日本人の命は渡り鳥以下【小松泰信・地方の眼力】2024年8月7日
8月3日午前10時55分ごろ、米軍のヘリコプターが神奈川県海老名市の田んぼに不時着。搭乗人数12人にケガはなし。火災や燃料漏れもなく、約2時間後の午後0時40分ごろ、ヘリは厚木基地に向かって離陸した。
エンジントラブルで「予防着陸」?
東京新聞(8月4日付)によれば、地元消防は厚木基地から岩国基地へ向かう途中でのエンジントラブルが起きたとしている。ただし米海軍厚木航空施設は、何らかの異常を察知したための「予防着陸」だったと説明。飛行目的は答えられないとし、原因について調査するとしている。現場近くには老人ホームや小学校がある。周辺は田んぼが広がり、稲が倒れていた地点を中心に県警が状況を調べた。
「どういったトラブルがあったのかしっかり調べてほしい」(土地の所有者)。
「住民の不安と恐怖は計り知れない。国や米軍に安全対策や情報提供を強く求める」(内野優海老名市長)。
神奈川県も事故に関する情報提供や再発防止策の実施を防衛省南関東防衛局に要請したとのこと。
米軍のパシリと化す防衛省
この事故を受け、防衛省南関東防衛局の末富理栄局長らが5日、海老名市役所を訪れ、内野優市長に「地元の皆さまにご心配をかけ申し訳なかった」と謝罪したことを毎日新聞(8月6日付関東版)が報じている。
内野市長は「原因究明を徹底し、このようなことがないようにしてほしい」と述べ、防衛局側は、米軍に安全管理と再発防止を徹底するよう要請したと説明。不時着した田んぼへの補償に対応するとしている。
内野氏は面会後、報道陣に「なぜ(米軍の)厚木基地が説明に来ないのかと伝えた」ことを明かした。
加えて、米軍施設を抱える相模原市の本村賢太郎市長が5日の定例記者会見で、普段からヘリやオスプレイが通過しているため、「再発防止を徹底してもらいたい」と強調したことを伝えている。
米海軍の起こした事故にもかかわらず、防衛省の役人がパシリと化して謝罪に来ることは、何を意味しているのか。
無法者たちが飛び回る日本の空
7月21日、「第66回自治体学校in神奈川」の現地分科会「再編強化進む神奈川の基地巡り」に参加し、米軍の兵站・事前集積・物流基地である横浜ノースドックから横須賀軍港、座間キャンプ、厚木基地に行った。神奈川県が沖縄県に次ぐ基地の県であることを学んだばかりの者として、この事故を重く受け止めた。
「オスプレイ なんでも Q&A」(以下、「Q&A」と略。神奈川県平和委員会、2023年1月)によれば、米軍機や米国政府のチャーター機にとって、この国の空は治外法権。
例えば、オスプレイが開発段階から墜落事故を繰り返し、「空飛ぶ棺桶」と呼ばれるほどの「欠陥機」であるにもかかわらず、日本の空を自由に飛べるのは、「日米地位協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律(航空法特例法)で、航空法の最低安全高度の規定を米軍に対して適用除外」にしているからである。
「Q&A」は、航空法特例法の内容を平易に要約している。(強調文字は小松)
第1条 米軍の飛行場や航空保安施設については、航空法第38条第1項の規定である飛行場や航空保安施設の設置に際して「国土交通大臣の許可を受けなければならない」という義務は適用されない。
第2条 米軍機や米国政府のチャーター機とその乗員には航空法第11条、第28条第1項など計10条項の規定(「耐空証明」のない航空機の飛行禁止、「騒音基準適合証明」の義務、有資格者以外の操縦教育禁止、外国航空機が日本国内で飛行するための許可を得る義務など)が適用されない。
第3条 米軍機や米国政府のチャーター機とその乗員には、航空法の第6章の規定を原則適用しない。
航空法第6章とは、運航方式の基準等を制定することにより、航空機の運航の安全性を確保するものであるが、夜間飛行での灯火義務、飛行禁止区域の遵守、最低安全高度の遵守、速度制限の遵守、編隊飛行の禁止、粗暴操縦の禁止、曲技飛行の禁止などを一括して米軍には適用除外。
乗客乗員、そして地上に住む無辜の民の生命や財産等々を守るために決められたこの国の法律を、米軍機や米国政府のチャーター機とその乗員は遵守する義務がないことに、唖然とするばかり。
「Q&A」には次のように記されている。
「米国では民家の上空など市街地での低空飛行は禁止されています。一方、日本では日米地位協定により、国内法の規制が米軍に及ばないため、米軍は米本土で実施することの出来ない低空飛行訓練を日本の空を使って我が物顔に行っています。まさに沖縄の映画『標的の村』で描かれたような実践を想定した訓練が日常的に行われているのです」
間違いなくこの国はアメリカの植民地
アメリカの身勝手さがよく分かるエピソードが「Q&A」で紹介されている。概要は次の通り。
「2006年、米海軍はノースカロライナ州にFA18戦闘機など空母艦載機の離発着訓練施設の建設計画を発表したが、地元住民や環境保護団体の激しい反対に遭った。連邦裁判所が、パイロット、渡り鳥、コミュニティを危険にさらす計画に対する差し止め命令をだしたことを受け、米海軍は2013年11月基地の建設計画を中止すると発表。
他方、厚木基地の飛行コース周辺には百数十万人が住み、騒音と事故の不安に苦しむ生活を余儀なくされている。これまで数度にわたる騒音訴訟がされたが、政府は、騒音に対する金の補償はするが命の保証はしない。米国内では、渡り鳥さえ命の保証が優先されるのに。まるで『植民地のようだ』の声が聞かれる」
ここまでされたら「ようだ」ではなく、間違いなく植民地。
そして、不時着は事故ではなく、田んぼへの「不時着訓練」だったという疑惑も沸いてくる。ならず者国家ならやるはず。米軍の二軍と化した防衛省も共犯者。だからパシリとなって謝罪にくる。時給10円の稲作農家なら少し多めの補償金を出しておけば文句は言わないだろうと空から目線。交渉役は防衛省。ファーム(田んぼ)のことはファーム(二軍)に任せろってね。
「地方の眼力」なめんなよ
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