シンとんぼ(99) -みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(9)-2024年6月22日
シンとんぼは令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まり、みどり戦略の大義である「安全な食糧を安定的に確保する」を実現するために、現場は何をすべきなのかを、同戦略のKPIとその有効性や今後の農業に与える影響などをひととおり検証しながら考察を加えてきた。そして行きついたシンとんぼなりの結論が、現在ある技術を正しく活用すれば、新たな技術開発やイノベーションを待たずとも、みどり戦略の大義は達成可能だろうということだった。そこで、みどり戦略対応のために農業現場はどう動くべきなのかの持論を展開しており、現在は有機農業の取組面積拡大をテーマに、有機農業拡大に関するKPIを実現するための「次世代有機農業に関する技術」を検証している。
今回は、2040~2050年までに確立するとしている技術の1つである「⑦主要病害に対する抵抗性を有した品種の育成」について検証してみようと思う。
この技術におけるみどり戦略上の技術詳細では「様々な病害に耐性を持つ、高度複合病害抵抗性品種の育成」となっているのみで、具体的な開発状況等は示されていない。
気になって調べたところ、作物の新品種出願数・登録件数は平成19年度の1,533件・1,432件をピークに減少傾向にあり、令和3年度の出願件数・登録件数は848件・813件とおよそ半減している。令和3年度末の有効登録品種数は7,444品種を作物別にみた場合、農業上重要な食用作物(稲、麦類、豆類、雑穀類などの穀物、かんしょ、ばれいしょ等のいも類)や果樹では、公的機関の開発した品種が大きな割合(25%)を占め、花など鑑賞用のものは個人や一般企業の割合が多い。品種登録の出願件数は全体として減少傾向にあり、特に都道府県による出願はピーク時の5割程度に減少しているとのことだ。(「国内外における品種保護をめぐる情勢」令和4年12月9日 農林水産省輸出・国際局資料より)
このような情勢の中、農水省のいう「⑦主要病害に対する抵抗性を有した品種の育成」はどの程度進んでいるのだろうか? 取り組み開始が2040年からなので、今は準備段階かと思うが、どこを調べても抵抗性品種開発に関する情報は少なく、心もとない気持ちになる。全ての作物・病害虫に対する抵抗性品種ができるとは思わないが、未だに抵抗性遺伝子すら分かっていない病害虫も多い中、たとえゲノム編集技術を駆使して主要作物・主要病害虫対象の抵抗性品種開発に絞ったとしても、それがたった10年で出来るかなあと心配しているのだが杞憂だろうか?
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