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(398)「職種」と「職階」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年8月23日

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社会人には「当たり前」でも、学生には意外と知られていない点に「職種」と「職階」の違いがあります。

 学生達と話していて将来の夢を聞くと、「○○をしたい」「○○になりたい」という希望はよく聞くが、具体的に「社長になりたい」とか、「役員になりたい」という声は余り聞かない。さらに言えば、「部長」や「課長」「リーダー」になりたいという一般の学生に出会うのは組織の現実を学んでいる学部を別とすれば、極めて稀かもしれない。

 多くの大学生にとって、営業や管理、人事、開発など、いわゆる「職種」は比較的容易に想像できる。しかし、「職階」は組織により名称や条件などが異なるため、具体的なイメージを描きにくい。

 例えば、筆者の勤務先では研究所の「製品開発職」を希望する学生にはよく出会うが、将来の夢や希望が開発現場のスタッフなのか、部長・課長なのか、あるいは研究所長なのかを聞くと目を白黒させる学生が多い。結果として、とりあえずはスタッフに落ち着く。

 ちなみに、マーケティングや企画に関心を持つ学生は多いが、「営業」になると希望者が激減する。いずれの「職種」にもさまざまな「職階」がある旨を伝えると学生達は悩んでしまうことさえある。

 比較的わかりやすい教員という仕事でさえ、例えば、「国語」あるいは「理科」の教員という希望を持つ学生には出会えても、「校長」あるいは「教頭」と語る学生にはなかなか出会えない。分野別に何の仕事をしたいとは言えても、課長と支店長代理、主査と主任、校長と教頭、教授と准教授など、所属している組織以外の職階は筆者もよくわからないことがある。

 恐らく、組織における「職階」、つまり序列や階級などについて、現代の教育システムの中ではうまく説明しきれていないのであろう。実際問題として、経営組織論等の話を別とすれば、多くの学生は社会に出てから個別に「職階」の違いを体感し、学んでいく。その途中で、同じ「職種」にも序列があり、「職階」を上がるにはどのようなスキルと経験が必要か、いかなる選抜がなされるかについて自然に理解していく。

 ところで、従業員が12名の規模の組織の場合、「代表と従業員」のような構成になれば、現実的には仕事の分担である。23人で実施している家族農場などはこの範疇であり、形式上の代表者は例えば父親でも、実際は家族全員で必要な仕事を分担している。次世代への事業の継承は「親から子へ」である。

 言い方を変えれば、社長の子は自動的に次の社長になる。かつての農家はこうした形態が一般的であった。ところが法人化し、外部から従業員を雇用すると、こうした方式は必ずしもうまくいかない。何より、子供が後を継がなくなった。

 そうなると、自ら可能な限り実践するか、外部雇用の従業員を見極めて後継者にするか、誰か経営が出来る人や組織に委託・継承するか、それも無理なら廃業するか、という厳しい選択を迫られる。現代の日本農業はまさにこの局面に置かれている。

 この中で、外部雇用の従業員を後継者として想定する場合に留意しておく点がまさに「職階」に関わる。有り体に言えば、従業員の「キャリア・パス」を明確に示せるかどうか、である。家族のみで実施している場合、良くも悪くも家族内の序列が農家経営に直結するケースが大半だ。家族であれば、それも受け入れ可能であろう。だが、外部雇用の従業員には、創業の理念等は別として、職場への家族論理の展開は、そこで継続して働く意義そのものに影響する。いくら頑張っても家族メンバーでなければこれ以上は望めないとなれば、日々の労働意欲にも関わる。このあたりが難しい。

 農家は「ファミリー・ビジネス」でもある。だが、そこで働く家族以外の従業員が、いかに満足して働けるか、これは農業も他産業も全く同じである。

* *

「キャリア・パス」の明確化は、法人化した場合にはとくに重要ではないでしょうか。

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