなることが予測され,10年後のJAが危ないことを指摘した。では活力ある組織としてJAが発展し続けるためにはどうすべきなのであろうか。後悔先に立たずであり,今から先手の対策を打ちたい。
1.組合員の加入促進を
まずもってなすべきは,組合員の増加対策である。組合員が減少していけば組織は衰退するし,組織の基本問題である。
そのためには,①正組合員の継承対策,②女性の組合員化,③准組合員の加入促進対策の勢力拡大策,が必要となる。30%の高齢中核組合員による大口事業活用構造が崩れた後は,多数の小口事業活用組合員によって支えてもらうしかない。
そのためには組合員の拡大策を取る道しかないが,この対策は積極的には行われてはいない。とりわけ准組合員の加入促進対策を活発に行っているJAは少ない。このような正組合員の准組合員化が進むと同時に減少してくれば,女性の組合員化,准組合員の増加策を取らざるをえないが,このことが進めば,JAの性格も自ずと変質していく。一言でいえば,農協法内地域協同組合的JAになっていかざるをえない。
2.多様な居場所づくり
組合員の拡大策を展開していくためには,多様な組合員ニーズを実現する居場所づくりが必要となる。居場所とは,JAの場合は事業として,活動としてつくることである。多様な組合員が活用できるJAの事業や活動が用意されれば,JAと関われる接点もできてメリットも実現することができれば,組合員加入も進むこととなる。出資の金額や配当の仕方,機関運営への参加・参画の仕方についても工夫が必要となる。
(1)事業としての居場所づくり
1)農業ゾーン,2)資産管理ゾーン,3)信用・共済ゾーン,4)生活文化ゾーン,5)健康•福祉ゾーン,6)交流ゾーン,7)学童体験ゾーン等の多様な事業を準備することが必要となる。
とりわけ正組合員継承者である次世代の息子夫婦にとっては,相続した田畑の維持管理,また年老いた両親の介護の世話をJAがしてくれるかどうか,という要望は強い。このことにJAが対応できなければ加入の魅力は極度に薄れてしまう。
そのためには,JAは農地保有合理化事業に取り組んだり,生産組合法人を立ち上げるなどした受け皿づくりが求められるし,デイサービスセンターなどを設けて対応することが必要となる。これまでのJAではいずれも不得手な取り組みの弱い事業部門であるために,厄介な対策である。
(2)活動としての居場所づくり
また活動としても,多様な組合員が参加して多様な活動を展開することによって,自分たちの欲求を実現していく居場所づくりが必要となる。例えば毛がにを食べに行きたいというニーズを実現することから,ヨガをしたい,エアロビックスをやりたい,協同組合についての学習をしたい等々の幅広いニーズのすべてを実現していく場づくりをしていくことが必要となる。居場所のないところに,人は寄ってこない。
(続く)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(139)-改正食料・農業・農村基本法(25)-2025年4月26日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(56)【防除学習帖】第295回2025年4月26日
-
農薬の正しい使い方(29)【今さら聞けない営農情報】第295回2025年4月26日
-
1人当たり精米消費、3月は微減 家庭内消費堅調も「中食」減少 米穀機構2025年4月25日
-
【JA人事】JAサロマ(北海道)櫛部文治組合長を再任(4月18日)2025年4月25日
-
静岡県菊川市でビオトープ「クミカ レフュジア菊川」の落成式開く 里山再生で希少動植物の"待避地"へ クミアイ化学工業2025年4月25日
-
25年産コシヒカリ 概算金で最低保証「2.2万円」 JA福井県2025年4月25日
-
(432)認証制度のとらえ方【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月25日
-
【'25新組合長に聞く】JA新ひたち野(茨城) 矢口博之氏(4/19就任) 「小美玉の恵み」ブランドに2025年4月25日
-
水稲栽培で鶏ふん堆肥を有効活用 4年前を迎えた広島大学との共同研究 JA全農ひろしま2025年4月25日
-
長野県産食材にこだわった焼肉店「和牛焼肉信州そだち」新規オープン JA全農2025年4月25日
-
【JA人事】JA中札内村(北海道)島次良己組合長を再任(4月10日)2025年4月25日
-
【JA人事】JA摩周湖(北海道)川口覚組合長を再任(4月24日)2025年4月25日
-
第41回「JA共済マルシェ」を開催 全国各地の旬の農産物・加工品が大集合、「農福連携」応援も JA共済連2025年4月25日
-
【JA人事】JAようてい(北海道)金子辰四郎組合長を新任(4月11日)2025年4月25日
-
宇城市の子どもたちへ地元農産物を贈呈 JA熊本うき園芸部会が学校給食に提供2025年4月25日
-
静岡の茶産業拡大へ 抹茶栽培農地における営農型太陽光発電所を共同開発 JA三井リース2025年4月25日
-
静岡・三島で町ぐるみの「きのこマルシェ」長谷川きのこ園で開催 JAふじ伊豆2025年4月25日
-
システム障害が暫定復旧 農林中金2025年4月25日
-
神奈川県のスタートアップAgnaviへ出資 AgVenture Lab2025年4月25日