(389)外国人労働者の仕事【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年6月21日
厚生労働省による「『外国人雇用状況』の届け出状況」、そしてスタートして1年余りの新しい出入国管理制度(J-Skip)を見ると、彼らが日本でどのような仕事を想定しているかがよくわかります。
2024年1月26日に公表されたデータ(2023年10月末時点)を見ると、日本における外国人労働者数は2,048,675人(約205万人)である。これは令和元年の約166万人から約39万人増加している。平均すれば年間約10万人のペースである。
出身国別に見た場合、最大はヴェトナム(約52万人、25%)、中国(40万人、19%)、そしてフィリピン(23万人、11%)が上位3か国である。また、総数はまだ少ないが、インドネシア(12万人)やミャンマー(7万人)などは、前年比で各々156%、150%と大きく伸びている。
205万人の内訳は製造業55万人、卸売業・小売業26万人、宿泊業・飲食業・サービス業23万人であり、医療・福祉9万人などが目立つ。このあたりまでは一般的な日本で働く外国人労働者のイメージの全体像である。
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一方、この205万人を在留資格別に見ると、「身分に基づく在留資格」が最大で62万人、次いで「専門的・技術的分野の在留資格」が60万人とほぼ同数で最大である。ちなみに「技能実習」は41万人である。
さて、在留資格の中に「高度専門職1号・2号」というものがある。こちらは従来ポイント制が用いられていた。活動内容が、①「高度学術研究活動」、②「高度専門・技術活動」、③「高度経営・管理活動」の3つに分類され、「学歴」「職歴」「年収」「研究実績」「その他ボーナス」などにポイントを設定し、その合計得点が一定点数に達した場合に、出入国管理上の優遇措置を与える制度である。
2023年4月以降、「特別高度人材制度(J-Skip)」[1]という新制度が導入された。その結果、従来のポイントとは別に、学歴・職歴・年収が一定の水準以上であれば「高度専門職1号」の在留資格が付与される「特別高度人材」として優遇されることとなった。
先に述べた3つの活動内容を具体的に言えば、①は大学の教授や研究者、②は企業の技術者や国際弁護士など、さらに③はグローバルな事業展開を行う企業等の経営者、などが想定されているようだ。
出入国管理庁から「特別高度人材」として認められる要件を見ると、①と②は「修士号以上取得かつ年収2,000万以上の方」あるいは「従事しようとする業務等に係る実務経験10年以上かつ年収2,000万以上の方」であり、③は「事業の経営又は管理に係る実務経験5年以上かつ年収4,000万以上の方」と示されている。
外国人労働者というと何となく日本中に分散して製造や販売・サービスの現場で働いているようなイメージを持つ方が理解しやすい。都道府県別に偏りはあるが、それは概ね間違いではない。ただし、一方では後段で述べたように学歴・職歴・年収を判断基準とした「特別高度人材」に対して優遇措置を伴う門戸が開かれ、その制度により日本社会で仕事をしている人がいることも押さえておく必要がある。
誤解を恐れずに言えば、現在の日本の給与所得者の中で年収2,000万円以上はどのくらいいるか。「民間給与実態調査」によれば、年間を通じた給与所得者約5,000万人のうち、約30万人、0.6%に過ぎない。また、学部から大学院への進学者数も文理全体で見れば良くて15%程度がせいぜいであろう。多くの日本企業は相変わらず学部卒を中心に採用しているが、それでは競争のスタートラインから異なる状況になってきたわけだ。
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幕末から明治初期の頃に日本に滞在した外国人もかなりの富裕層が多かったと理解しています。外国人労働者といっても実は学歴・職歴・年収に大きな差があるという当たり前の事実をよく理解しておく必要があります。
[1] 出入国管理庁「特別高度人材制度(J-Skip)。アドレスは、https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri01_00009.html (2024年6月19日確認)
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