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変わるのは自民党ではなくあなた【小松泰信・地方の眼力】2024年8月21日

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8月20日、沖縄防衛局は名護市辺野古の大浦湾側の埋め立てに向けた新たな護岸工事に着手し、長く太い鋼管くいを海底に打ち込んだ。「私の心に、くいが刺さったような気分だ」と悔しさを噛みしめて語るのは、キャンプ・シュワブのゲート前で抗議の座り込みを続ける男性。(沖縄タイムス・8月21日付社説)

komatsu_honbun.jpg記者会見で始まるメディアジャック
 8月14日、岸田文雄首相(自民党総裁)は記者会見を行い、9月下旬に予定される党総裁選に出馬しない意向を表明。20日、「9月12日告示、27日投開票」と決定され、選挙期間は15日間にも及ぶ。

 記者会見で岸田氏は、「今回の総裁選挙では、自民党が変わる姿、新生自民党を国民の前にしっかりと示すことが必要です。(中略)自民党が変わることを示す最も分かりやすい最初の一歩は、私が身を引くことであります」と不出馬を表明した。

 裏金問題をはじめとする犯罪的不祥事多発政党の体質が、総裁が退くことくらいで改善されると信じている人は、愛すべき人。これに、「新しいリーダーを、一兵卒として支えていく」と続けば、「まだ居座るんかい!」とのツッコミは必至。

 「今般の総裁選挙では、我こそはと思う方は積極的に手を挙げて、真剣勝負の議論を闘わせてほしいと思っています」との願いに応えて、21日時点で11名の立候補者が取り沙汰されている。全員が20名の推薦人をゲットしてゲートインできるかは疑問だが、その悲喜劇も含めて、NHKを筆頭に各種メディアは関連情報を垂れ流し続けることになる。

 もちろんこれも自民党のメディア戦略の一つ。大根役者による茶番劇でも、見せられ続ければ「あばたもえくぼ」が人の常。ここまでくれば、候補者は多ければ多いほど良い。人材豊富感が漂うとともに、露出の時間が増える。

 「私には、政治家・岸田文雄として引き続き取り組まなければならない課題があります」と意欲を示す事項の中に、「憲法改正」があげられていた。そして、「自衛隊の明記と緊急事態条項について、条文の形で詰め、初の発議までつなげていかなければなりません。既に緊急事態条項については、条文化の作業、また、自衛隊の明記については、今月末までに論点整理を衆参で取りまとめるよう指示を出していますが、着実に実行してまいりたいと思います」とは、憲法第99条【憲法尊重擁護の義務】を蹂躙する問題発言。これこそ「憂事」かつ「有事」。

それでも自民党は「ぶっ壊れない」!?
 東京新聞(8月20日付)は、共同通信社が17日から19日に実施した全国電話世論調査の詳報を伝えている。回答者数1,064人。注目した結果は次のように整序される。

①岸田内閣については、「支持する」26.1%、「支持しない」67.4%。

②岸田首相の退陣については、「退陣は当然だ」66.8%、「退陣するべきではなかった」25.4%。

③退陣が自民党の信頼回復のきっかけになるかについては、「なる」19.7%、「ならない」78.0%。

 これらは、7割にも及ぶ岸田内閣不支持者のほとんどが退陣を待ち望んでいたこと。しかし、岸田氏が身を引いても自民党の信頼回復とはならないと考えている人が8割にも及んでいることを示唆している。

④総裁選で議論してほしい課題(2つまで選択可)については、最も多いのが「景気・雇用・物価高対策」50.9%。これに「年金・医療・介護」36.6%、「子育て・少子化」25.7%、「政治とカネ」20.1%、「外交・安全保障」17.9%などが続いている。ちなみに「憲法改正」は7.0%で8位。その後には、「分からない・無回答」「その他」が続くのみ。

 上位の3選択肢を見れば、明らかに人々のくらしは疲弊し、将来に明るい展望を見いだせない状況にある。

 「憲法改正」に意欲を示すとは、何も見えず、何も聞こえず、ただただ力のいれどころを間違っている。

⑤次の衆院選の比例代表で投票する政党については、最も多いのが「自民党」37.1%。これに「立憲民主党」15.2%、「日本維新の会」8.4%などが続いている。やはり自民党は「ぶっ壊れない」ようだ。

「政治とカネ」を問い続ける
 「『政治とカネ』の問題で、自民党政治に対する国民の信頼は失墜した」で始まるのは、西日本新聞(8月21日付)の社説。

 「再選に意欲を示していた岸田氏が退くのは、国民の信頼を失うことになった裏金事件などの責任を取るためだ。であれば、後任を決める総裁選で問われるべきは、やはり政治資金の問題である」と明快。「裏金事件の全容はいまだに解明されていない。再発を防ぐ改正政治資金規正法が成立したものの、抜け穴だらけの『ザル法』に変わりはない。政策活動費の透明化も中途半端なままだ。岸田氏が決着をつけられなかった懸案について、全ての総裁候補は明確な考えを国民に語るべきだ」がその理由。

 そして、「日本が直面する諸課題を解決に導く政策は、国民の信頼があってこそ実行力を伴う。政治資金を巡る課題にお茶を濁すようでは、信頼回復はおぼつかない」と念を押す。

 さらには、「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員の関係も不透明さが残る」と、急所を衝く。

 最後に、新総裁の首相就任早々に、衆院選に打って出る可能性も十分に考えられることから、「『看板』をかけ替えるだけの内向きな総裁選になる懸念は拭えない」として、政権選択の選挙に備えて、候補者の言動に注意を払うことを国民に求めている。

 中国新聞(8月21日付)の社説も、「『政治とカネ』に向き合わぬ候補者はごめんである。まず問われるのは、政治改革への取り組みのはずだ」として、「決意を語るのはもういい。政治とカネの病巣にメスを入れるため事件の全容解明をいかに進めるのか。政治の信頼回復に向けて具体的に何をどのように改革するのか。候補者はその中身と指導力を競う必要がある」と指摘する。

変わるべきものは何か
 冒頭の沖縄タイムスの社説は、翁長雄志前知事が「国防のためとはいえ、十和田湖や松島湾、琵琶湖を埋め立てるか」と日本の景勝地を取り上げて、辺野古の海を埋め立てる意味を世論に問いかけていたことを紹介したうえで、総裁選に言及し「『自民党が変わる』というのであれば、新体制では課題が山積する新基地建設の作業を中断し、県が求めている対話に臨むべきだ」と訴える。

 残念ながら、自民党は変われない。もう少し正確に言うと、ふたつの存在が変わることを許さない。

 ひとつは、互いに持ちつ持たれつで甘い汁を吸いあってきた多種多様な利権集団。もうひとつは、宗主国アメリカ。

 自民党、利権集団、そしてアメリカ、このトライアングル構造に囲まれて疲弊していくのは、国民一人一人。

 これに気づけば、変わるのは自民党ではなく、あなたの投票行動。

 「地方の眼力」なめんなよ

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