(393)2100年の世界【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年7月19日
将来のことはわかりませんが、数字を積み上げると見えることがあります。75年後の2100年、万が一生きていれば筆者は140歳ですが…。
将来予想は難しい。ただ、明日が今日の次、明後日が明日の次...、という形で単純に時間と数字を積み重ね、さらに人間の一般的な寿命を細かく織り込んで計算すると、将来の人口は一定の妥当性ある展望が可能になるようだ。
日本の将来人口推計については国立社会保障・人口問題研究所が数字を出しており、各所で紹介されている。これに対し、世界の人口推計は国際連合のPopulation DivisionがWorld Population Prospects[1]を公表している。1950年から現在までの人口はestimates、そして現在から2100年までの人口は3つの推計(上位、中位、下位)という形で公表されている。一般に将来人口と言う際は、medium variant(中位推計)が用いられる。具体的な算出手法の説明は筆者の能力を遥かに超えるため、ユーザーとして割り切り、資料として使えば十分である。
さて、先日この最新版がリリースされた。スプレッド・シートをダウンロードしたところ25.2MBのため、それなり大きいが、しばらくは楽しめそうだ。今回は将来見通しの中で興味深い点を紹介したい。
* *
まず、2024年時点で人口が多い国ベスト5はどこであろうか。
中国...、と考えたら不正解である。中国は既に2022年にピークアウトしている。今もネット上には中国を1位とするサイトが複数あるが、国連の最新推計(1月1日時点)で見る限り、インド(14.4億人)、中国(14.2億人)の順である。
人口はこの2カ国は他国を圧倒している。3位は米国(3.4億人)、4位はインドネシア(2.8億人)、そして5位はパキスタン(2.5億人)である。2024年の世界人口は81.3億人のため、簡単に言えばインドと中国の2カ国で約35%を占め、上位5カ国の合計は37.3億人、割合では約46%となる。
では、2100年にはどうなるか。これら5カ国の75年後は、1位インド(15.1億人)、2位は中国(6.4億人)、3位はパキスタン(5.1億人)、次いで米国(4.2億人)、インドネシア(3.0億人)である。2100年の世界人口は101.9億人のため、上位2カ国の割合は約21%、上位5カ国でも総人口33.8億人、割合は約33%へと低下する。大きな理由は、ここで述べた5カ国以外の人口が増加するからに他ならない。
とくに注目したいのが中国だ。2100年の人口見通しは6.4億人である。14.2億人から見れば半分以下、45%に過ぎない。日本人の多くは自国の人口減少には敏感だ。だが、今後1世紀も経ずに2年前まで人口世界1位であった隣国が同様の過程を辿るとは想像もしていないのではないだろうか。多くの日本人にとって中国は人口が多い...という印象であろう。
それはそのとおりだが、その状況は永遠に続く訳ではないことも理解しておく必要がある。国連の公表数値をグラフ化したものが下図である。これを見ると一目瞭然だ。ちなみにインドの人口ピークは2062年の17億人である。
ここから先は自由な想像の世界になる。例えば、とりあえず、今後20~30年位を射程にするのであれば、英語と中国語はどちらも重要なツールであろう。だが、2世代60年以上先を視野に入れると、やはり英語が強い可能性が高い。孫がいる方は英語が良いかも...などと妄想が膨らむ。
ビジネスも同様である。今後の日本は人口減少に対し、多くの対策を考慮しなければならない。だが、あと半世紀もすれば高齢国家なりに落ち着く可能性が高い。気の長い話だが、そこまでの辛抱である。問題は中国で14億人が6億人に減少する過程で生じる社会経済的影響はどのようなものか。そして、それが日本にどう影響するか。残念ながら、まだそれを正面から本格的に検討した研究には出会えていない。
* *
国際的な穀物調達、貿易、人の移動、いろいろと影響が出そうですね。
[1] United Nations, Population Division, "World Population Prospects 2024", アドレスは、https://population.un.org/wpp/ (2024年7月17日確認)
重要な記事
最新の記事
-
米農家(個人経営体)の「時給」63円 23年、農業経営統計調査(確報)から試算 所得補償の必要性示唆2025年4月2日
-
移植水稲の初期病害虫防除 IPM防除核に環境に優しく(1)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月2日
-
移植水稲の初期病害虫防除 IPM防除核に環境に優しく(2)【サステナ防除のすすめ2025】2025年4月2日
-
「令和の百姓一揆」と「正念場」【小松泰信・地方の眼力】2025年4月2日
-
JAみやざき 中央会、信連、経済連を統合 4月1日2025年4月2日
-
サステナブルな取組を発信「第2回みどり戦略学生チャレンジ」参加登録開始 農水省2025年4月2日
-
JA全農×不二家「ニッポンエール パレッティエ(レモンタルト)」新発売2025年4月2日
-
【役員人事】農林中金全共連アセットマネジメント(4月1日付)2025年4月2日
-
【人事異動】JA全中(4月1日付)2025年4月2日
-
【スマート農業の風】(13)ロボット農機の運用は農業を救えるのか2025年4月2日
-
外食市場調査2月度 市場規模は2939億円 2か月連続で9割台に回復2025年4月2日
-
JAグループによる起業家育成プログラム「GROW&BLOOM」第2期募集開始 あぐラボ2025年4月2日
-
2025年クボタグループ入社式を開催2025年4月2日
-
【役員人事】農林中金ファシリティーズ(4月1日付)2025年4月2日
-
【役員人事】PayPay証券(4月1日付)2025年4月2日
-
【人事異動】ヤンマーホールディングス(4月1日付)2025年4月2日
-
【人事異動】コメリ(4月1日付)2025年4月2日
-
鳥インフル 英カンブリア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年4月2日
-
片倉コープアグリ アクプランタと協業 高温・乾燥対策資材「スキーポン」を全国展開2025年4月2日
-
頭の体操「ゆっくり健康マージャン」宮前センターで初開催 パルシステム神奈川2025年4月2日