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JAグループは一丸となれるのか【小松泰信・地方の眼力】2024年6月12日

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JA全中は6月6日、今年10月に開催されるJA全国大会議案の組織協議案を決めた。(以下、西暦表示に改変)

komatsu_honbun.jpg危機まっただ中のJAグループ

 組織協議案の「はじめに」では、「わが国の農業・農村・JAを取り巻く環境は大きく変化しています。(中略)世界的な物価高騰による生産資材価格の高止まりが続くなか、多くの地域で営農が継続できるか危機的な状況にあります。また、農村部を中心に過疎化・高齢化が進み、今後、基幹的農業従事者が激減する恐れがあるほか、JAグループにおいても2017年をピークに組合員総数が減少に転じ、JAの事業・経営を取り巻く環境も厳しさが加速しています。人の確保・育成を含めたJAの組織基盤・経営基盤の対応強化は、待ったなしの状況です」と危機感をあらわにしている。
 この状況認識に誤りはない。本当に現場は、危機まっただ中にある。
 他方、国連が2025年を二度目の国際協同組合年に定めるなど、協同組合に対する期待の高まりを感じ取ってか、今大会を「協同組合の素晴らしさを組織内外にアピールする絶好の機会」と捉えている。
 そして、JAグループの存在意義を『協同活動と総合事業で食と農を支え、豊かなくらしと活力ある地域社会を実現する』と整理し、大会スローガンを『組合員・地域とともに食と農を支える協同の力 ~協同活動と総合事業の好循環~』としている。
 主題に「組合員」が入るのは今大会が初めてとのこと。その理由は、「Ⅰ.情勢・課題認識」に記されている。

組合員も職員も減少

 「Ⅰ.情勢・課題認識」から伝わってくるのは、組織基盤の弱体そのものである。
 これまでも正組合員数の減少傾向は続いていたものの、准組合員の増加によって2017年までは組合員総数は増加していた。しかし18年からは組合員総数が減少に転じた。今後もこの傾向が続くことを想定している。
 そのため、「組合員不在では役割・機能が発揮できないので、価値観を共有する仲間づくりに向けて、情報発信を進めるとともに、JAの利用・参画を呼びかけていく」ことを提起している。
 組合員の事業利用を大前提に運営される事業体としては、組合員の減少が経営面に及ぼす影響は大。減少傾向が続く事業総利益をさらに悪化させることは必至であることから、「JAの強みである総合事業性を最大限発揮し、(中略)健全・強固な財務・収支基盤確保に取り組んでいくこと」を訴えている。
 しかし、事業の直接的な担い手である職員の減少に歯止めがかからない。
 そのため、「協同組合の理念に共感する職員の育成や、処遇改善・職場風土改善等の取り組みを並行して進めることが重要」とし、「職員への投資、労働環境の整備等を通じ、多様性を持った職員が働きやすい、働きたいと感じる職場づくりを検討していくことが重要」としている。
 組合員と職員の減少、そして事業総利益の悪化。JA運営はジリ貧。もちろん連合会の経営にも悪影響を及ぼしているはず。

議案の基本的考え方と5つの取組戦略

 このような情勢・課題認識から、次の3つの基本的考え方とその具体化に向けた5つの取組戦略が提示されている。
(1)組合員・地域社会に提供する価値の最大化
   =①食料・農業戦略、②くらし・地域活性化戦略
(2)「活動と事業の好循環」による価値提供を支える組織基盤・経営基盤の強化
   =③組織基盤強化戦略(JA仲間づくり戦略)、④経営基盤強化戦略
(3)社会的な潮流・要請への対応(各戦略で実践)
 これらに、理解醸成のための情報発信に取り組むため、⑤広報戦略が加わる。
 JAがジリ貧から脱却するためにもっとも重要な基本的考え方は、スローガンの副題に示されている「協同活動と総合事業の好循環」を前面に出している、(2)の組織基盤・経営基盤の強化である。

組織基盤強化戦略(JA仲間づくり戦略)のポイント

 組織基盤強化戦略の対応方向として4項目が示されている。しかし、組合員の三位一体的性格(主権者・運営者・利用者)を体現する、当事者意識を有した組合員を増やすことに注力しなければならないことから、とくに重要なのは次の2項目である。
・「女性・青年をはじめとする多様な組合員等の参画促進」=これによって、シニア男性中心の男性優位主義(マッチョ)運営からの決別を目指すことである。
・「組合員の学びの場・リーダー育成」=これによって、社会的知性に満ちた、深みのある運営を目指すことである。

物足りない経営基盤強化戦略

 経営基盤を強化しなければ、JAだけではなくJAグループは砂上の楼閣そのものと化す。今現在、すでにその兆候は顕在化しつつある。にもかかかわらず、他人事(ひとごと)のような書きぶりには唖然とする。象徴的なのが、対応方向の「(4)JAの機能発揮に向けた中央会・連合会による支援」であるが、その内容は紹介に値しない代物。
 別項の「JAグループ一丸となった取組戦略の実践」と題したところには、「 JAは、それぞれのJAの実情や課題に応じて各戦略の取り組みを選択し、それぞれの取組目標を設定のうえ実践します」と記されている。その後には、「 JA全国大会議案の実践に向けては、経済、信用、共済等の各事業の中長期的な取組方向と連動を図ったうえで、JAを連合会・中央会が連携して支援し、JAグループ一丸となって取り組みます」と威勢の良いことが謳われている。
 全国のJAが最適戦略を選択し実践しようとしたとき、中央会も含む連合会は誠実に支援すると考えて良いのだろうか。おそらく、「各事業の中長期的な取組方向と連動」が条件となるはず。だとすれば、JAが連合会に従属することを意味している。
 過日某県で、全組合長と連合会のトップとの会議に陪席したとき、組合長からの要望に対して連合会のトップが、丁寧に「できません宣言」を連発したのには驚き、悲しみさえ覚えた。なぜなら、組合員へのまなざしがまったく感じられなかったからだ。
 全農、農林中金、共済連全国本部、全厚連、そして全中は、「一丸」となれる根拠と条件を早急に明らかにすべきである。

 「地方の眼力」なめんなよ

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