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【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「財務省経済産業局農業課」て何?2024年7月18日

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 日米の「今だけ、金だけ、自分だけ」のオトモダチ企業(軍事、医療も含む)、財務省(予算削減)、経産省(企業利益追求)の力が強くなり、農水省の独自性が問われている。農水予算を削減して、農業・農村の破壊を放置し、一部の企業利益のみが追求される。「財務省経済産業局農業課」(三橋貴明氏)との声がある。以前の農水省はもっと食料・農業・農村のために闘った。今や、その主張は財務、経産とほぼ同じだ。奮起せねば、国民の農も食も命も守れない。改定「基本法」とフードテック推進の類似性に着目して、検証してみよう。

農業の「憲法」改定してまで苦しむ農業・農村を放置する衝撃

農業従事者の平均年齢は68.7歳。この衝撃的数字は、あと10年もしたら日本の農業・農村の多くが崩壊しかねないということを示している。しかも今のコスト高で、農家はコストを販売価格に転嫁できず赤字に苦しみ、酪農・畜産を中心に廃業が後を絶たず、崩壊のスピードは加速している。私たちに残された時間は多くない。一方の国際情勢は、もうお金を出せばいつでも食料が買える時代でなくなっている。

それを受けて25年ぶりに食料・農業・農村の「憲法」たる基本法が改定されることになった。基本法の見直しを今やる意義とは、世界的な食料需給情勢の悪化と国内農業の疲弊を踏まえ、国内農業を支援し、種の自給率も含めて食料自給率をしっかり高め、不測の事態にも国民の命を守れるようにしなければいけない。そういうことを宣言するんだと、みな考えた。

しかしながら、基本法の原案には食料の自給率向上という言葉さえ出てきていなかった。なぜ、こんなことになるのか。最近、納得できた。農業・農村の崩壊を前提にしているのだ。農業就業人口が急速に減少し、もうすぐ農家はさらに潰れ、農業・農村は崩壊する。だから、非効率な農家を支えるムダをせず、企業などの参入で儲かる人だけ儲ければいいではないかと。みなが潰れないように支える政策を強化すれば事態は変えられるという発想はない。

「食料自給率」や「農村」という概念は希薄だ。「国消国産」のために食料自給率を向上するという考え方もないし、農村コミュニティが維持されることが地域社会、伝統文化、国土・治水も守るといった長期的・総合的視点はない。

だから、食料自給率を軽視する発言が繰り返され、コスト上昇に対応できない現行施策の限界は認めず、国内農業支援は十分で施策強化は必要ないとの認識が示される。そして、効率的かつ安定的な農業経営には「施策を講じる」とする一方、多様な農業者については「配慮する」だけで施策対象にはしない。定年帰農、半農半X、消費者グループなど多様な農業経営体の役割が重要になっている農村現場を支える意思はない。

一方で「規模拡大によるコストダウン、輸出拡大、スマート農業」が連呼され、加えて、海外農業生産投資、企業の農業参入条件の緩和を進める。誰の利益を考えているのか。このままでは、IT大手企業らが描くような無人農場などが各地にポツリと残ったとしても、農山漁村の大半が原野に戻り、地域社会と文化も消え、食料自給率はさらに低下し、不測の事態には超過密化した拠点都市で餓死者が続出するような歪(いびつ)な国に突き進みかねない。

このように、25年ぶりの農業の憲法たる「基本法」の改定で、誤った政策を改善するどころか、政策は十分であり、潰れる者は潰れればよい、農業・農村の疲弊はやむを得ない、一部の企業が輸出やスマート農業で儲かればそれでよいかのような方向性を打ち出した。

しかも、この深刻な総崩れの事態を放置して、非効率な農家への支援策は出さずに、有事には、罰則で脅して強制増産させる「有事立法」を準備して凌ぐのだという。そんなことができるわけもないし、していいわけもない。

グローバル企業の次なる企てに加担して農業・農村の破壊を加速

 命や環境を顧みないグローバル企業の目先の自己利益追求が食料・農業危機に底流にあるが、その解決策として提示されているフードテックが、環境への配慮を隠れ蓑に、更に命や環境を蝕んで、次の企業利益追求に邁進していないだろうか。

 実は、地球温暖化の1番の主犯は田んぼのメタンガスと牛のゲップだったと言い出した。2024年初早々、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)でも耳を疑う発言が飛び出した。「アジアのほとんど地域では未だに水田に水を張る稲作が行われている。水田稲作は温室効果ガス、メタンの発生源だ。メタンはCO2の何倍も有害だ」(バイエル社CEO)「農業や漁業は『エコサイド』(生態系や環境を破壊する重大犯罪)とみなすべきだ」(ストップ・エコサイド・インターナショナル代表) 。つまり、農業そのものの否定だ。

うっかり私たちは、彼らが環境に優しい農業が大事だと主張しているのだと勘違いしそうになったが、そうじゃない。農業そのものを否定し、潰し、そしてコオロギ食などの昆虫食や人工的な食べ物で儲けようとするのが彼らの目的だということが非常に明らかになってきた。

つまり、「工業化した農漁業や畜産を見直し、環境に優しい農漁業や畜産に立ち返るべきだ」と主張しているのではなく、「農漁業、畜産の営み自体を否定しようとしている」意図に気づく必要がある。

グローバル種子農薬企業やIT大手企業が提唱している、次の農業モデルの1つは、今いる農家の退場を促し、ドローンとセンサーを張り巡らせて機械も自動制御して、儲かる農業モデルをつくって投資家に売るのだという見方もある。実際、ビル・ゲイツ氏は米国の農場を買い占め始めて米国一の農場主になっている。

 彼らは、まともな農業の代わりに、次の儲けのために、コオロギなど昆虫食や培養肉や人工卵だけでなく、もう一つ、こんな無人農場を考えているのか、と言うと、陰謀論だという人がいる。しかし、日本が国策として推進するとしているフードテックの中身を見ると愕然とする。

 その論理は、温室効果ガスの排出を減らすカーボンニュートラルの目標を達成する必要があるが、今の農業・食料産業が最大の排出源なので、遺伝子操作技術なども駆使した代替的食料生産が必要である。それは、人工肉、培養肉、昆虫食、陸上養殖、植物工場、無人農場などと例示されている。すべてつながっているではないか。

 日本はフードテック投資が世界に大幅な遅れをとっているので、国を挙げた取組みの必要性が力説されている。「今だけ、金だけ、自分だけ」の企業の次のビジネスの視点だけで、食の安全性も食料安全保障も蔑ろになり、地域コミュニティも伝統文化も、日本社会そのものの崩壊につながりかねない。

今農村現場で頑張っている人々は支援せず、農家を退場させて、一部の企業の利益につながるような政策を推進するというのは、フードテック推進も、改定「基本法」にも共通する流れだ。

このようなことを続けたら、農業・農村は破壊され、国民に対する質と量の両面の食料安全保障も損なわれる。これほどに日本の地域と国民の命をおろそかにしてまで一部企業の利益を重んじることが追求される。「財務省経済産業局農業課」に甘んじることなく、本来の農林水産省を取り戻すべく、心ある人たちの奮起に期待したい。

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