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赤字1.5兆円とJA全国大会【小松泰信・地方の眼力】2024年6月26日

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 「お前は何党を支持してんの…」「オレは中立だよ。…だけどもよ、与党は補助金を出してくれるぞ」「そうではないべ。特定の党だから出すだけわけじゃないべさ。他の政党が政権を握ったら、その党だって出すべさ」

komatsu_honbun.jpg補助金は与党からの施しではない

 冒頭のやり取りは時田則雄氏(北海道十勝にて農業・歌人)が富良野の農業者に電話で尋ねたときのもの(日本農業新聞6月24日付)。時田氏はこのやり取りを紹介した後、「政府・与党は腰を据えて農業振興のために、さらに力を入れてもらいたいものだ」と記している。
 「このたびの食料・農業・農村基本法の改定により、農業・農村を救わないことが明確になった。農業・農村の疲弊を食い止めるのではなく、それをやむを得ない前提として、わずかに生き延びた経営の成長産業化と企業参入促進により、輸出やスマート農業で利益を上げればよいとする方向性が示された」と、時田氏の願いが通じぬことを翌25日付の同紙で鈴木宣弘氏(東京大大学院特任教授)が教えている。
 当コラムも富良野の方と同じ台詞を何度となく聞き、ガッカリした経験を持つ。補助金は与党のポケットマネーでもなければ、与党からの施しでもない。農業を営々と営むことで多面的機能を無償で創出してきた農業者には、堂々と要求し、受け取る資格がある。政権交代の暁には、今以上に補助金が出されることが容易に想定される。なぜなら、常軌を逸した殺戮志向的国防予算を第1次産業の維持発展を目的とする平和的国防予算に振替えることで可能となるからだ。

農林中金赤字1.5兆円

 今この平和的国防産業に深い関わりを持つ農林中央金庫(以下、農林中金と略。農業協同組合、漁業協同組合、森林組合などの協同組織により設立された全国金融機関)に暗雲が垂れ込めている。
 日本経済新聞(6月19日付)によれば、農林中金は3月末時点で56兆円の市場運用資産のうち、42%にあたる約23兆円を外国債券で運用していたが、欧米の金利上昇(債券価格は下落)に伴って、過去に買い入れた高価格(低利回り)の外債の評価額が下がり、含み損が膨らんでいる。当初の想定より欧米の金利低下(債券価格の回復)が遅れる可能性が高いとみて、24年度中に「10兆円かそれを上回る規模の低利回り(外国)債券を売っていく」(奧和登農林中金理事長)ことに。含み損を実際の損失として確定させる結果、25年3月期の収支は大幅に悪化し、最終赤字額が1.5兆円規模となる可能性が出てきた。
 奥氏は、「(外債関連の)金利リスクを小さくし、法人や個人の信用リスクを取る資産などに分散させる」ことで、「財務とポートフォリオが改善し、26年3月期の黒字化が可能になる」との認識を示した。
 農林中金は財務基盤を強化するため、総額1.2兆円の資本増強を検討し、出資者のJAなどと協議に入っているとのこと。
 
防火壁となる信連

 協議の結果であろうか、信濃毎日新聞(6月25日付)によれば、長野県農協中央会・各連合会の神農佳人会長は24日の記者会見で、農林中金の2025年3月期の連結純損益が巨額赤字に陥る見通しとなったことを受け、信連として財務改善に向けた増資に応じることを明らかにした。神農氏は、増資が「(農林中金の)将来の万全な経営体制に持ち込む一つのプロセス」と捉えていると説明し、信連で対応可能のため、県内JAへは「影響を及ぼすことはない」と強調したそうだ。
 ただし、21日開催の農林中金の総代会で24年3月期の配当を無配とすることが承認されたため、配当を受け取る立場の信連には少なからぬ影響はある。佐藤卓治信連理事長は「減益要因になるが、自主運用でカバーする」と述べ、県内農協への配当には影響を生じさせないと語っている。
 長野県では、信連が防火壁となりJAへの延焼をひとまず防いだわけだが、それだけですむ問題ではない。

農林水産業への融資を広げる

 「安全な資産とされる米国債などへの投資で、これほどの損失は想定外だっただろう」で始まるのは中国新聞(6月14日付)の社説。「株式よりもリスクが小さい債券が運用資産の56%を占め、株式はわずか2%。外国株式はほぼゼロだった」ことから、「農林中金が手堅い運用を心がけていた」ことに理解を示す。そのうえで、「外国債運用には多くの地方銀行も失敗したが、それでも好調な株式の運用益で帳尻を合わせたとみられる」として、「農林中金の損失が突出したのは、債券に片寄った資産運用が、結果的に裏目に出たと言える」と分析する。
 そして、「各地のJAなどは農業従事者が減る課題に直面する。営農事業で出る赤字を、金融や共済などの収益でカバーしている。そのJAなどから資金を預かっている責任の重さを忘れてもらっては困る」と訴える。
 「リーマン・ショックの影響で有価証券関連の損失が膨らんだ際も、JAなどの支援で2兆円近い資本増強が行われた。損失を出すたびに、増資を求められることに疑問を感じる出資者もいるのではないか」として、「全体のごく一部にとどまる農林水産業への融資を広げていく努力も忘れてはなるまい」と提言する。

第31回JA全国大会を行うために

 毎日新聞(6月24日付)のコラムは、「全国の農協などから預かった約56兆円もの資金を主に海外で運用し、配当などで年間3000億円規模の利益を還元してきた。そんなビジネスモデルが曲がり角にさしかかっている」と指摘する。さらに、リーマン危機時の教訓から「『安全資産』とされる米欧国債中心の投資戦略に切り替えたにもかかわらず、奏功しなかった」として、「今回の方が事態は深刻」という関係者の悲観的な声も紹介している。
 そして、「市場では『運用額を大幅に減らすのが賢明』と指摘されている」が、「そうできないのは、本業の農業関連事業で赤字に苦しむ農協の経営を利益還元で支え続ける必要があるからだ」と問題点を指摘する。「農協とのいびつな関係」とまで表現し、それを「改めないままでは、先行き不安が否めない」とは厳しい指摘。
 当コラム、農林中金とJAの資金面での関係性を「いびつ」とは思わない。そもそも、農業関連事業の赤字問題は、JAグループだけの責任ではなく、この国の農政の問題点が象徴的にあらわれているところだ。だからこそ、今年開催される第30回JA全国大会は、農林中金の赤字1.5兆円が突き付けた問題に覚悟して向き合わねばならない。さもなくば第31回はない。

 「地方の眼力」なめんなよ

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