2万円が下値になった6年産米ハシリ価格【熊野孝文・米マーケット情報】2024年7月23日
精米販売価格が安いスーパーに行ってみるといつもなら5㌔袋の各産地銘柄が15種類ほど置かれている売り棚には1袋だけ置かれ、他はすべて空になっていた。空になった売り棚にはコメ不足になった理由を記したホップが掲げられていた。同じ日に早期米の主産地宮崎で新米の出荷式が行われたというニュースが流れていた。その地区のコシヒカリの生産者概算金は7月23日までが2万0600円(前年産同期比6800円高)、7月31日までが2万0100円(同6900円高)、8月1日以降は1万9400円(同7000円高)という額が示された。
7月18日に開催されたクリスタルライスの取引会では、宮崎コシヒカリが上場されなかった。例年であればこの時期の取引会では7月中渡しや8月上旬渡し条件で宮崎コシヒカリ早期米の取引が行われるのだが、今年は売り物がなかった。同社によると売り物を晒さなかなかった理由について「産地の売り唱え価格に差があり過ぎた」というもので、確かにはまゆう地区と西都地区では生産者概算金が同じ時期でも1俵1000円ほどの違いがある。しかし、概算金はあくまでも概算金であって、この価格差が売り物を出せなかった理由ではない。出せなかった理由は、宮崎コシヒカリは収穫前から売り先が決まっており、クリスタルライスの取引会に出す浮動玉がなかったというのが本当の理由なのだろう。宮崎の早期米の生産量は2万トン程度で、干天の慈雨のように事前に契約していた大手卸に吸い取られたというのが実態に近い。クリスタルライスでの新米の売り物は福井のハナエチゼン880俵が8月中渡しで出ているにとどまった。この成約価格は2万3000円になったと言われるが、クリスタルライスは成約価格を公表はしていない。言えることはこの価格でも5年産の売り唱え価格(別表)に比べて安いということ。
早期米の激戦区は何と言っても千葉である。千葉では例年盆明けに新米取引会が開催されるが、今年は大きなリスクが伴うことから取引会は開催されないことになった。しかし、早い時期から大手卸等が農協ばかりか大規模生産者を回って収穫前契約を働きかけており、7月中に収穫される超早期米「五百川」は置場条件で安値が2万円、高値は2万3000円で契約が進んでいる。産地の庭先では「2万円以下では売らない」という声が岩盤になっているとのことで、6年産米のハシリは置場2万円が下値の下限価格になってしまった。
それを見越したようにスーパーの売り棚は7月上旬から5年産米の精米が一斉に値上げされ、5㌔2000円以下の精米は見当たらなくなった。今、売り棚を飾っているのは、魚沼コシヒカリ、新之助、山形つや姫、ゆめぴりかの2㌔袋で、これら高級ブランド米の価格に近い価格で各産地の新米が店頭に並ぶ形になる。
7月19日の記者会見で坂本農水大臣は早期米の価格が上がっていることについて「令和6年産の早期米の概算金の大幅上昇について、鹿児島県産コシヒカリの7月末までの概算金が、60kg当たり19,200円など、前年産に比べ6,000円高い価格で決定されていることは報道により承知しています。概算金は、集荷業者が集荷した際に生産者に支払う仮渡金であることから、それぞれの集荷業者が現在の需給及び在庫・販売動向等を踏まえ決定されたものと考えています。
概算金はあくまで仮渡金であり、相対取引価格や民間在庫等と異なり当省への報告を求めていませんが、今後設定される普通期米も含め、各産地における令和6年産米の概算金の設定状況等について、引き続き報道等を注視してまいります。私自身は、需給が引き締まっているということで、特段、これによってさまざまな対応をするというような状況にはないと思っています」と答えている。農水省はことあるごとに「スーパーに精米がある」ことを需給がひっ迫していない理由に挙げてきたが、現状は多くのスーパーで「コメ不足」のお知らせが告知されるようになっている。驚くべきはこうした情況にも関わらず5年産米を今年11月以降に持ち越すことが出来るように周年供給安定対策で助成措置を講じることにしていることで、その量は5万tにもなる。
なぜそこまでして米価を上げなければならないのか?おそらく11月ごろになると米価は急激に値下がりするものと予想される。食糧法の目的は価格の安定のはずなのだが、価格の乱高下を演出しているとしか思えない。
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