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【スマート農業の風】(5)都市型農業にふりかかる生産緑地問題2024年6月28日

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スマート農業の風

農業は田舎に限った話ではなく、当然、都市部でも行われている。また、いまは営農をしていなくても、今後相続により実家所有の土地で「大都市近郊で営農を」と計画している方もいるかと思う。そんな人々が直面するのが、生産緑地の問題だ。

そもそも生産緑地とは、都市計画法によって「生産緑地地区」として指定された地域の農地のことをいう。生産緑地の指定を受けると固定資産税や相続税等が優遇される。また、生産緑地は、営農義務が生じるため、生産緑地に指定されると、農地として利用されなければならない。

都市計画法によると、農地が生産緑地に指定され30年が経過すると、所有者は市町村に対して買い取りの申し出をすることができる。所有者が買い取りの申し出をすると、市町村が当該の土地を買い取るか、農業者に当該土地を斡旋することになるが、それができない場合は、土地に対する行為制限が解除される。しかし、実際には市町村が土地を買い取ることはほとんどない。また、他の農業者への斡旋も容易ではない。結果として、生産緑地指定から30年が経過すると生産緑地の多くが解除され、宅地に転用されてしまう。これらは、農地の面積が急激に減少する一方、宅地の供給が過剰になってしまう可能性があった。

そうした背景を受け、2017年の改正案では、生産緑地指定から30年経過が近づいた農地について、農地として保全することが良好な都市環境のために有効であるものを市町村が特定生産緑地として指定し、買い取りの申し出ができる時期を10年間先送りにするという制度が盛り込まれた。

これにより、指定から30年が経過した生産緑地は、10年ごとに更新できることになった。この改正案は、30年経過後の買い取りの申し出を減少させ、都市部の農地保護をおこなうことができる。

一方、所有者にとっては、買い取りの申し出までの期間が延長される結果、固定資産税の減額の効果も延長される。

特定生産緑地とは、30年の期間経過を迎える生産緑地について、期間満了までに、市区町村に特定生産緑地の申請をした土地を指す。申請後、従来の生産緑地と同じ税制優遇(固定資産税農地並み課税・納税猶予の特例利用可能)が10年間延長される。

ちなみに、生産緑地は指定から30年を経過し、申請がないと生産緑地を解除され、再度の申請はできない。簡単に言うと、10年ごとに申請を続けるものを特定生産緑地、30年の指定期間内のものを生産緑地という。

特定生産緑地対象の農地を所有する農家は、その農地をどう扱っていくか、生産緑地指定の30年経過が近づく前に検討する必要がある。

そこで特定生産緑地を所有する農家のために、一部のJAでは、特定生産緑地の情報を取得し、組合員を中心に意思把握・相談対応をおこなっている。さらに、特定のJAとはなるが、全農の営農管理システムZ-GISを活用し、特定生産緑地の管理を始めた。

Excel上のデータと地図情報をひもづけるZ-GISを活用することで、JA内における情報管理の円滑化や農地情報の見える化、JA職員間での情報共有・活用促進に役立てることができる。住宅地図など、現物の地図に直接書き出した情報は、修正も持ち運びも大変だが、デジタル地図とひもづけることで、スマートフォンやタブレットから簡単に管理・参照ができる。

実際、Z-GISを導入し、特定生産緑地管理を開始したあるJAでは、管内の対象ほ場約4000筆をZ-GISに入力し、特定生産緑地の継続意思の管理や、手続き代行などの有無について活用している。特定生産緑地の延長は、所有者自身で申請することができる。ただ、10年後にその所有者が延長の申請ができるとは限らない。「次の世代に移っている」「財産分与で複数の所有者になっている」などさまざまなことが考えられる。JAが特定生産緑地の手続き代行や継続意思の確認をおこなうことで、組合員の資産を守ることにもつながる。

住む場所それぞれに特徴があり、都市の中で営農を続けることも選択肢としてある。ただ、次世代を含め、都市部であればなおのこと、今後の営農・農業経営について考えていくことが必要となる。そんなときに、地域のJAに相談してみるという選択肢も忘れないでほしい。

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