先端の科学も天候は変えられない【原田 康・目明き千人】2024年6月1日
毎年5月には山梨の南アルプスの農家からモモやスモモなどの季節の果物をネットで買っているが、今年はサクランボの出荷が出来ないとのことであった。4月のサクランボの開花時期に25度以上の高温が続いた。サクランボの花粉が傷んで交配が不調のためにこの地域では今までに経験をしたことのない不作で、平年の20~30%の収穫で売り物になるサクランボがないので今年はお休みであった。
天候が農家に与えるダメージを改めて知らせる出来事である。コメ作り、野菜、果実も全部が芽生え、定植、受粉、結実、肥大が天候に合わせた栽培管理となる。沖縄、九州から北海道まで日本列島の各地域の四季の気候条件に合わせた作物、品種を選んでの栽培となる。
稲を例に見ると田植えから夏の生育期、秋の収穫まで農家は毎日田んぼを見て稲の生育状況、天候に合わせて田んぼの水を深くしたり浅くしたりの管理をしている。現在は、「スマート農業」が普及しており、AIやICT等の先端技術を活用してロボットによる農作業の自動化、ドローンによる上空からの生育状況や、病虫害駆除、AIによる田んぼの水の管理の自動化などが普及している。
更にデータのプラットフォーム「WAGRI」によりいろいろなデータを集めて分析をして活用する体制も作られている。「WAGRI」・農業データ連携基盤は農研機構農業情報研究センターが事務局となり農産物、畜産物の生産から流通、気象など関係者が個別に集めている。いろいろなデータを集約して分析して生産から消費者までの関係する農家や企業に提供をする体制も作られている。
このように先端の技術も農業をサポートする仕組みが出来てはいるが、稲の例のようにようやく収穫の時期に異常な高温、集中豪雨、台風が来るとこれまでの努力が水の泡となる、ほとんど収穫がゼロの災害が起きる。野菜や果実も同じ条件である。日本だけではなく世界の農業も同じである。毎日の食卓に並んでいるご飯、野菜、果物、牛乳、卵、肉類はこのようにして作られていることを思い出すことが農業への理解を深めることとなる。
(原田康)
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